2020年9月21日

オレンジ色の未来                                                                  

 

 お祭りの会場に車で乗り付けた。車から降りて受付に向かった。ところが僕は裸足だった。受付のお姉さんに指摘されて初めて気づいた。僕はそこで靴を借りることにした。

 

 エントランスの向こうに、町が広がっている。町全体が、祭りの会場だった。狭い路地の両側に、出店が並んでいる。町中にオレンジ色の旗が掲げられていた。

 

 僕は君と2人で歩いている。坂を上り切った。左と右に、また別のオレンジ色の通りがつづいている。僕は自分が若返っていると気づいて、ここが僕の過去であることを知った。

 

 君は年を取っている。君にとってこの場所は未来なのだ。君がこれから体験するはずの未来を、僕が少しずつ思い出そうとしていると、君は僕の手を取って、何かひとこと話しかけた。

 

 

 

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2020年9月20日

三途の川                                                                  

 

 川岸に人の列ができていて、先頭の、旗を持ったガイドさんに従って、水に入っていく。ずいぶんと水は浅く、どこまでも歩いて行けた。「あれは本当の川なの?」と君は僕に質問した。「違うと思う」

 

 

 

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2020年9月19日

逆子                                                                  

 

 出産に立ち会った。赤子は足から出てきた。逆子というやつだろうか。僕は固まってしまい、上手く取り上げることができなかった。「あれほど練習したのに‥‥」助産婦さんは僕を笑った。

 

 生まれてきた子供は泣かなかった。顔はベートーベンによく似ている。いきなりフランス語で喋り始めた。「あなたは僕の父親か?」と彼は訊いた。僕はそうだとも違うとも答えられなかった。

 

 結局、女房が妊娠したときが、僕たちの幸せの絶頂だったのだ。実際に子供が生まれると、何かが減少していった。何が減っていったのかはわからない。

 

 僕が日本語で書いた手紙を、子供がフランス語に訳してくれる。それを持って、女房の前で読んだ。「それがあなたの本当の気持ちなの?」と彼女は言った。

 

 子供なんて最初から生まれていない。僕は用意された声明文を読み上げているだけだった。

 

 

 

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2020年9月18日

レタスとトマトのサラダ                                                                  

 

 昼寝から目覚めると夜だった。僕は寝室から階段を下りて行った。1段下りる度に時間が巻き戻って、全部下りたときには、僕は10代の若者になっていた。

 

「夕食の用意ができている」と女の静かな声が言った。「何度も声をかけたのに」

 

 テーブルには、1人分の皿が。レタスとトマトのサラダに、辛いドレッシングがかけられていた。ヨーグルトの小さなカップがあるものの、カルシウムが足らない。メインの料理は、どこだろう。

 

 食堂と、リビングの間の壁が取り払われている。カーテンは開いたままで、暗い窓が鏡のようになっている。

 

 

 

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請求書                                                                  

 

 寝室から階段を下りて行くと、1階の廊下に請求書が並べてあった。ずらりと。しかし支払いは済ませたはずだった。1階の部屋には急に年を取っておばさんのようになった僕の娘と、突然若返った女房がいる。2人は同時に別の話を始めた。

 

 

 

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ペットボトルとリモコン                                                                  

 

 飛行機は着陸した。中東の空港に。空港内を移動するバスが出た。日本人の若い男がいて、僕は話しかけた。

 

 バスは空港を出て、森の中を進んでいる。まだ入国審査も受けてないのに。「拉致されたんだ」と若い男は言った。バスはゴミ処理場に着いた。「僕たちはここで‥‥」と男は言った。その先が聞こえなかった。

 

「僕は就活中なんです」と若い男は言った。「だから諦めが早いんです」

 

 僕たちはそこで、ペットボトルとリモコンの仕分けをすることになった。プラゴミの中から、再利用できるそれを探した。

 

 

 

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2020年9月16日

弱肉強食の海                                                                  

 

 僕の父親は海に棲む大きな魚だった。その魚の群れの中で僕は育った。仲間たちが僕を守ってくれてはいたけれど、泳ぎのできない僕は弱肉強食の海で常に死と隣り合わせだった。

 

 その日もいつものように海面をぷかぷか漂っていると、サメの姿が見えた。サメは人間の僕を食べようと狙っているのだ。僕は安全なバスタブの中に避難した。いつもの避難所だ。サメは父や仲間たちに向かって行った。

 

 父は蛇のようにサメを尾っぽの方から丸呑みにした。その口の先からサメの大きな頭が出たままだった。サメは逃げ出そうと暴れたが、僕たちの仲間のワニに頭部を齧られてしまった。

 

 さてサメの葬式は陸で行われることになった。僕が葬式に出る。バスタブの船に帆を張って1人で港を目指した。血なまぐさい大海原よさらばだ。戻るつもりはなかったが誰にもさよならは言わなかった。

 

 

 

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2020年9月15日

失われた細部                                                                  

 

 巨人が星に降りて来て発掘調査を始めた。しかし巨人はあまりにも巨大だったため発掘の細かい手作業は苦手だった。「そんな大雑把なやり方では」と僕らは指摘した。「ディテールが失われてしまう」

 

 僕たちは巨人の肩に乗ってあれこれ指示しながら星中の遺跡を巡った。すると巨人を操縦しているような錯覚を覚えた。僕は子供のころに見ていたロボットアニメのタイトルだけを思い出した。でもすぐにまた忘れてしまい、永久に思い出せなくなった。

 

 

 

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紅葉狩り                                                                  

 

 僕たちは高校の教室のような広い部屋に泊まった。持って来た服は全部ベランダに放り投げていた。そうしろと言われたからだ。翌朝、チェックアウトしようとすると、僕の洋服だけがなかった。

 

 ベランダには衣装ケースが何段も重ねてあり、みんなの服は丁寧に畳まれてその中にあった。ここは3階か4階だろうか。ベランダから紅葉した木々が見える。下を覗くと観光バスか何台か停まっている。男の人が僕の名を呼んで、手を振った。出発だ。

 

 

 

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2020年9月14日

その固さと重さ                                                                  

 

 カウンターの席で何か飲んでいると、隣に裸の女と、その母親が来て座った(母親は服を着ていた)。僕はその娘の胸に触れ、その固さと重さを測っている。娘は逆立ちして、そうしても胸の形が崩れないことを僕に自慢した。

 

 

 

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2020年9月13日

給食当番                                                                  

 

 給食当番だった。僕は寿司を握っていた。給食に寿司が出るなんて! 寿司を握るのは初めてだ。

 

 いびつな形の寿司を、みんなに配った。文句を言う者はなかった。先生は逆に褒めてくれた。

 

 

 

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2020年9月12日

カミソリの刃                                                                  

 

 僕の部屋にはたくさんの子供たちと、その母親たちが集まって話をしている。僕は今起きたばかりだ。顔を洗って髭を剃りたい。けれどバスルームにも子供たちと母親たちがたくさんいる。

 

 僕はカミソリで顔を切ってしまった‥‥

 

 タオルについた血を、子供たちに見せた。僕は上半身裸のまま、寝室に戻り、ベッドに腰掛けた。そこにも子供たちはいた。

 

 全体としては楽観的だったが、僕はすべての細部を、少しずつ心配している。しかも1日はまだ、始まったばかりだ。

 

 

 

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2020年9月11日

集めた小銭の祈り                                                                  

 

 爆発が起きて、間一髪のところで逃げ出した僕。双子の弟は、発生した有毒ガスを吸ってしまった。もういちど建物の中に入り、弟を救出した。

 

 弟の様子を見た医者の、顔色が白く変わった。何もしようとしない彼を放って、僕は弟を、病院の奥へ運んだ。

 

「吐いてもいいかい?」と腕の中の弟は言った。

 

 病院の奥にあるベッドに、弟を寝かせた。そこら中に、なぜか大量の小銭があった。両手に持てるだけ掻き集めた。祈るために手を合わせると、小銭はこぼれ落ちて、ヂャラヂャラ鳴った。

 

 

 

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写真                                                                  

 

 机の上に、誕生日のケーキの写真と、カードの写真が置いてある。誰か来るのかい? 決まってるじゃないか、と僕は答えて、プレゼントが写った写真を見せる。

 

 

 

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2020年9月10日

石の下で                                                                  

 

 石畳を歩いて壁のところまで行く。石の壁に手を触れた。本物の石より少し柔らかい石だった。

 

 僕はこの石を着れると思った。たぶん、肩に羽織ることができる。布団にしてもいい。石は僕を圧し潰しはしない。僕は石の下で眠るのだ。

 

 

 

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時計と鞄                                                                  

 

 広場の中央に時計売り場が設けられていた。そこで時計を見ている間に鞄をなくした。僕にはもう時計も鞄もなかった。

 

 自分が何を失ったのか、それはよくわかる。しかし何を持っていないのか。それがさっぱりわからなかった。

 

 

 

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2020年9月 9日

手拍子                                                                  

 

 手拍子のコンサートだった。君はステージの中央で天ぷらを揚げ、そのジューッという音に合わせて手を叩いている。

 

 隣に座っていた男は席を立ってしまった。すると客席にも君がいるのに気づいた。僕の隣の隣の席に君は座って、ステージの上の自分を見ている。難しい拍子を要求するステージの君に合わせて、客席の僕たちも手を叩きつづけた。

 

 

 

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決闘招待状                                                                  

 

 招待状が届いた。決闘に招待された。場所は冷蔵庫の前だ。冷蔵庫の中には美味しそうな食べ物がいっぱいだ。

 

 いきなり後ろから殴られた。血も出たが夢なので痛くなかった。「まだ盗ってない‥‥」と僕は抗議した。「ならさっさと盗れ」と決闘の相手は言った。

 

 

 

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2020年9月 8日

列車テロ                                                                  

 

 テロリストたちが列車に乗り込んでくると、乗客のおばさんはここで降りたいと言った。「いいよ」とテロリストの1人は答えた。

 

「どうぞ遠慮なく」。もう1人が促した。

 

 僕たちは先頭車両にいて、男の子が運転台の運転手に向かって話しかけているのを見ていた。

 

 テロリストたちが先頭車両に向かってくる。迎え撃つ僕たちは銃を構えた。だがそこで彼らは超能力を使い、僕たちの記憶を消してしまった。

 

 運転手と話していた男の子が、テロリストのリーダーに銃を向けている。僕が今も強烈に覚えているのはその光景だ。何がどうなってその子がそうなったのかは知らない。

 

 記憶と一緒に消えてしまった。記憶ではないものまで消えてしまった。

 

 

 

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足指の踊り                                                                  

 

 シャワー室で足の指を洗っているとき、彼女はバレエにそれを取り入れることを思いついた。まずはバレエから離れた日常生活の中で。その足の指を洗う動作を、自分に振り付けてみた。

 

 僕はその「足指の踊り」を舞うバレリーナに出会ったのである。キャンプ場で‥‥

 

 

 

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趣味と特技                                                                  

 

 質問者が僕に向けたのは、マイクではなかった。サラダ菜だった。答える代わりに、僕は食べた。

 

 同僚とタクシーに乗り込もうとするところで、彼は僕に言った。「お前、クビになったんだろ、来なくていいよ」

 

 ビートルズが来日する。僕は取材に行くはずだった。

 

「クビって、いつ?」「今」「今?」「お前履歴書の趣味と特技の欄に、ガラスって書いただろ?」「ガラス好きだからな、って何年前の話だよ、なんでそれが今問題になるんだ?」「社長が代わったんだよ、んで、全社員の履歴書見直したんだな、そしたら誰だ、この趣味がガラスってふざけた奴は、クビにしろ‥‥!」

 

 その話を聞いたタクシーは僕たちを乗せずに行ってしまった。

 

 ガラス?

 

 同じ夢の中で、僕はその元同僚と一緒に、人力車を引いている。客は乗せてない。仕事ではないのだ。僕たちはビートルズの4人に会いに行く。そこで趣味の話をするつもりだ。

 

 

 

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2020年9月 7日

黄色い風船                                                                  

 

 その広い駐車場に車は1台もなかった。ただ割れた黄色い風船が大量に散らばっていた。その風船にはある程度の重さがあるようで、朝の涼しい風が吹いてもどこかに飛んで行くことはなかった。

 

 

 

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崖の下                                                                  

 

 崖を下りる途中でとれてしまったその女の人の靴の踵を探している。崖の下はデパートの靴売り場になっていた。あまり客のいないデパートだ。

 

 そのスーツ姿の女の人を僕はただ「マダム」と呼んでいた。いい踵はなかった。

 

「仕方ない」とマダムは言った。「ここでもう1泊しましょう」

 

 僕はタオルの売り場に行く。大小色とりどりのタオルが干してあった。「タオルが必要だと思ったんです‥‥」と僕は答えた。訊かれてもないのに。

 

 

 

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2020年9月 6日

川魚                                                                  

 

「水道の蛇口をひねると、川魚が出てくることがある? ホントなのかな」と僕は思っていた。しかしその少女が蛇口をひねると、ほんとうに水と一緒に魚が出てきた。

 

「ほら」と少女は言った。「大変でしょ?」

 

「川に返してあげなきゃ」

 

 僕は同意したものの、ピチピチ跳ねる魚を、必死で捕まえようとする少女を、何もせず眺めているだけだった。

 

 

 

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湿度                                                                  

 

「何をしてるの、男のコたち?」という声が聞こえる。湿度0%みたいな声が。

 

 風のそよぐ音が聞こえる。パリパリパリパリッと、夢の中で聞くとそれは氷がひび割れていく音だった。

 

 

 

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2020年9月 5日

巻き戻し                                                                  

 

 列車に乗り込んだが、座る席がなかった。それで僕は時間を巻き戻して、改めてもういちど乗り込んだ。そうすると席はあった。

 

 僕はもう1回時間を巻き戻して、乗り込むところから始めた。今度はもっといい窓際の席が空いていて、隣には君もいた。

 

 

 

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2020年9月 4日

群像劇                                                                  

 

 映画に出る。群像劇だった。僕の出番は少なかった。相手役の女優の、美しさを見せるのが主な目的のシーンで、動きも、セリフも、ほとんどなかった。その有名な女優さんにしても、その一場面だけで姿を消すのだ。

 

 ロケ先のロッジに、出演者やスタッフが集まっていて、食事会だった。遅れて到着した僕は、みんなに挨拶しながら、共演の女優さんがいるテーブルへ向かった。ひとつ妙だったのは、女性たちは挨拶を返してくれるのだが、男性たちが、僕を完全に無視していたことだ。

 

 

 

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2020年9月 3日

夏休み                                                                  

 

 川辺に座って、君に電話をかけていた。今どこにいるの、と君は訊いた。僕はどこにいるんだろう。草が生えていて、穏やかな水の流れがある。夏だ。溶けていくような暑さ。今何をしてるの、と君は訊いた。

 

 僕たちは同じ学校の同じクラスだった。卒業式が終って、夏休みになった。その夏休みも終わり、僕は君に電話をかけてみた。僕にはすることがあるのかな、と。夏だ。ここにはすることがあるのかな。

 

 

 

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グーで握る                                                                  

 

 紙に書かれたはずの字が、宙に浮き、解けた。その様子を、目で追う。唐突に、間違ったペンの持ち方をしていることに僕は気づいた。グーで握るようにして持っている。それでマトモな字を書けるわけがない。現実でやっているような、正式な持ち方をしてみる。でもそうすると、ペンは親指の外側に逃げて行ってしまった。

 

 

 

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新型コロナの糞ワクチンは初回全員無料ですと国が言い出しましたが、10万円もらっても受けたくないね                                                                  

 

 日本政府は国民全員にコロナワクチンを接種しようとしている。「任意である」「強制ではない」と国は繰り返し強調するが、その安全性と有効性を疑い、拒否しようとする者は、結果的に就労と移動の自由を失う羽目になるだろう。

 

 日本は天然の全体主義国家だからね。国民同士が自主的に相互に監視しあっているからね。

 

 

 

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2020年9月 2日

木のサングラス                                                                  

 

 そのサングラスは、黒い木でできていた。レンズの部分も木なので、かけてしまうと前が見えなくなる危険があった。しかし見たこともないほどオシャレなデザインだったので、試しにかけてみることにした。

 

 途端に僕は幽体離脱して、自分を外側から見れるようになった。「すごい仕掛だ」と僕は抜け殻になった自分自身に向かって言った。「これは絶対に買った方がいい‥‥」その言葉が自分に届いたかどうかは、わからなかった。そのうちに目が覚めた。

 

 

 

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アバター銭湯                                                                  

 

 僕はむしろ沼に興味があって、周りをうろついていた。地上部分が沼、地下が銭湯となっているその施設は、違法とされていた。銭湯に入る際、客はアバターに着替えることになっていて、それなら全裸になっても恥ずかしくないと人気だったのだが、女のアバターで女湯に入る男性が続出し、結局アバター銭湯自体が違法となったのだ。

 

 それでもその銭湯は、1階部分に沼を偽装して、地下で営業をつづけた。女湯しかないが、客のほとんどは男性で、アニメの女のキャラクターのアバターで入湯する。次々と訪れるおじさんたちが、若い女の姿に変身して、服を脱ぎ、銭湯に入っていくのだ。

 

 

 

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2020年9月 1日

ゾウムシ                                                                  

 

 ゾウムシの顔をした男が、中世の甲冑を着て、ゾウムシの言葉で喋るのだが、あぁ、困ったことに、僕にはゾウムシの言葉がわかる‥‥

 

 

 

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8月の夢 振り返り                                                                  

 

大賞 「頬が先か 空が先か」

 

大賞ノミネート 「犬と人間たち」「桜吹雪」「アナウンス」「犬の気持ちのワルツ」

 

愛で賞 「後ろから」

 

哲学で賞 「キムタクと、彼の2人の息子」

 

フランスで賞 「母国語」

 

黙示録で賞 「健康」

 

 

 

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巻き寿司学校の卒業式                                                                  

 

 微動だにせず僕は、プラスチックの、細長い筒を持ったまま。

 

 巻き寿司をつくる試験に合格した生徒たちが、順に僕にキスをして、自作の巻き寿司を筒に入れていくのを、見守る。

 

 

 

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2020年8月31日

熱血指導                                                                  

 

 特に熱を入れて指導していた、実の弟が、暑さのあまり、倒れた。僕は、弟をおぶって、木陰まで連れて行く。

 

 あぁ、滑稽だ。ゴルフなどやったこともない僕が、ゴルフのコーチをしている。

 

 生徒たち(全員大人の男性だ)の、技術的・精神的な問題を指摘し、指導する。

 

 

 

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ソプラノ                                                                  

 

 私は女性だが、気がつくと男性の体に閉じ込められていた。そして私は、ゲイとして、ゲイの男性とつき合っている。みんな、同じだった。町にはもう女の姿はなかった。男同士のカップルが、手をつないだり、腕を組んだりして、堂々と歩いている。変化は、一瞬だった。

 

 私は、女と話したかった。女に会って、女の声を聞きたかった。それで女を真似て、できるだけ高い声を出した。掠れたソプラノで、君の名前を呼び、愛してる、会いたい、と言った。歌うように叫んだ。

 

 

 

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2020年8月30日

パン工房                                                                  

 

 感じのいいおばさんだ。僕もできるだけ感じ良く「ボンジュール」と挨拶した。 

 

 そこはパンを焼く工房のようだった。誰もいなかった。勝手に中に入るかたちになってしまった。さて。

 

 出ようとすると、外は土砂降りの雨だ。小さな子供たちを乗せたバンが入り口に停まり、引率の先生だろうか、年配の女性が2人降りて来た。子供たちに工房の見学をさせるらしい。

 

 

 

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フランス軍                                                                  

 

 本物の軍服なのか、コスプレなのかはわからないが、僕の目には本物に見えるそれを着た、男女のカップルが、日本語で会話をしている。日本語の勉強をしていて、練習で話しているのだろう。「日本語が上手ですね」と話しかけると、「あなたは日本人ですか?」と驚いた様子だった。

 

「日本語上達のためには、日本人との会話が欠かせないと考えます。もしも時間があれば、私たちと会話をして下さい」

 

 そんなわけで、カウンターにいた僕らは、店の奥の、子供の遊具が置いてある場所に移り、話を始めたのだ。

 

 

 ☆

 

 

「私は、タイムスリップして、若いころの父親に会いに行きます。若いとき父が何を考えていたのか、知ることができます。それはいい考えですか?」

 

 コインを入れて遊具を動かそうとしていたときに、軍服を着た彼がいきなりそんな話を始めるので、サイドイッチを落としそうになってしまった。

 

 

 

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錠剤                                                                  

 

 医者の診察を受けようとしている僕のジーンズの膝に、白い米粒のようなものが貼り付いている。手に取ってみるとそれは錠剤で、僕は「おとしものです」と言い医者に渡した。「ここは病院だから」と医者は答えた。「調べれば誰の薬なのかすぐにわかるでしょう」

 

 

 

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夜の黒い鏡                                                                  

 

 夜の黒い窓に、月が映っていて、僕は話しかけられたような気もしたので、振り返ってみたのだが、どこにも月は出てなかった。

 

 それで僕は思わず、鏡に向かって、ひとりごとを言ってしまいそうになったのだ。

 

 

 

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2020年8月29日

世界は世界中にあるから                                                                  

 

 世界は世界中にあるから、と君は言った。

 

 世界は世界中にあるから‥‥? と僕は問いかけた。

 

 だから?

 

 世界は世界中にあるのよ。

 

 

 

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キムタクと、彼の2人の息子                                                                  

 

 キムタクと、彼の2人の息子は言った。 

 

 

 あまりにおおきなものの中に僕はいるので、と彼は言った。

 

 何かの中にいるという感じがしないんだよね。

 

 

 あまりにおおきなものの中に僕はいるので、と彼は言った。

 

 これに外側があるような気がしないんだよね。

 

 

 

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プリン                                                                  

 

 3人がいて、同じプリンを注文した。「こういう場合」と僕は言った。「韓国ではいちばん年上の者が奢らなきゃならないそうだ」

 

 3人は同い年だったので、順に誕生日を言っていった。

 

 

 

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2020年8月28日

灯火管制                                                                  

 

 高級ホテルのスイートが用意されていて、スーツを着た男たちがやって来た。僕に、偽証を頼みたいという話だ。

 

 とある会社の社員証、社員寮の鍵、支給されたガラケー、などを持っていて、それらはすべて僕のものだという。

 

「我々に貸しをつくっておいて損はないぞ」

 

 夜景を眺めようとして部屋の明かりを消すと、彼らもどこかへ消えた。だが夜景などなかったのだ、最初から。戦時下のように町の明かりは消されていた。

 

 

 

 翌日、エントランスホールの中2階で本を読んでいると、折りたたみ傘を持ったフロント係がやって来た。「お客様の傘ではありませんか?」

 

 

 

 そうだった。僕はその傘を持って、連れの男と一緒に、あの屋敷の前にいた。重い木の扉が開き、待っていた2人の刑事が、僕たちに何か質問をした。

 

 一緒にいた男は別室に連れていかれた。僕は初老の刑事と部屋のテレビを見て寛いでいた。チャンネル操作の仕方がわからないと、刑事はマニュアルを探しにいった。

 

 僕たちに関する資料が、わざと机の上に投げ出されていた。どうぞ読んで下さい、と言わんばかりに。

 

 

 

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難解ではない                                                                  

 

 僕は「難解」ではない、と「難解」のところだけフランス語で言う。僕は「難解」ではない。僕は「難解」を知っている。僕は「難解」ではない。

 

 それを聞いて君は、「難解」を画像検索する。念のためだ。出て来た画像を2人で見る。もちろんそこに僕は写っていない。「難解」と僕は似ても似つかない。

 

 が、「難解」は少しだけ黒い子犬と似ている。そして僕はほんの少しだけ子犬に似ている。そのことを君は、一言も喋らずに僕に伝える。

 

 

 

 僕は君の手に手を重ねる。君のことはよく知っているよ、と言う。私は「難解」ではないわ、君は言う。

 

 けど僕は君を知っている。「容易」でもないわ、君は言う。

 

 

 

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2020年8月27日

犬と人間たち                                                                  

 

 知能の高い犬が頭の悪い人間を奴隷にしていて、頭のいい人間が知能の低い犬を奴隷にしている世界で、そこそこの知能はあるのに犬を使っていない僕のような人間は、珍しかった。

 

 犬を飼ってない、と言うと、その知能の高い犬は驚いたようだ。私が飼ってあげましょうか、という犬もいたが、断った。犬たちが人間に給仕させているそのカフェで、僕の注文を訊いてくれる人間はいなかったし、犬にコーヒーをいれさせるわけにもいかない。僕はただ1人で腰掛け、周囲の犬と人間たちを眺めていた。

 

 

 

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帰り道                                                                  

 

 カフェの前にいた黒い子犬がどうしても僕の道案内をしたがるので、やらせてみることにしたのだ。

 

 子猫のように首をつかんで、高い位置に抱き上げ、前がよく見えるようにすると、子犬は僕にその先の信号を渡るように言った。

 

 ファッション・ショーを見た帰り道、パリの慣れない界隈で、早くも道に迷いかけている自分に僕は気づいたのである。

 

 

 

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ビリー・ジョエルの「ディス・ナイト」                                                                  

 

 1つの刑務所から、もう1つ別の刑務所に移動する途中には、「人生」がいて、でも「人生」はやっぱり、僕に刑務所の話をしてくるのだ。

 

「私は大罪を犯したので、常に自分で自分を罰している‥‥」

 

 けれど僕もあまりに長く服役しているので、刑務所以外の世界を思い出せないし、移動の途中で見える景色を見ても、「人生」が何をしでかしたのか、まるで見当がつかないのだ。

 

 

 

 

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隠遁生活                                                                  

 

 僕たちは引っ越しの話をしていた、その部屋から一生外に出ないとして、引きこもって暮らすとして、どこに住むか。新鮮な食材をデリバリーしてもらうのには、町の中心部がいいだろうか、田舎がいいのだろうか。‥‥。‥‥。友達が遊びに来やすいように、やはり町中の方がいいのだろう。

 

 友人たちには、僕たちが、どうして閉じこもることにしたのか、説明をする、そういう夢を見た、これは夢を正夢にするゲームなんだ、と言って、彼らが納得するまで、何日、あるいは何年、かかるだろう。

 

 

 

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2020年8月26日

春のカレンダー                                                                  

 

 君は部屋の向こう側で長電話をしている。何もかもが木でできた家で、君は春の暦を見ながらお金の話をしていた。その間僕は果物の種をスプーンで選り分けている。種は木の床に捨てたが、見つかったら酷く怒られるだろう。‥‥。

 

 きっとカレンダーをめくるようにして通帳をめくるのだ。起きたときにはもう夢と現実が完全に混じり合っていて、銀行から電話がかかってくることも僕は知っていた。

 

 

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2020年8月25日

義足                                                                  

 

 その女は僕の前で服を脱いだ。裸になって、ベッドに横たわった。そして「これも脱がなきゃ」と言って、義足の左足を外した。

 

「これもつくりものなの」。乳房を外した。外れるものなのか。僕はそれを見て感想を述べようとした。

 

 

 

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サービス券                                                                  

 

 そのレストランは満席で、僕は入り口のところで待つことになったのだが、サービス券を持っていたことに気づいた。芝生の庭を横切って、隣のレストランまで行き、その券を見せる。「皿は持ってます」

 

 僕が持って来たお皿に、レストランの主人は、海鮮チャーハンを大盛りに盛ってくれた。皿を持って隣に戻ると、ちょうど席は空いている。僕は窓際の席でチャーハンを食べながら、料理を待つ客たちの会話を聞いていた。

 

 

 

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4時開店                                                                 

 

 僕と連れの男は、ビルの上の方の階で、いつかの夢を正夢にする遊びをしていたのだが、連れの男には何も知らせてなかったので、彼にしてみれば、ただ「景色を見た」というだけのことだったかも知れない。

 

 ホテルの部屋に戻り、今夜と、明日朝の分の食料を買いに行かなければならない、と僕は言った。それが彼には理解できなかったようだ。そんなにお腹が空いたのなら、ホテルのレストランで食べればいいじゃないか、と言う。

 

 奢ってくれるのかも。

 

 期待と共にもういちどエレベーターに乗り、最上階まで戻った。ディナーは4時からだったので、少し待つことになった。

 

 

 

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フォルテピアノ                                                                  

 

 指揮者がタクトを振って、曲が始まった。ピアノが2台。フォルテピアノと、現代のグランドピアノ。僕は君のグランドの隣の、フォルテピアノの前に座った。グランドより大きな音を出そうと、必死で鍵盤を叩いた。これはそういう競争ではないのだが、僕は真剣だった。

 

 

 

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ドクターマーチン、チャーチ 1年履いてみた                                                                  

 

ブーツだが冬は寒い(耐え切れないほどではないが)

 

消費税増税前に購入

 

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靴はこれ1足

 

実働320日

 

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なぜか右足の紐2回切れる

 

「チャーチ」、もともとは余った革をツギハギして子供用につくられたモデルとか

 

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新品当初

 

 

 

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2020年8月24日

後ろから                                                                  

 

 君に背中から名前を呼んでもらおうと思って、僕は湖に出かけて行き、1人でそれを眺めていた。

 

 途中で城に行き、眺めて待った。

 

 そしてまた湖まで引き返し、もういちど最初から眺めた。すると君はやって来て、僕に声をかけた。

 

 

 

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ダリの絵                                                                  

 

 昼頃起きると、床を見たことのない手足の長い昆虫が歩いていた。ダリの絵みたいな虫だ。僕は興奮してカメラを手に取った。動かないで、そのまま、と虫に声をかけて、ローアングルにカメラを構える僕を、双子の「頬」と「空」が、冷ややかな目で見ていた。

 

 

 

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2020年8月23日

逃走                                                                  

 

 ずっと後になって、爆発の、その瞬間を、偶然捉えた写真を見た。公園の、アンパンマンの後ろに、白い閃光が見える。撮影者は、どうなったのだろう。いや、考えるまでもなく、手遅れだ。

 

 僕たちは、走って逃げた。もう遅い、どうせ死ぬ、並走していた男はそう喚いて、生き残った花壇の花を、踏みつぶしていく。僕には、それが許せなかった。

 

 

 

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頬が先か、空が先か                                                                  

 

 僕は双子の妹たちに、秘密のあだ名をつけていた。1人には「頬」と。頬を触った後に、空を見上げる癖があったからだ。もう1人には「空」と。こちらには空を見た後で頬に触る癖があった。

 

 本人たちには内緒にしていた。言ってしまうと、意識して順番を変えてくるおそれがあったから。

 

 年の離れた2人の兄がいて、彼らが父親代わりだった。本当の父親はどうなったのか知らない。母親もいたはずだが、家の中にはいなかった。

 

 広い家には使ってない部屋がたくさんあって、その部屋には母親の荷物や服が置いてあった‥‥

 

 僕と妹たちは、成人した後も同じ部屋で寝ていた。それぞれ別の部屋を貰っていたのだが、寝るときになると同じ寝室に集まった。妹たちがダブルベッドを使い、僕はソファで寝る。床で寝ることもあった。ベッドよりもそこが気持ち良かった。

 

 その日は起きると昼過ぎで、完全に寝過ごしてしまった。妹たちもさっき起きたばかりのはずだが、デカい顔をしていた。兄たちも食堂に集まっていて、ひさびさに全員集合だった。

 

 兄たちと双子がつくった極太のうどんが、既に食卓には用意されていた。食べながら双子の1人は、大型バイクの免許を取る話をしている。どうせもう1人も後から同じことをするはずだが、最初にやるのは「頬」だろうか、「空」なのかどっちだろう。

 

 後でシーツを干すときに訊いてみよう。庭の物干しのところに妹の1人を誘って、さりげなく同じ質問をする。頬を触るのが先か、空を見るのが先か、それで判断するのだ。長年一緒に暮らしているけれど、僕は未だに「頬」と「空」の見分けがつかない。‥‥それもまた妹たちには秘密だった。

 

 

 

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ソーリー                                                                  

 

 あとになって思ったが、アイム・ソーリーを機械的に残念だと訳してしまったのかも知れない。

 

 誰かがネットで僕に成りすまして書評を書いているのを見つけた。

 

 そのサイトは人気があった。本人の名前でやればもっと人気が出るだろう。

 

 なぜ僕のふりをするのか理解できなくて、僕が本物の僕だと投稿した。

 

 そうするとたくさんの人から返信のコメントがついた。それはとても残念だというのである。

 

 僕のふりをしているサイトの管理人までがそう言った。

 

 ソーリーだと。

 

 

 

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2020年8月22日

叔母はユーミン                                                                  

 

 叔母はユーミンのような顔をして、「私はもうすぐ死ぬ」と言った。私に財産(株券だった)を遺してくれると言う。夢の中で私はまた女になって、この知らないオバサンの親戚になっていた。時は昭和四十年代。私にはこのオバサン以外に身寄りはないようだ‥‥。

 

 ‥‥

 

 腕に剛毛が生えてきた。毛はヤスリのようで、袖をボロボロにしてしまう。亡くなった叔母の呪いだろうか‥‥。抜くしかなかった。夢の中の私は、剃るという選択肢を思いつかなかった。

 

 

 

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1と1のゾロ目                                                                  

 

 私は小さな女の子になって、戦後の闇市のようなところをうろついていた。

 

 そこは動かない電車の車内だった。何人かの少年が、サイコロを使った賭博をしていた。「私もやりたい」。少年たちに言った。だめだと言われたが、リーダー格の1人が、サイコロを振る役を私に与えてくれた。

 

 私が出したのは、1と1のゾロ目だった。場は大騒ぎになった。リーダー格の少年は、私を「高い高い」して大喜びだ。

 

 しかし不思議なほど私は冷静だった。警察がやってくる。高い位置にいる私には見えた。私は少年たちと反対の方向に逃げた。

 

 

 

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2020年8月21日

総菜のコーナー                                                                  

 

 僕はスーパーの店内で寝ていた。床に寝転がっていた。総菜のコーナーに煮込みハンバーグがあった。それを買おうかどうしようかすごく悩んだ。そのうちに眠くなって寝てしまったのだと思う。

 

 脇には僕の買い物カゴが置いたまま。それはそのままで、僕は近くのコンビニに足を運んだ。煮込みハンバーグは既に売り切れていた。

 

 

 

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登山の誘い                                                                  

 

 土曜の午後は山登りに行こう。隣に座った男が僕を誘った。

 

 大学の教室だった。僕はフランス語の教科書を開いていた。

 

 日曜の午後は一緒にフランス語の勉強をしよう。その男は言った。

 

 山登りとフランス語、どっちも楽しそうだ。

 

 30年後、僕は近所の山に1人で登った。

 

 僕はもうハタチの大学生ではない。フランス語の勉強も1人でやった。なんとか喋れるようになるまで。

 

 

 

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