詩集どうでしょう?                                                                  

 

詩を書いて出版しました。

 

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2024年6月14日

 ステテコ                                                                  

 

 父はもう起きていた。ステテコとランニングシャツという格好で寛いでいた。僕は朝食の席についた。

 

 皿に盛られていたのはステテコだった。これに着替えなさいと母。僕が無視していると母は父と言い合いを始めた。

 

 

 

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2024年6月13日

 寿司                                                                  

 

 席についたが、誰も来なかった。ハングルで「日本人」と書いてある席についた。テーブルに、5〜6人分の食事が用意されていた。イカの刺身と、カレーライスである。僕は1人で食べ始めた。

 

 僕が食べ終わるころに、みんなは現れた。刺身とカレーは下げられ、新たに寿司が出された。僕はそれも食べた。

 

 

 

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 廊下の先                                                                  

 

 7時を過ぎても明るくならない。まだ夜は明けない。ホテルでは眠る以外にすることはなかった。何十時間寝ているのだろう。ときどき目を覚まして小便をした。部屋にはトイレがなかった。廊下の先にそれはあった。

 

 小便をしに来るたびにトイレ周辺の様子は変わっていた。もともとは英語を話す体格のいい男たちがいるサウナの一角だった。従業員用のトイレを借りるのに、彼らと何か話したような気もする。何を話したのか覚えてない。今そこは児童図書館になっている。

 

 

 

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 変身                                                                    

 

 同じことを何回もやる。ただ繰り返すのではなく、変身してやるのだ。アンパンマンやドラゴンボールのキャラクター、仮面ライダー、ウルトラマンなどに変身できる。ただ‥‥何をやらされるのだろう? どのぐらいの期間? 他の人たちは変身に夢中で気にしていないようだが、僕は気になる。そのせいで完全には我を忘れられないのだった。

 

 

 

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 宣伝の写真                                                                  

 

 宣伝の写真を撮るのにそのデパートに売っているものは何でも身につけてよかった。僕は着替えるのが面倒だったので普段着に持ち物だけは高級品、というスタイルでいくことにした。ブランドのロゴが入ったバッグや帽子である。

 

 1人の太った女のコは全身有名ブランドで固めることにしたようだ。もう1人のモデルの女のコはおもちゃ売り場から人形やぬいぐるみを持ってきた。

 

 

 

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2024年6月12日

 藁人形                                                                  

 

 スナイパーの男が、藁人形から藁を1本引き抜く。それで風向きを確認している。

 

「藁人形なんて古風ですね」、僕の言葉に嘲笑うような響きがあったかも知れない。

 

 スナイパーは拳銃を取り出し、藁人形を何発も撃った。

 

 それから狙撃用のライフルを構え、標的を撃った。

 

 

 

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2024年6月10日

 廊下                                                                  

 

 私には家があった。平屋で、広い部屋がいくつもあったが、入ったことはなかった。部屋と部屋をつなぐ廊下で、私は寝ていた。木の床に、身を横たえた。

 

 その夜は、ソフトクリームの夢を見た。綿飴のようなソフトクリームだ。それを食べながら、私はもう1つの家に帰る。廊下で、立ったまま全部食べる。

 

 

 

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 手すり                                                                  

 

 橋を歩くと、ギシギシ、変な音がした。危ない。橋が落ちてしまう。

 

 端を歩けばいいんじゃないか、と思った。手すりにつかまって、ゆっくり歩いた。

 

 手すりは金(きん)でできていた。いただいて行こう。手すりをもぎ取った。

 

 すると僕の頭は落ちた。両手は塞がっている。こんなときに頭を落してしまった。どうしよう。

 

 

 

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 手帖を買う                                                                  

 

 君は手帖を買うと言い出す。僕も一緒に見て回る。土産物屋である。どれも高価なものばかりなのだろう。モノはガラスケースの中に入れられていて触れることができない。

 

 店に入るときは靴を脱がなければならなかった。脱ぐのに時間がかかった。ドクターマーチンのブーツを履いていたから。

 

 

 

 店の隣が食堂だった。「社長」がごちそうしてくれた。イカの刺身が出てきた。ナンの形に切ってある。カレーに浸して食べるのだ。

 

 僕たちが全部食べ終わったころ、「社員」たちがやってきた。彼らには寿司がふるまわれた。カレーとともに。ここでは何にでもカレーなのだ。

 

 

 

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2024年6月 9日

 シートベルト                                                                  

 

 3人の友達の内1人が、突然老婆になっていたが、奇妙なことに、僕以外の誰も、そのことを気に留めてなかった。

 

「アタシはおばあちゃんだから、助手席に乗るワ」と彼女は言って、運転を僕らに任せた。

 

「アタシはアタシだから、アタシが運転するね」と友達の1人は言った。

 

「ボクもボクだから、後席に乗るよ」もう1人は言った。

 

 

 

「シートベルトがある」と一緒に後席に乗り込んだ僕が言うと、3人は急に無言になった。

 

「きちんとシートベルトをしようかな」と僕は言って、実際にそうする。カチッという音が車内に響いた。

 

 

 

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2024年6月 8日

 勝者                                                                  

 

 マフラーの先っちょの、ピロピロしている部分を切った。しかし、切りすぎた。プレゼントしてもらった大事なマフラーだ。君は怒るだろうか。鏡の前で巻いてみる。

 

 

 

 5階から乗り込んだエレベーターの中、「7」のボタンと「1」のボタンが同時に押された。顔を見合わせる2人。一瞬迷って、エレベーターは上昇を始めた。

 

 僕は敗者になった。無言で壁の方を向いた。勝者も俯き、自分の靴を見ていた。

 

 

 

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 シャツ                                                                  

 

 人とぶつかり、服にコーヒーがかかった。「すみません」とその人は言った。「いいんです」と僕は答えた。「これ、僕の服じゃないんです」

 

 よく見ると、その人も僕と同じシャツを着ていた。周囲の人々も、全員同じシャツだ。

 

 僕は、その、コーヒーの染みのついたシャツを洗わなかった。そのまま次の日も着た。

 

 すると、みんなのシャツにも、同じような染みがあるのに気づいた。

 

 

 

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 信号                                                                  

 

 信号機の前で待ち合わせをしていた。時計を持ってなかった。信号の色が規則正しく変わった。赤、青、赤、青と。時計を眺めるようにしてそれを見ていたのである。僕は早く着きすぎたようだった。

 

 

 

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 洗濯機                                                                  

 

 友達がやってきた。挨拶した。近くのカフェに入った。飲み物だけ注文した。

 

 彼は錠剤を何種類か持っていた。1錠飲むとお腹いっぱいになるやつだ。

 

 どの味がいい? と訊いてくる。でも飲ませてはくれない。

 

 彼は家が全自動洗濯機だった。洗濯機の中に住んでいる。最近はあまり外出をしなくなった。

 

 外を出歩いているのは家が洗濯機じゃない連中だ。そうだろ、と彼は言う。そうだな、僕は頷く。

 

 

 

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2024年6月 7日

 授業料                                                                  

 

 黒板の前に立っている先生に直接現金を持っていった。授業料だ。すると黒板がパカッと開いて、事務員のような人が顔を出した。「お金はこちらにいただきます」と言う。信用できるのだろうか。先生もびっくりしているが。

 

 

 

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 料理人                                                                  

 

「白身や黄身に感情移入してはいけない」その料理人は言った。

 

「感情移入ですって?」何を言ってるんだろ。

 

 

 

 見知らぬ女が突然家にやって来て、関係を迫った。僕が応じて手を出そうとすると、「何でいきなりそんなことするの?」と声を上げた。「じゃあ帰ってください」と僕は言った。

 

「やるまで帰らない」と女。吐息が熱い。

 

 ところがよく見ると女だと思っていたのは水色のカゴの中に多数入れられていたドライヤーだった。熱風を吹き出している。誰が運んできたんだろう。カゴは重い。

 

 

 

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2024年6月 4日

 空想                                                                  

 

 猛スピードでバックしてくる車が僕を跳ねた。全身を激しく打った。すると時間の進み方が突然ゆっくりになった。頭の中を過去の記憶が走馬灯のように駆け巡った。

 

 その記憶は、実際に体験したものばかりではなかった。夢のような空想も多く混じっていた。現実より空想の方が多かったかも知れない。

 

 ある空想の中では、僕は美女と結婚したことになっていた。

 

 現実には存在しない、空想の結婚相手に向って、僕は即興で考えた空想の言語で語りかけた。「○△×○△」

 

 空想の愛の言葉だ。空想の相手には伝わらなかったが、僕は何回も何回も言った。僕は死ぬのだと悟った。

 

 

 

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 告白                                                                  

 

 告白罪ができた。男が女に愛の告白をすると、逮捕されてしまう。人生詰む。女から男への告白はいいのか。いいらしい。僕は待った。僕はハンサムだから。知らないたくさんの女がやってきた。彼女らは僕の知らない外国の言葉で、一言か二言何か告白し、去った。

 

 

 

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 ちょう                                                                  

 

 僕は町(ちょう)から来た。そこは小さな村(そん)だった。村長が僕を出迎えた。

 

 広場にロケットが用意されていた。僕はロケットでちょうに帰される。宇宙服に着替えて乗り込むと、すぐにカウントダウンが始まった。カウントダウンはいきなり「2」から開始されたので、僕は焦った。

 

 

 

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2024年6月 1日

 青と黄                                                                  

 

 みんなで1枚の大きな紙に絵を描いている。もう遅いからと言って2人が家に帰る。1人で好きなように描きたい僕は最後まで残ることにするが、絵の具は既に青と黄色しか残っていない。

 

 後ろを振り返る。半開きになったままのドアの向こうから入りこんできた熱い風に吹かれる。風は絵のところへ行く。それは絵を乾かそうとしているのだ。

 

 

 

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 ラジオ                                                                  

 

 ラジオをつける。待っていたかのようにDJが喋りだす。「○○君においらの先生を紹介するよ‥‥」どうして僕の名前を知っているのだろう。

 

「先生はすごいんだ‥‥」

 

「先生はバレーボールの選手だった‥‥」

 

 僕の背後に背の高い女性が出現する。彼女は僕の隣にやってくる。11時になった。DJはお喋りをやめる。

 

 

 

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2024年5月31日

 刑事                                                                  

 

 その宇宙船には刑事だけが乗っていた。何百年も人工冬眠して大宇宙を旅する‥‥。目的地に到着する前に1人目覚めた刑事は不思議に思う。「犯人」はどこにいるんだろうか。

 

 

 

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2024年5月30日

 スキー                                                                  

 

 ホテルのロビーのテレビのニュースに映っているのはこの人たちだ‥‥オリンピックで大活躍した選手たち。スキャンダルの渦中にある彼女らと同じホテルに泊まっていた。僕はテレビを消すか、チャンネルを変えようと思ってリモコンを探した。背の高い彼女らの間を、スキー板を持ってウロウロした。‥‥僕はスキーは初めてだということを彼女らにまだ言ってない。

 

 

 

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 残業                                                                  

 

 オフィスで働いている僕たち4人のもとに料理が運ばれてきた。仕事を中断して集まった。何なんだろう。注文した覚えはない。後から請求が来るのだろうか。料理を運んできた女性は何も言わずに帰った。

 

 同僚の男性が一口食べた。目を伏せ、何も言わずに仕事に戻った。それを見た僕らは働く気をなくしたのだ。

 

 

 

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2024年5月29日

 標的                                                                  

 

 カンフーのような、護身術の訓練を受けていた、僕の隣では、別の訓練生が、銃の扱いをレクチャーされている。

 

 狙い、構えた。彼は、何発か撃った。弾は、ゆっくり飛んだ。人型の標的に向って、まっすぐ進む、弾丸、彼は自分の撃った弾丸を追い越し、倒錯的な喜びを感じながら、笑顔で標的の前に立った。

 

 

 

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 演習                                                                  

 

 最初に人の名前、そして「これは演習ではない」と、放送があった。僕に向けられた言葉ではないのだろう、か。僕は自分の名前が、思い出せない。

 

 容疑者が、非常階段を下りてきた。赤い靴と、スカート。部屋で、着替えてきたようだ。僕は、拳銃を構えた。「これは‥‥拳銃ではない」。そして、僕は、先程の名前を叫ぶ。

 

 

 

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2024年5月28日

 緑色の茎                                                                  

 

「傘貸して」

 

「やだよ」

 

 雨の季節が来た。地面から緑色の茎が生えている。1本だけ。ネギのように見えるが違う。それは傘だ。それはあちこちに生えている。強い風が吹いて斜めになる。

 

 

 

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 整形                                                                  

 

 整形外科医になった妹に手術してもらうことになった。お兄ちゃんは口をもっと大きくした方がいいと言う。横に広げるのだ。洗濯バサミのような器具で僕の唇の両端は引っ張られた。その状態で笛を咥えさせられた。何か吹いてと妹はリクエストした。

 

 

 

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2024年5月27日

 ペンペン                                                                  

 

 無人のゴール前でパスを受けたバスケの選手が、丸出しにした尻をペンペンしたりして、相手チームをからかうが、

 

 どうすることもできない。

 

 彼はシュートを決めた後、ゴール裏にあった平屋の住宅に駆け込み、奇声を上げ、中にあったテレビやソファーを窓から投げ捨てる。

 

 ゴール周辺が、粗大ゴミ置き場のようになる。ボランティアによる片づけが始まる。試合は一時中断する。

 

 

 

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 当たりくじ                                                                  

 

 宝くじを買う。そこには僕の顔が、紙幣のように印刷されている。手に取り、ずっと眺めている。5億円。当たったのだ。

 

 1日中、ニヤけている。

 

「お兄ちゃん、もしかして」妹が声をかけてくる。僕は当たりくじを妹に見せる。

 

「この顔はお兄ちゃんの顔だ、間違いない!」

 

「これで大金持ちだな」

 

「金持ち兄ちゃん(笑)、私にいくらくれるの?」

 

 

 

「お前さ、これからバイトだっけ? 3時間?」

 

「えー、うん‥‥」

 

「行ってこい。今日の時給は5千万円だ」

 

「えっ」

 

「帰ってきたら‥‥」

 

「きゃー(笑)」

 

 妹はバイト先へ向う。

 

 

 

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 モナリザ                                                                  

 

 日本の大富豪がモナリザを買ったという。ニュースを見た。世界的名画だ。

 

 例の謎の微笑がテレビに大写しになる。

 

 だがその顔は、どう見ても僕の顔だった。モナリザは、僕だった。

 

 

 大富豪がインタビューで答えている。

 

「今日から私がモナリザ」

 

 いつ入れ替わったのだろう。モナリザと大富豪と僕と。

 

 

 

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2024年5月25日

 町は外国気取り                                                                  

 

 その女性は、バスの中で歌い出す。「あのカーブを左に曲がると、町は外国気取りよ」

 

 僕は初めて聞くが、よく知られた歌らしい。乗客のみんなが、合唱し始める。実際にはバスは、右折する。急停車する。

 

 みんなが降りるので、僕もつられて降りた。しかしそこは、僕の行きたい場所ではない。

 

 みんなは改めて、左に行った。僕はまっすぐ行くことにする。僕の行く道にだけ、雨が降っている。

 

 

 

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 ふたえまぶた                                                                  

 

 バスを待っていると知らない女性が話しかけてきた。僕の親しい友人だというふりをしたがっているようだ。東洋人にしては異様に彫りが深く、きれいな人だったし、話もおもしろかったので、僕も演技してあげることにした。

 

 愛想笑いをしたり、「そうだね」などと相槌を打ったみたりである。そのうちにバスが来た。

 

 バスの中では、僕たちは少し離れて座った。すると彼女の隣に座った男性が、彼女に話しかけた。彼も彼女の友達のふりをしているのか、それとも本当の友達なのかわからない。

 

 彼女は僕に顔を向けて、二重のまぶたが、三重にも四重にもなるような、何とも言えない不思議な表情をした。

 

 

 

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 巨人戦                                                                  

 

 そこは砂漠だった。歩いていくと雪原になった。足元の雪は固く凍りついている。

 

 何度も滑って転びそうになる僕の、ポケットの中の電話が鳴った。安全な「小屋」にいる友人たちからだ。

 

「今夜の巨人・中日は、どっちが勝ったんだ?」

 

 知るか、と思ったがテキトーに答える「巨人」

 

「何対何で?」

 

 雪原の中に、黒いセダンが1台停まっているのを見かける。何なんだろう? 僕は乗せてもらおうと近づく。車内ではスターウォーズのテーマ曲がかかっている。かなりの大音量だ。

 

 

 

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 登校                                                                  

 

 彼女は高校の制服を着ている。バッジを見ると2年生だ。男の後をついていく。それは学校のある方向とは違う。

 

 僕は高校の方へ向って歩き出す。僕は3年生だ。僕の前を女の人が歩いている。僕も女の後についていく形になってしまった。彼女の顔は見えないけど美人だろう。

 

 

 

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2024年5月22日

 国境                                                                  

 

 国境を歩いて越えたとき、クレジットカードも現金もないことに気づいた。家に忘れてきた。家は歩いて帰れる距離にあったが、戻る気にならなかった。もう面倒くさかった。考えるのも、決断するのも。

 

 1人で来ていた。ジャージの上下を着ていた。パジャマの代わりにしている、紺色のジャージだ。ポケットに煙草の箱があった。国境の兵士に渡そうと思って持ってきたやつだ。彼らがワイロを欲しがると思ったのだ。

 

 

 

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2024年5月21日

 降雪                                                                  

 

 カーテンを開けると眩しい日差し。夏の朝だった。朝から暑かった。しかし窓の外は雪だった。激しく降っていた。積もってはいなかった。積もるのだろうか。

 

 子供と一緒に予想した。どのぐらい積もるだろう。スキーができるくらいに? いや積もりはしないさ。結局その日、僕たちは外に出なかった。なので雪がどうなったのか知らない。次の日の朝はいつもどおりの夏だった。

 

「もう雪は溶けてしまっただろうね」 僕は子供に言った。だが何のことか子供にはわからないようだった。

 

 

 

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 閉まり切らないドア                                                                  

 

 郵便受けに入っていたスーパーの特売のチラシを手に歩き出すと住宅街は幟の立ち並ぶ商店街に変わっていた。驚いて後ろを振り返ったがそこはもう僕の家のある区画ではなかった。空には飛行船が浮かんでいて通りには賑やかな音楽が流れている。とにかくしばらく歩いてみることにした。

 

 僕の家の前に着いた。どうしてこんな商店街のド真ん中に僕の家があるのだろう。玄関のドアは閉まり切ってなかった。これはいけない、と思った。蹴飛ばしたらなんとか閉まったが、しかし開けるとき大変そうだ。

 

 

 

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2024年5月20日

 禁煙                                                                  

 

 僕の家は広い。だからなのか、たくさんの人が集まってくる。何人かは知り合いだ。さっきまで話していた。彼らは自分のウチに帰った。玄関まで見送りに出た。

 

 2階に残っているのは知り合いの知り合いといった連中だ。寝室では女のコが2人、裸になって抱き合っている。その向こうでは誰かが煙草を吸っていた。ここは禁煙だよ、と僕は注意して窓を開けた。

 

 

 

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 花柄のシーツ                                                                  

 

 出かけようと思ってパジャマのズボンを脱ぎ、ブラックジーンズを探した。それは家の中にはなかった。なぜか郵便受けの中にあった。新品のように見える。サイズはちょうどよかった。それをはいて家の中に戻った。

 

 2階のベッドには花柄のシーツがかけられていた。学校の教室のような広い寝室だ。「教室」の隅の方で妹が寝ていた。女の「先生」が妹を起こした。あれは母だろう。

 

 なら「教室」というのはどこなのだろう。いやだんだんわかってきた。僕は夢を見ているのだ。妹も服を探しているようだ。郵便受けに届いているかも知れない、と僕は声をかけた。きっと新品が。

 

 

 

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2024年5月19日

 クリスマス                                                                  

 

 捨てられていた子猫を拾い上げた。僕の耳に音楽が聞こえてきた。クラシックの名曲だと思うが、どうしてもその題名を思い出せなかった。

 

 僕は子猫を放した。そうすると音楽はやんだ。題名は思い出せないままだったが、気分は楽になった。

 

(猫を抱き上げるとまた音楽が聞こえてくるんだろう。どうせ題名は思い出せないんだろう。もやもやするんだろう。そんな音楽ならない方がいい‥‥)

 

 

 もういちど猫を抱き上げた。自分がどんな気持ちになるか試してみるために。しかしもう音楽は聞こえてこなかった。

 

 代わりに聞こえてきたのは知らない女の声だった。

 

「クリスマスに電話したのよ」と彼女は言った。「でもあなたは電話に出なかった」

 

 

 

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2024年5月18日

 日傘                                                                  

 

 赤いランドセルを背負った小学生の女の子が日傘をさしていた。最近ではこの年頃から紫外線を気にするのだ。と思って見ていたら驚いた。女の子は急速に成長を始めた。成人して年寄りになって消えた。その間数秒。数秒で僕は寂しくなった。

 

 

 

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 綺麗な月                                                                  

 

 芝居で「アイラブユー」と喋る鹿の役を演じることになった。「アイラブユー」としか言わない。散歩中の犬に「アイラブユー」と話しかける。犬は逆上してキャンキャン吠える。町じゅうの犬が同調して吠える。なぜなんだ。

 

 

 

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 昭和17年生まれ                                                                 

 

 スカートをはいた人が2人、ズボンが1人、そして僕、長い階段を上っていた。地上に出た。銀行の中にある食堂に入った。ランチの時間で混んでいた。

 

 銀行の窓口のお姉さんが、注文を取りに来た。お姉さんは耳が聞こえないらしく、紙に書いてくれと言った。食べたいものと、自分の名前と、生年月日を書く。名前は代表者だけ書けばいい。ズボンをはいていた若者は偽名を使った。そして昭和17年生まれと書いた。

 

 

 

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2024年5月16日

 壁の時計                                                                  

 

 僕は壁の時計を見た。僕の隣にいた僕の分身も壁の時計を見る。僕の分身は「時間だ」と言う。すると遠くにいた僕の分身たちが、全員近くにやってくる。彼らは何も言わない。彼らは腕時計をしていた。

 

 

 

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 ボウイの魂                                                                  

 

 デビッド・ボウイの魂が僕の体に入ってくるので、僕の体の中に、僕の居場所がなくなる。

 

 僕は幽体離脱して、ボウイの体の中に入ろうとする。うまくいく。僕は自分の携帯にメッセージを送り、ボウイの魂と連絡を取る。「イケメンの人生を楽しめよ」と返信がくる。

 

 しばらくしてボウイの魂は天国に行く。抜け殻になった僕の体はまっすぐ正面を見ている。僕は僕のマネキンのような体に寄り添い、向き合い、彼の目を覗き込む。

 

 僕の瞳に映った僕は、ボウイの顔をしていない。

 

 そこには僕がいる。だが僕は誰を見ているのだろうと思う。

 

 

 

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2024年5月15日

 ヨーグルト                                                                  

 

 王の宮殿に招かれて食事。小さなカップに入ったヨーグルトが出てきた。容器の底に赤いシールが貼ってあったら当たりで、軍に入隊して戦争に行かなければならない。

 

 隣の席の男が当たりを引いたようだ。赤いシールを剥がそうと必死になっている。だが剥がれない。男の後ろに誰かが立った。王だ。僕たちはみんな見て見ぬふりをしている。(この男は戦争に行って死ぬのだろう。)

 

 

 

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2024年5月14日

 旅行                                                                  

 

 北海道へ旅行に行くのに僕は2泊3日でいいだろうと思っていたが、君は物足りないと言って、九州行きの電車に乗る。

 

 九州を1ヶ月ほど見てまわった後、北海道へ行き、僕と合流して3日間過ごす計画で‥‥

 

 駅にわざと置き忘れたバッグ。

 

「やっぱりさ、一緒に九州へ行こうよ」と君は僕の手を取り誘った。

 

「うん」

 

 僕たちは東京から電車に乗った。

 

 

 

 

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2024年5月13日

 紙の束                                                                  

 

 紙の束を持った外国人たちが向う先は僕たちとは反対の方角だった。(ちなみに紙は捨てるのだそうだ。)

 

 僕は君を前カゴの中に入れ家の前まで自転車を漕いだ。

 

 君は家の中から別の紙の束を持って出てきた。

 

 その紙を前カゴの中に入れ、今度は君は後ろに乗った。

 

 坂道を上って下り、交差点を渡るところで強い風が吹くと、前カゴの中の紙はすべて吹き飛ばされていた。

 

 

 

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 重ね着                                                                  

 

 流しにお湯を溜めた。風呂の代わりだ。そこに浸かるつもりだ。湯の中にゴキブリの死骸が浮いている。迷ったけど手でつまんで捨てた。湯が溜まってきた。

 

 服を脱ぎ始めて気づいた。僕は何重にも重ね着をしていた。それで思い出した。昨日から風邪を引いていたのだ。寒かった。しかしブリーフを2枚重ねてはいていたのは何故だろう。

 

 

 

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 分数                                                                  

 

 時間になっても待ち合わせ場所にあらわれない友人をずっと待っていた。結局彼は来なかった。代わりにやって来たのは分数だった。

 

「分数の割り算て苦手なんだよな」と僕は言った。

 

「誰が割り算しろなんて言った?」

 

「太腿が痛くなってきちゃったよ」

 

「太腿?」

 

「さっき角にぶつけたんだ」

 

 分数は太腿がないと言った。

 

「僕は太腿がないんだよ」

 

 太腿がないってどういうことかな‥‥

 

 

 

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 コタツ                                                                  

 

 コタツで横になっていると目の前の窓が開けられ、

 

 飼い猫を抱いた隣の家のおばさんが顔を出した。

 

 おばさんは茶トラの背中を掻いてあげている。

 

 おばさんは僕には目もくれず猫の背中を掻いている。

 

「掻き終わったら窓を閉めてくれないかな」と僕は頼んだ。

 

 窓を開ける必要もなかったはずだ。

 

 

 

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2024年5月12日

 メビウスの輪                                                                  

 

 僕の体のメビウスの輪のようにねじ曲がって女房とつながった部分にジェットコースターがあるのが見えて1人乗り込む。

 

 現実にはありえないアクロバティックな体勢で家の掃除をしていたら体が元に戻らなくなってしまった廃人の僕にその体位で抱かれたいと女房は言うので

 

 とりあえず試しに1回やってみることにしたのだ。

 

 

 

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2024年5月11日

 ハワイ                                                                  

 

 一緒にホテルの部屋で映画を見ていた女房が暑いと言って服を脱ぎ始めた‥‥結局全部脱いでしまった。僕は驚いた。いったいいつの間にこんなに全身真っ黒に日焼けしたのだろう。ふだんから服を着ていないに違いない。彼女が服を着るのは僕の前でだけなのだ。

 

 僕は逆に寒いと言って上着を何枚か重ね着してから女房を抱いた。その間ずっと彼女は笑いながらハワイの話をしている、ここはハワイだと。ハワイにいるのに何でコートを着てマフラーをしているのと。

 

 あぁずいぶんと寒いハワイだ。

 

 

 

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2024年5月10日

 地底人                                                                  

 

 地底人を探していた僕が、ついでにモグラも探してくれと依頼された件。

 

「同じところで見つかると思うんだ」

 

「モグラを見つけてどうするの?」

 

「食べる」

 

「モグラってうまいの?」

 

「食べたことないのか?」

 

「ないよ」

 

「地底人を探してどうする?」

 

「食べるのさ」

 

「地底人を?」

 

「まさか」

 

 

 

「モグラって何食ってるか知ってる?」

 

「土だろ」

 

「ははは。モグラは地底人食べるんだよ」

 

「地底人の主食もモグラである」

 

「地底人は土を食べてるよ」

 

 

 

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2024年5月 9日

 傾斜                                                                  

 

 大学で読むように薦められた2冊の本を買いに行った書店は学生でごった返していた。

 

 そこでバイトしている1人の友人が

 

「例の本を買いに来たの?」

 

 バックヤードに残っていた本を出してくれた。

 

 

 

 その本を持ってレジに並ぶ。行列ができているのだが、書店の床はレジに向って傾斜になっている。とても滑りやすい床で、客はレジの反対側に流されてしまう。

 

 傾斜がさらにきつくなった今書棚の本が床に落ちて雪崩れる。

 

 

 

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 子犬                                                                  

 

 子犬とあだ名されている教授が身を屈めて僕の足元を通った。

 

 僕は教授に(人間として)きちんと挨拶しかけたが、隣にいた連れの女のコが

 

「超可愛い子犬!」

 

 それで‥‥教授も犬のふりをすることにしたようだ。

 

「見て、しっぽ振ってる」

 

「子犬がしっぽ振ってるね」

 

「すごく可愛いね」

 

 僕は子犬に 「もしかして人間の言葉がわかりますか?」と訊いた。

 

 

 

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2024年5月 8日

 B1                                                                  

 

 エレベーターに乗った。下りるところは「20」と「1」と「B5」しかなかった。「B1」で下りたかったのだが。

 

「1」で下りて階段を使えばいいだろう。

 

 しかしそこに階段はなかった。「B1」は地下鉄の駅とつながっていたはずなのだが。

 

 仕方ない。僕は歩いて、外に出ようとした。けれどそこは「1」という看板があるだけの町だった。 どこまで行っても何もなかった。

 

 

 

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 挽肉                                                                  

 

 レストランで僕は1人で食事をしている。高級店だが1人で席についている者が目立つ。彼らと同じように僕もスマホと一緒に食事をしたのだ。奇妙なレストランだった。

 

 この後9時に約束がある。それまでの時間潰しだった。さて時刻は8時半。会計を済ませ待ち合わせの場所に向う僕を追いかけてきた店員が言った、

 

「お忘れですよ、厨房の冷蔵庫に挽肉を‥‥」

 

 僕は買い物帰りだった。

 

 

 

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2024年5月 7日

 布団干し                                                                  

 

 雨の日に、布団が干されようとしているのを、僕は阻止する。やめろ、やめろ‥‥

 

 その布団係の、顔を見て、僕は驚いた。スマップの、稲垣ではないか。

 

 お互い顔を知らない、文通相手に、今日初めて会う約束だ。

 

 ちょうどよかった。その顔を貸してください、と僕は頼む。

 

 僕の顔がスマップの稲垣だったら、どんな女のコも、喜ぶはずだ。

 

 布団干し係が稲垣の顔をしてても、仕方ないだろう‥‥

 

 ‥‥

 

 相手のコは、自前の顔であらわれた。

 

 頭だけ、メドゥーサに借りたようだ。

 

 横を向いたまま、こちらを見ようとしない。(照れているのだ。)

 

 髪の毛の蛇が、ちらりと僕の稲垣を見た。

 

 彼女の蛇は紫色に染められている。

 

 

 

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 自問自答                                                                  

 

 窓の外の景色はモトリー・クルーのMVのようだ。「いやただの景色」と僕。「これのどこがモトリー・クルーのMVなの?」と僕は自問した。

 

 誰かが隣にきて、「窓が開かない」と言う。その誰かの後ろにも誰かがいて、同じことを言った。

 

 

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 世界中                                                                  

 

 僕を見た子供が「あなたは世界中でいちばん髪の長い男ね」

 

 また別の子が「世界中でいちばん痩せた男ね」

 

「骸骨みたいね」

 

  ちょっと待てよ、僕はそんなに痩せてない‥‥

 

  たぶんそういうゲームなのだろ‥‥

 

 また別の子がやって来て僕を見上げて「世界中でいちばんね」と。

 

 

 

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2024年5月 5日

 ノーヘル                                                                  

 

 手に入れたばかりのでっかいオートバイに跨がり小さな町を巡回中、ヘルメットをかぶるのを忘れていることに気づいた。服を着るのも忘れていたけど、僕の姿は誰にも見えなくなっていたに違いない。だって誰も何も言わなかったから。何の注目も浴びなかったから。

 

 自宅に戻り、バイクのエンジンを切る。オートバイに乗るのは久しぶりだった。気持ちいいけど少し怖い。それから歩いて町の中心部にあるスーパーへ行った。野菜をカゴの中に入れてレジに向うと、顔馴染みの店員さんが声をかけてきた。「ひさしぶりね」

 

「ひさしぶり?」

 

「夜中にまた買い物に来る?」

 

「夜中?」

 

「廃棄になったお惣菜を?」

 

 家に帰ってから思い出した。僕はあのスーパーのオーナーだった。元オーナー。店を売った金でバイクを買ったのだ。

 

 

 

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 腹筋                                                                  

 

 大きなバーコード・リーダーが、僕の腹筋を読み取る。「よく鍛えてらっしゃいますね」と店のお姉さんはお世辞を言う。けっこうな金額だったが、腹筋で払えてしまった。

 

「QRコードみたいになってるお客さんも多いんですよ」

 

「ん‥‥」

 

 正に前の客がそうだった。中年の男性だった。腹筋ではなく現金で払っていた。

 

 

 

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2024年5月 4日

 シャボン玉王子                                                                  

 

 行く手にひしめくシャボン玉を、割りながら突進する獣を見て、まだ言葉が喋れないシャボン玉王子は泣く。僕の手に抱かれた彼が創造したシャボン玉だった。

 

 

 

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 蒸気                                                                  

 

 途中下車した。改札で切符を見た駅員が、何か言いたそうだ。実際、言ったのだと思う。いつもとは逆に、僕は言葉がわからないふりをする。

 

 駅に直結したデパート。僕は動く歩道に乗る。土足禁止です、と注意された。慌てて靴を脱いだ。

 

「靴下も脱いでください」

 

 ‥‥床からは熱い蒸気が吹き出している。濡れた足の裏が柔らかくなる。

 

 

 

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 サッカー                                                                  

 

 僕らはサッカーをしていた。お屋敷の庭で。扉が開けられている、その中にゴールキーパーがいた。僕はボールを蹴り込んだ。キーパーは扉を閉めてブロックした。そして扉に内側から鍵をかける。ずるいじゃないか。

 

 

 

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 石窯                                                                  

 

 石窯の中にいるようだ。君はこの暑さを屋根にある太陽光発電パネルのせいにする。少しでも涼しい部屋を探して家中移動する。

 

「屋根、外しちゃいなさいよ」

 

 苛立ちわめく。「‥‥早く」

 

 僕は脱水を終えた洗濯物を山ほど抱えている。どこにも干す場所がない。仕方なく書斎の机の上に置くと「ジュッ」という音がした。一瞬で乾いてしまった。

 

 

 

 

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 バク転                                                                  

 

「身だしなみの基本はドライヤーです」とその講師は言う。

 

「ドライヤー、持ってない人いますか?」

 

 そこにいた5人の内、3人は持ってなかった。

 

「残念ですがあなたがたには私の講義を受ける資格はありません」

 

 

 さて残ったのは僕と髪の長い美人だ(彼女は元体操選手だという)。身だしなみの講師が彼女と僕をジロジロ見比べて言う。

 

「あなた、本当にドライヤーを持ってるんですか?」

 

「持ち歩いてます」

 

 僕は鞄を開けてドライヤーをちらりと見せる。

 

 元体操選手はそれを見てバク転をした。「疑って悪かったわ」

 

「はぁ」と僕。いや、バク転はみごとである。

 

「先生もおわびに何かしなさいよ」と彼女。

 

 

 

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2024年5月 2日

 宿題                                                                  

「AVの方が稼げるよ」と私は友達に言う。

 

 私はAV女優で、彼女はソープ嬢だ。アイスを食べている。

 

「私よりアンタの方が金持ちなの?」「かもね」「じゃアイスもう1個奢ってよ」

 

 

 

 彼女の宿題を私が代わりにやった。昼から始めて、結局徹夜した。終ったころには、私は熱を出していた。服を着たまま、ベッドに倒れ込んだ。

 

 大汗をかいて、目を覚ました。何時間眠ったのか、わからない。汗で濡れた服を脱いだ。トイレに行くのが面倒で、床に小便をした。小便は、床に吸い込まれて消えた。

 

 

 

 居間に彼女はいた。宿題、終ったよ。私は言い、パソコンからブリントアウトした紙を渡した。印刷が薄いわ、全然読めないじゃない。彼女はそう言った。

 

 

 

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 サッカー部                                                                  

 

 僕たちサッカー部員の前に神様があらわれて、こう言った、「明日のサッカーの試合を試合を晴れにしてやろう。だがその代わりお前らの誕生日は雨になる」

 

 試合や誕生日が雨になったところでどうということはない、みんなはそう考えた。しかし僕の誕生日は七夕なのだ。

 

 

 

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 逃走中                                                                  

 

 パンを盗み食いする。パンは2種類ある。固いパン、柔らかいパン。僕は迷った末、固いパンから食べ始める。誰もいない、暗い部屋だ。固いのを食べ終えたところで、部屋を出た。柔らかいパンは逃走中に、歩きながら、あるいは文字通り走りながら食べようと思ったのだが、正解だった。

 

 階段を下りていく。段には靴が置いてある。僕は靴を履いてなかったので、どれか一足頂こうと思った。紐を結ぶタイプより、ローファーがいいだろう。ローファーは階段のいちばん下にあった。そこまで裸足で下りていく。

 

 

 

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2024年4月30日

 切符                                                                  

 

 僕は16時に出るバスの切符を持っている。毎日その時刻にバス停へ行く。そしてバスには乗らない。家に帰る。

 

 次のバスは16時50分。そのバスが来るのを待ち、バスがやって来るのを見て家に帰る。

 

 乗車券売り場の人は不思議がった。なぜ乗りもしないバスの切符を買うんだい、それも毎日?

 

 僕は答えようとしてやめる。

 

 

 

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2024年4月29日

 観戦                                                                  

 

 地方のスタジアムで、ルールのよくわからないスポーツの試合を僕は観ている。

 

 とりあえず、青いユニフォームを着た選手の応援をすることにした。(ちなみに選手は数え切れないくらいいて、みんな違う色のユニフォームを着ている。)

 

 観客席で撮った自撮り写真を友達に送り、これって何の試合なんだろうねとついでに訊く。

 

 

 

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 溶けたチョコ                                                                  

 

 ディーラーの握り拳の中に4つの数字がある。サイコロを転がして出した数字とは一致しない。友人たちはまた全部外した。

 

「いつかこれで大金を手にするんだ」いつも言っている、ギャンブル好きの彼ら。

 

 もう帰ろう‥‥

 

 

 車に戻った。友人の1人が私と2人だけで話したいと言った。異議を唱えるもう1人の友人を、彼は殴って黙らせた。殴られた方はなぜか楽しそうに笑って‥‥

 

 ‥‥

 


「話って何?」車から離れたところで彼に訊いた。

 

「お前に渡すつもりだったチョコレートな、溶けちまったんだよ」

 

 彼は悲しそうだった。道端にそれは落ちていた。溶けて人魚の形になったチョコレート。愛の証‥‥

 

 私がそれを拾って食べようとすると、彼は私のことを「愛してる」と言いながら殴った。

 

 

 

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2024年4月27日

 バス代                                                                  

 

 さっきから動かないバス。バスを降りるときに3200万円を支払うのだ。僕じゃない。僕の友達が。彼はそんな大金は持ってない。支払いは待ってやってくれ、と僕は運転手に頼む。何度か頼む。

 

 運転手は何も言わず、どこにも行かない人たちが乗ったバスはまだそこに停車したまま。そう永遠に。

 

 

 

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 地下                                                                  

 

 地下のそのスペースにたくさんの人が集まっている。みんな友人だがもう誰が誰だか思い出せない。ある音楽が演奏されたのだった。その音楽は僕たちの記憶を洗い流していった。‥‥帰ろうかと思うが足が動かない。ここがどこなのかすらわからない。何か重大な目的があって僕たちはそこに集まったのだった‥‥

 

 会場の出口では記憶が売りに出されている。それは1点ずつ違うCDだったり紙の本だったりする。映像データではないのだ。それでも自分の記憶なら買いたいと思うが、僕たちは自分が誰なのか知らない。

 

 

 僕は床に落ちている硬貨を拾う。本物のお金なのか、ゲームセンターで使われているコインなのかわからない。とにかく全部拾う。たくさんのコインが落ちている。僕は財布を持ってない。誰も財布を持ってない。人々のポケットには穴が開いていて、中にあるものが全部溢れ落ちる。僕たちは床に両膝をつく。僕たちから溢れ落ちたものの中に僕たちは埋まっていく。

 

 

 

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2024年4月25日

 宝くじ                                                                  

 

 知らぬ間に宝くじが当たったようだ。きっとオンラインで買ったやつだ。大金が口座に振り込まれている。僕はその金を全部引き出し、宝くじ売り場へ向かい、そこで売られている宝くじを全部買う。そこで気づいたことがあるのだが、1億円分の宝くじの束は、1億円の札束より軽い。

 

 

 

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2024年4月24日

 巨大化                                                                  

 

 町の上空に浮かぶ雲のベッドで僕は目覚めた。寝ているうちにまた巨大化してしまったようだ。ベッドから足を下ろすとき住宅を一棟踏み潰してしまった。

 

 いつまで寝ぼけているんだ、と町の住人から怒りの声が上がる。

 

 ベッド下に落したティッシュの箱を取ろうとして暴れ回り、町の一区画を更地にしてしまったところで、完全に目を覚ました。

 

 

 

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 東大生                                                                  

 

 東大生とは、東京大学の学生ではなくて、東京大学に連れていってくれる人のことだと、その人は主張し、5月のある日、東大を案内してくれたのだ。

 

 東大は東京の大学というより寺院のようで、建物の中に入るとき、靴を脱がなければならなかった。

 

 その日は休みなのか、構内に学生や教員の姿はなく、静かだった。

 

 犬小屋があって、そこで白い犬が寝ていた。

 

 

 

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2024年4月23日

 右ハンドル                                                                  

 

 右側通行の道路、右ハンドルの日本車とすれ違った。赤いスポーツカー。運転していた女性が歩道の僕に手を振った。僕も振り返すと、それを合図に人が集まってきた。日本語が通じるか挑戦したい、という人たちだ。日本語を学んでいる学生たちだった。

 

 

 

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 大猫                                                                    

 

 その家の玄関の前には大猫がいて、カメラを構えた僕が近寄ると後ずさった。そうか写真に撮られるのが嫌いなんだ。家に入るのに大猫が邪魔だった。どうすればどいてくれるだろうと思っていた。無事追い払うことができた。

 

 

 

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 L字型                                                                  

 

 夕日を浴びて電車が走っている。電車には人は乗ってない。ジャガイモが積まれている。収穫したばかりのジャガイモだ。

 

 線路はあるところで直角に曲がっている。電車はそこを上手く曲がれず、脱線してまっすぐに行ってしまう。まっすぐ行った先には車庫がある。まだ車庫に入りたくない、と電車は思う。

 

 

 

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 雑巾                                                                  

 

 陰茎は固く絞られた雑巾のようだった。僕だけじゃなくみんなのがそうなっている。ニュースでやっていた。みんなそうなってしまったなら仕方ない。

 

 小便をするときはそれをさらにきつく絞る。残尿感があるならまだ絞れるってことだ。

 

 

 

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 アラーキー                                                                  

 

 この写真家を僕はアラーキーという仮名で呼ぶことにする。つまり僕が拾ったのは普通のエロ本・エロ写真集ではなかったのである。後で見てわかったが、それはあるストーカーの日記だった。彼(おそらく男だろう)は複数の女性を追いかけていて、隠し撮りした写真の他に、標的の女性の利用するバスの時刻表や、訪れるカフェのメニューなども参考資料としてあり、その本を持っているのが僕は怖くなった。

 

 

 

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2024年4月22日

 平行世界                                                                  

 

 アイマスクの代わりに黒いタオルを巻いて寝ていた。電車の中だ。電車が駅に着いた。慌てて飛び起き、降車した。目的の駅の、1つ前だった‥‥

 

 やってしまった‥‥降りたホームで、次の電車を待った。それはすぐ来た。先行する電車に追いつき、しばらく平行して走る。向こうの乗客たちが、僕に手を振っている。

 

 

 

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2024年4月21日

 高速道路                                                                  

 

 高速道路を僕は歩いている。険しい山を削ってつくられた道だ。時速300キロで走る透明な車が、僕の体を通り抜ける(逆なのかも知れないが、透明なのは僕の方で)。

 

 路肩に男の子がいる。1人で遊んでいる。危険だ。僕は声をかけた。

 

 親に電話してやるよ、迎えに来いって言ってあげる。

 

 おうちの電話番号、覚えてる?

 

 迷子の男の子が教えてくれた番号にかけると、それは僕の実家だ。死んだはずの母が出て、父に代わると言う。父は既に僕のことがわからない。

 

 

 

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 酒瓶                                                                  

 

 足元に酒瓶があった。隣のテーブルの方に蹴飛ばした。赤い酒が入っていた。僕は酒を飲まない。

 

 隣りのテーブルで飲み食いしていたグループが僕に手を振って挨拶したのを見て席を立った。

 

 店の外に出ると明るかった。朝だ。カネを払わずに出たことを思い出した。

 

 僕はいろんなことを忘れていた。椅子の背には上着をかけたままだった。上着の内ポケットには財布が入っていた。

 

 

 

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 13歳の心臓                                                                  

 

 僕は窓際に追いつめられた。窓から外に逃げようと思った。

 

 しかし窓には鉄格子が嵌めてあった。

 

 そいつは僕の体の中から「13歳の心臓」を抜き取ろうとした。

 

 取っても死にはしないとそいつは言うが‥‥そもそも「13歳の心臓」って何だ?

 

 

 

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 相思相愛                                                                  

 

 愛する女に初めてキスしようとしたとき、私は自分が女になっていることに気がついた。

 

 私がキスをすればこの女は男になるのだろうか、と考えながらキスした。目は閉じなかった。女の変化を観察していたが、何も起こらなかった。相思相愛の私たちの未来が、少し不安になった。

 

 

 

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 レンタカー                                                                  

 

 女が「レストラン」と言っている。それを聞いた男が「レンタカー?」と返す。「レストラン」大声。「何借りるの?」さらに大声。「レンタルビデオ?」日本人の観光客だ、地下鉄の中。僕は用もない次の駅で降りる。

 

 

 

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 怪獣                                                                  

 

 怪獣の背中に生えているような刺が、道路に生えていた。車は走れなくなった。ある日突然のことだった。僕は茫然と見つめた。

 

 刺は完全な等間隔で生えていた。人工物には見えなかったが、自然の物とも思えなかった。僕はスマホを覗き込み、世界を裏で牛耳る悪の組織の陰謀ではないかという説が、狂人たちの口から、説得力をもって語られるのを待った。

 

 

 

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 知識                                                                  

 

 ポケットから取り出した紙片、4つに折られていたのを開いて、約3分間、お湯に浸すのだ。

 

 書かれていた文字が、お湯に溶け出して、紙が真っ白になったら、取り出すのだ。

 

 文字が溶けたお湯を、僕は飲むのだ。知識が僕のものになる。

 

 

 

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 受話器                                                                  

 

 電話は、黒いダイヤル式の電話だった。ネットに投稿した僕のエッセイを読んだという人から、電話がかかってきた。「嬉しいよ」と言う、その声は知らない、若い男のものだった。たしかに嬉しそうな声であった。

 

「何が嬉しいの?」僕の返事にも、相手は愉快そうに笑った。その笑い声が僕を不安にさせる中、手にした受話器が、重くなったり、軽くなったりした。この自分の手にしているものは、いったい何なのだろうと僕は思った。

 

 

 

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 富豪                                                                  

 

 地下鉄の車内で、ピンク色のルーズソックスを履いた黒人の女のコが僕を見つめている。目がハートになっている。こんなハンサムな人は見たことがない、とその目は語っている。

 

「私と結婚して」と目は言う。

 

「私は大富豪の娘よ」

 

 大富豪は次の駅で降りる。僕は降りない。大富豪の座っていた席に別の女性が座る。こんなに美しい女性は見たことがない。

 

 

 

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 門                                                                   

 

 長い石段を上がりきると「門」だった。「門」にやってきた。旅の目的地だ。スマホをもういちど見た。

 

 スマホによると、僕は90%の確率で「答え」を見つけることになっているのだ、その門のところで。

 

 さらに10%の確率で「新しい自分」に出会えるという。

 

 

 

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 1枚の紙                                                                  

 

 手作りのバッグを君は持ってきて僕を旅に誘う。

 

 人生で必要なものは全部入っていると、バッグを開け、中身を見せてくれる。ハサミがない、と僕は思った。

 

 ハサミを何に使うの?

 

 うーんとね、切るんだ

 

 旅先に切れるものはないの そうか残念‥‥

 

 それじゃ今のうちに、と僕は思って、紙を切り始めた。僕は紙を1枚しか持ってなかった。切ることによってそれは2枚になり、3枚になった。

 

 

 

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2024年4月10日

 殺し屋                                                                  

 

 女の殺し屋が銃を構え、こちらに向ってゆっくりと歩いてくる。対する僕たちは5人だった。こちらも銃の狙いをつけ、殺し屋の前に立ちはだかった。けれど殺し屋がゼロ距離にまで近づいても、僕たちは撃てなかった。

 

 殺し屋も発砲せず、僕たちの体の中を通り過ぎた。仲間たちは膝から崩れ落ち、二度と立ち上がれなくなった。僕は怖くなり、自分の体から逃げ出そうとした。あぁ、それには成功した。

 

 

 

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