2020年11月24日

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 ただ1人だけでする、ただ1回だけの戦いがあったとする。勝者は1人。1回だけの選挙。1人だけの立候補者。100%の投票率。100%の得票率。本当のことだ。


 ひとりぼっちの最高権力者。ひとくちだけ飲む酒。

 

2010年11月19日の投稿)

 

 

 

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変な人                                                                  

 

 寒いねと僕は微笑んだ。

 

 

 

「なに笑ってるの? 寒いのが嬉しいの?」

 

「もちろんだよ。僕は今幸せなんだ」

 

「じゃあ私が不幸せにしてあげようか?」

 

 

 

 私が暖かくしてあげようか? そう言って君は僕に抱きついてきた。

 

 

 

「げげ、助けてくれ、暖かいよ‥‥」

 

「変な人」

 

 

 

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独房                                                                  

 

 畳の床。調度品は姿見しかない。20畳ほどの独房のような部屋に僕はいて、鏡を覗き込み、前髪を切っていた。

 

 内線の向こう側にいる誰かに、今日はこれから本屋に行く、帰りは数時間後になる、と伝えた。

 

 

 

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2020年11月23日

錆びた鈴の音                                                                  

 

 ジリッ、ジリンと、夢の中で、錆びた鈴の音が、長い間隔を置いて2回鳴った。

 

 

 

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2020年11月21日

学校の教室                                                                  

 

 そこは、

 

 学校の教室だった。中学生の僕は、クラスのみんなの前で、何か発表をして、高く評価された。机の上には蜘蛛が巣を張っていて、薄い断片だけになった昨夜の夢が、いくつか捕えられていた。僕がその断片を巣から引きはがして、丸めて遠くに投げると、

 

 そこは、

 

 学校の教室だった。薄い断片だけになった昨夜の夢が、高く評価されて、拍手が起こった。

 

 

 

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2020年11月20日

細長く歪んだ人たち                                                                  

 

 駅で人を待っていると、駅前の交差点を一斉に歩いて渡って来るのは、モディリアーニの絵のように、細長く歪んだ人たちだ。

 

Womanwithblueeyesamedeomodigliani

 

 僕は靴下を履いていたが、靴は履いていなかった。交差点脇に設置されたスピーカーからは、ベースギターの音だけが聞こえてくる。いったい何の曲なんだろう、と思った。

 

 

 

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2020年11月19日

スローモーション映像                                                                  

 

 自走するベッドに寝かされた患者が、手術室まで運ばれて行く。ドクターも、ナースもいない病院の廊下を、とてもゆっくりと、静かに。ミュートになった5秒間のスローモーション映像を見せられているみたいだ。

 

 

 

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2020年11月18日

英語を話す男                                                                  

 

 大きな窓の外に、黄色く紅葉した葉が見えた。その葉を透かしてみると、空も山も地も黄色。ホテルの会議室のようなところで、僕たちは一緒に昼食を食べた。食事が終ると、解散だった。僕は英語を話す大男と、一緒の車で帰る予定だった。

 

 速報で、道路情報が配信されてきた。下りの高速が、事故で渋滞しているらしい。英語を話す大男のために、僕はそのニュースのフランス語を翻訳した。

 

 

 

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完全なる飼育                                                                  

 

 僕は閉じ込められていた。マンションの一室に。でも僕は気づいたのだが、玄関のドアは開く。なのになぜ僕は、逃げ出そうとしないのだろう。

 

 いつもの時間に、いつもの女の人がやって来る。すごい美人だ。彼女は部屋の掃除をしてくれる。彼女は僕に、フランス語を教えてくれと頼む。僕たちは一緒に、Rの発音を練習する。

 

 

 

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2020年11月16日

敵                                                                  

 

 敵の数は多いが、彼らは今にも全員降伏するだろう。

 

 

 

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2020年11月13日

噴水                                                                  

 

 水道管が破裂したのか、道路で水が噴き出していた。陽の光のキラキラ感が更に増した。晴れて、暑い日だった。水遊びを始めた大人たち。虹が見えるかと思って、僕は空を見上げる角度を変えた。

 

 

 

 

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天国のような光                                                                  

 

 壁の色が白いことは、闇の中でも気配でわかった。僕は自分が何をしかけていたのか、どこへ向かおうとしていたのか思い出せなかった。明かりが点けば、それを思い出せそうな気がするのだが、天国のような白い光の中では、かえってその意志が曖昧になるような気もした。

 

 

 

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居心地                                                                  

 

 そこには男子トイレがなく、男もみんな女子トイレを使っていた。まるで銭湯のように広いトイレだ。病院のように清潔なトイレだったが、女子トイレは女子トイレであり、男性が長居をする場所ではない。それに何かが臭った。自分の体や、服や、髪が臭っているのではないかと思ったが、そうではない。そうではないにしても、居心地はどんどん悪くなっていった。

 

 

 

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2020年11月12日

2階建て                                                                  

 

 コンビニが2階建てなのは珍しいと思った。階段を上っていくと2階はパン屋のようだった。僕はそこでバゲットを買って1階に下りた。フランスで売っているような本物のバゲットだ。

 

 

 

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2020年11月11日

露天風呂                                                                  

 

 冬の山に着いた。大きな茶色い犬を連れて登山するのだ。一面の銀世界。

 

 僕はその名前のない犬と一緒に露天風呂に浸かった。

 

 

 

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特急列車                                                                  

 

 錆びて、ボロボロの車両が、何台も連結されている特急列車だった。平行して走る電車の窓から、僕はその特急を見ていた。

 

 急いで、特別に急いで、どこへ向かうのだろう、彼らは。

 

 

 

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援護射撃                                                                  

 

 夢の中の僕は、白髪の長髪で、黒っぽいスーツに、似たような色の帽子をかぶって、たった1人で突撃する味方を援護するために、ライフルを構え、1500m先の標的を狙って撃っている。

 

 

 

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2020年11月 9日

メルトダウン                                                                  

 

 そうすると、その大人の女の人は溶けてしまった。代わりに姿を現したのは小さな女の子だった。

 

「別に心配はいらないのよ‥‥」という返事だった。

 

 あなたが大きくなったら、私が見えるようになるでしょう。

 

 僕が誰を探しているのか知っていてそう言うのか。

 

 

 

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玉手箱                                                                  

 

 君は僕の手に小さな白い箱を握らせ、好きなときに開けてみるように言った。開けたくなければ開けなくてもいい、その代わりずっと大事に持っておくようにと言った。僕は大事に持っていたいので、開けないことに決めた。

 

 その箱を今も持っている。

 

 

 

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2020年11月 8日

レストラン街                                                                  

 

 黒いスーツを着たモデルのような男が階段を上がってくる。僕は彼を待っていた。ランチの約束だった。

 

 7階のレストランには行列ができている。

 

 僕はグレーの靴下を履いている。その上には黒い靴を履いている。細身の黒いズボン。僕は鏡を見て、鏡の中の自分の着こなしをチェックしている。

 

 鏡の中の僕は、デパートの8階にいる。8階もレストラン街だ。誰も客はいなかった。‥‥暇そうな店員が僕を見て何か言った。

 

 

 

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2020年11月 7日

蜘蛛の巨大な巣                                                                  

 

 道を歩いていると蜘蛛の巨大な巣があることに気づいた。蜘蛛は普通の蜘蛛なのだが、巣はとてつもなく大きくて、道一杯に広がっている。ベタベタする糸が服についたら嫌だと思い、僕は反対側の歩道に移った。

 

 そして観察していると、後から歩いてきたおばさんが気づかずに巣に突っ込んだ‥‥「何なのこれ!?」とても驚いた様子だ。

 

 

 

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2020年11月 6日

出会い                                                                  

 

 朝起きると僕の部屋には2人の女がいる。かなり親しい友達同士なのか、あるいは親子なのかも知れない。2人で楽しそうに話しながら料理をしている。食卓には僕の分の朝食も用意されていたので食べた。

 

 僕の頭には寝癖がついて、リーゼントのようになっている。出かける前にシャワーで直そうと思うが、その必要はないと彼女たちは言う。外で若い女のコとの素敵な出会いがあるかも知れないから、と僕は抗議する。今日こそ出会いがあると思う。が、聞き入れてもらえない。

 

 

 

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2020年11月 5日

伸びた髪                                                                  

 

 黒くて長い髪の毛を運搬する自動車が、列車のように伸びて僕の心の裏側を通過して行った。

 

 

 

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2020年11月 4日

サバイバル                                                                  

 

 1億円が入ったバッグを砂漠の真ん中で探す。見つけたときには水筒の水は尽きていた。生きて帰還できるかわからない。仕方なく僕は自分の尿を飲むことにした。渇きを癒し、それで何とか生き延びることができた。

 

 連れの男にはそれができなかった。プライドが邪魔したのだろう。

 

 命より大切なものって何だ?

 

 それにシャワーを浴びているときに足が濡れたからといって何が悪い? だが僕たちのボスは足が濡れたという理由でひどく怒っていて、それで1億円が入ったバッグを爆破した。僕たちが文字通り命懸けで持ち帰ったバッグを。

 

 

 

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ヴィトン買ってみた                                                                  

 

キーポル45

旅行だけでなく普段使いもできるサイズ、あえて45を選びました。

メインで使ってきたキャリーケースよりたくさん入る。1週間くらいの旅ならこれだけでも充分(超絶旅慣れてる人向け)。

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買ったばかり、まだ真っ白。記念に写真を撮ってみました。

 

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2020年11月 3日

影響                                                                  

 

 漢字で「影響」と書かれた看板が片付けられていく。そのあとに設置されたのは「スポール」と「コンプリケ」だ。僕が口に出して発音すると、フランス語がずいぶん上手くなったねと君は褒めてくれる。仏語で夢を見るなんて大したものよ。

 

 僕たちは食堂にいた。後悔マジ先に立たず、僕はインスタントラーメンに誤ってぬるま湯を注いでしまう。

 

 

 

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青空                                                                  

 

 僕は船に乗るところだ。待合室で、僕の前のベンチには、家族連れが座って、お喋りをしている。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして子供たち。旅行用の、青いボストンバッグを持っている。青空の青だ。空には青い星が出ている。青い雲が浮かんでいる。そして、誰もキャリーケースを持っていない。それが不思議だった。

 

 

 

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2020年11月 2日

卒業アルバム                                                                  

 

 警官が僕に質問するので、小学校の卒業アルバムを見せて説明した。僕はここに写っている。これが僕だ。

 

 

 

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穴埋め                                                                  

 

 ホームセンターの自動扉の前で僕は天皇が買い物を終えるのを待っていた。背後を振り返ると駐車場だったはずの空間が駅になっていた。駅のホームには深い穴が開いていて、制服を着た駅員は駅の貧乏臭さをひどく気にしていた。危険でもある。修理できないものなのか。明日には天皇が来るというのに。

 

 

 

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2020年10月30日

ロボコップ                                                                  

 

 僕は命令に従うロボットだった。意志はあるが感情はなかった。背中にヘリコプターを背負って飛んでいた。悪いやつらがいるという南の島へ向かう。

 

 悪人たちはトランプをして遊んでいる。引き裂いて殺すつもりで僕は1人の男を捕まえた。彼の妻と娘が命乞いをする。僕は彼女たちに何か命令をしてみようと思った。

 

 

 

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2020年10月29日

サンドイッチ                                                                  

 

 美術の時間に、雪だるまの彫刻を製作した僕は、先生から批判を受けた。雪だるまには見えない、というのだ。それで僕は、顔の部分にサンドイッチ用のパンでつくった口を追加して、先生に見せた。

 

 

 

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2020年10月28日

踊る虹彩                                                                  

 

 黄色人種には珍しい、踊るような虹彩の瞳。ありえない、と思ったところで気づいた。その目は見えないのだ。正面から見つめ合っているのに、決して目が合うということがない。

 

 頭は人間、胴体はチクワという無害なモンスターが、僕を振り返って笑った。ずいぶんと、可愛い顔をしているのだ。

 

 

 

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2020年10月27日

記憶を鏡に映したら                                                                  

 

 記憶を鏡に映したら、左右が反転するのだろうか。涙が笑いになり、一瞬が永遠になるのだろうか。‥‥そうだった。その鏡の中で僕は小さな子供になって、誰かを探していた。さっきまで一緒だったのに、見えなくなってしまったのだ。手を繋いでくれている若い女性は、母親か年の離れた姉だろうか。その女性に、人が1人見えなくなったことを話した。明るい反射光を浴びて、溶けてしまったようなのだ。

 

 

 

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2020年10月26日

ショッピング                                                                  

 

 その店の中はバスの車内のようだ。座席は取り払われていて、たくさんの人がいる。服や雑貨を売っている店だ。僕は君と、君の友達と一緒に、3人でショッピングに来ていた。君は違う商品を見に隣の店に行ってしまったので、僕は初対面だったその友達と会話をしていた。

 

「何を買ったの?」と訊く。すると彼女は店の中で包みを開き、中に入っているものを見せてくれた。

 

 それから僕たちは、君が待っている隣のバスに乗り込む。出発だ。「何も買わなかったのね」と君は言った。

 

 

 

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2020年10月25日

雑巾のように大きなガム                                                                  

 

 僕が木製の椅子を抱えていちばん最後に到着すると、エレベーターホールには既に50人以上の人がいて、全員が下に下りようとしていた。

 

 髪の長い女の人が話しかけてきたけど、僕は雑巾のように大きなガムを噛んでいたので、うまく返事ができなかった。エレベーターホールで椅子を抱えていたのは、その女の人と僕だけだった。

 

 エレベーターが到着して、50人全員が乗った。女の人も、彼女の同僚たちと乗り込んだ。僕は椅子を抱えていたので、邪魔になるかと遠慮して、1人で次を待つことにした。

 

 実際、その方がよかった。すぐに次は来たのだ。

 

 

 

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2020年10月23日

小説の原稿                                                                  

 

「スティーブン・キングの『睡眠』という小説を読んだことがありますか?」と訊くこと。僕に課せられた義務は、ただそれだけでした。その質問さえしてしまえば、人生あとは好きに何をして過ごしてもいいのです。僕は鞄にその小説を入れ、常に持ち歩いていました。

 

 年上の友人が僕に食事を奢ってくれました。坂道の途中にある、豪華なレストランでした。メニューを見ながら笑顔で、「好きなものを注文していいよ」と言う彼に、僕はついにあの質問をしました。「『睡眠』という小説を読んだことがありますか?」‥‥僕は鞄からボロボロになった小説の原稿を取り出し、彼に見せたのです。

 

 

 

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眠り方                                                                  

 

 緑色のパジャマを着た女のコは今日もやってきて、熟睡中の僕を起こした。そして言った。「眠りたいんだけど?」

 

「一緒に?」彼女はそれには答えなかった。

 

「私は眠り方を知らない。眠ったことがない」

 

 僕は眠ったことはある、と言った。でもそのときのことはもう忘れてしまった。改めて考えてみる。僕が眠ったのは何時間前だろう。いつから眠っていたのだろう、と。もしかしたら何日、何年も前から。

 

 

 

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ナルシスト                                                                  

 

 向こう岸の建物が湖に映っている。その反映の中では、少し背が高くなってスリムになっている。建物は湖に写った自分を見て、それが本当の姿だと思い込んでいるのだろう。そのうぬぼれが、建物に傲慢な雰囲気を与えている。空には、笑う緑色の月が出ていた。

 

 

 

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2020年10月22日

光の価値                                                                  

 

 僕は1人だ。白い光に包まれている。デパートの中にいるのだ。グッチやヴィトン、アルマーニ、高級ブランドのブティックに入って、服や鞄を見ている。商品は光の繭の中にあって、値段はわからない。が、どれも非常に高価であることは確実だ。

 

 僕は自分を包んでいる光と、ブランドものの商品を包んでいる光を見比べてみる。そして、買えると判断をして、財布を出す。

 

 

 

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緑色のパジャマ                                                                  

 

 真夜中に、緑色のパジャマを着た女のコがやってきて、僕を起こした。そして言った。私は眠りたい。僕も眠りたい。

 

 何を噂している? お屋敷の、下宿人たち。僕の胸に、1本生えてきた白い毛が、50cmの長さまで伸びた。

 

 

 

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2020年10月19日

布を噛む力                                                                                                                                    

 

 デパートのそのフロアには、お洒落なブティックのように、さまざまなクリニックが出店していた。眼科、耳鼻科、咽頭科、胃腸科、歯科、肛門科、産婦人科、なんでもある。ふらっと歯科に入ってみた。1枚の布切れを渡された。布を噛む力の測定をしてくれると言う。無料で。

 

 

 

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亀                                                                  

 

 とぐろを巻いたイヤホンのコードの中心に、黒っぽい甲羅の亀がいて、じっと僕を見ているのかぼおっとしているのかわからないが、最初それを僕は、コキブリだと勘違いしてしまったのだ。

 

 

 

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2020年10月18日

自動レジ                                                                  

 

 よく行く近所のスーパーのレジが、全部自動レジになっている夢を見ました。一夜にして突然そうなってしまったのです。お年寄りが混乱して、会計がなかなか進みませんでした。

 

(Quoraに投稿したものと同じ)

 

 

 

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影                                                                  

 

 月に降り立つと、僕のまっ黒い影は、僕から離れて、見えないところまで行ってしまいました。時間になって、呼んでも帰って来ないので、僕は彼を置き去りにして、宇宙船に戻りました。

 

Quoraに投稿したものと同じ)

 

 

 

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2020年10月16日

小銭                                                                  

 

 テレビを買いたいという男が来た。価格は19万円。すべて小銭で払うと言い、男は床に落ちた小銭を拾い集めている。

 

 

 

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右の本格派                                                                  

 

 真夜中、寝ていたところを、突然、起こされた。隣のベッドで寝ていた別の投手も、起きてしまったようだ。9月の僕の成績が抜群に良かった。勝率、防御率、奪三振、チームトップだった。ボーナスとして100万円が支払われる。受け取ってサインしてくれというのだ。

 

 目標としている投手は誰かと訊かれて、僕は槙原と斉藤の名前を挙げた。桑田じゃないのか? 桑田じゃありません。僕が目指しているのは、斉藤です。右の本格派です。どっちにしろ、こんな夜中にする話じゃないですよ。

 

 

 

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ドナドナ                                                                  

 

 いつも何かに逆らって生きてきた。娼婦がアラブの富豪に買われていった。ドナドナドーナードーナー♩と僕は歌った。プリティ・ウーマンの歌でも良かったのに。

 

 

 

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2020年10月15日

レタスと海岸                                                                  

 

「海岸とレタス」をテーマにして写真を撮っていた。なぜか僕には、美しい海岸にはレタスが似合う、という強烈な芸術的思い込みがあった‥‥。夕刻の海岸にレタスを置いて、カメラを構えて、様々な構図を試していると、レタスが夕日のオレンジ色に染まった。

 

 

 

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2台のピアノのソナタ                                                                 

 

 娘と一緒に、舞台でピアノを弾いた。動画サイトで配信する。娘はまだ11歳だが、プロとして活動している。今回の曲は「悲愴ソナタ」で、2台のピアノで弾く曲ではないのだが、娘がアレンジした。と言っても、僕はジャズっぽく、即興で和音を叩くだけ(「お父さんは好きなように弾いて」)。その横で、娘の独創的なベートーベンが鳴り響く。娘は公の場では、いつもパジャマ姿で、演奏するときもスリッパを履いていた。

 

 

 

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スポーツ用品売り場                                                                  

 

 動く歩道に乗って、デパートの中を見ていた。スポーツ用品売り場だ。野球、バレー、バスケ、テニス。スポーツ用品売り場が好きだ。

 

 

 

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2020年10月14日

電子署名 新型コロナを指定感染症からはずして! 新しい生活様式は廃止を!                                                                  

 

「新しい生活様式の前に、合理性のある生活様式を」

 

発起人 みき はな さん

電子署名
新型コロナを指定感染症からはずして! 新しい生活様式は廃止を!
http://chng.it/cWvq4JtVt2

 

 

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2020年10月13日

シロクマ                                                                  

 

 窓辺にもたれ、外を見ていた。振り返ると、白衣を着た誰かが、部屋の掃除を始めた。部屋中に白い埃が舞う。と思ったら違った。雪だった。部屋の中にまで雪が降っているのだ。

 

 屋上のプールには温水が溜まっていて、その中で雪は溶けていく。空から降ってきたものが、全部そこで溶けていく。僕はプールから身を背け、寒い下の通りを見ていた。歩く人々は、みんな白い熊の着ぐるみを着ていた。

 

 

 

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野宿する                                                                  

 

 僕は車を乗り捨てて、用意しておいたオフロード・バイクに跨がった。降りしきる雪の中を走った。安全に町から外に出るルートがあると、確かな情報を掴んだからだが、一日中走り回っても、それは見つからなかった。

 

 逃げ出してきたのだし、元いたところには帰れない。ゴミ捨て場で野宿することにした。粗大ゴミを燃やして、暖をとった。

 

 古いブラウン管のテレビが燃えた。

 

 寝ているときに、電話が鳴った。情報提供者からで、この先どうするか話していると、そこに強引に割り込んでくる電話があった。出てみると、相手は善良な市民だと名乗った。子供を持つ母親だと言った。

 

 

 

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2020年10月12日

憲兵                                                                  

 

 僕は列車に乗っていた。駅に停車する度に乗客に目を光らせた。怪しい者がいないかどうか。例えばあの背の高い、もじゃもじゃ頭の男だ。僕は男を呼び止めて、尋問した。髪の毛が気に入らなかったので、カミソリで剃り落した。その際に肌を切ってしまい、男の白いTシャツが血だらけになった。

 

 殺したいわけじゃない。ホームには男の家族が迎えに来ていた。男は音楽五輪に出場するのだと僕に言った。なるほど彼はミュージシャンなのか。しかしどんなに音楽の才能があったところで、国境を越えられるわけがないだろう。

 

 

 

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到着する                                                                  

 

 ビブラートするツーン、という耳鳴りが、あぁぁあぁ、という声になった。声楽家が練習するときの、ソプラノの「あぁぁあぁ」。到着だ。

 

 

 

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宇宙服                                                                  

 

 君は宇宙服を着ている。宇宙船の窓から地球を眺めている。大きな丸いヘルメット。その肩越しに覗き込む僕は、宇宙服を着ていない。君は僕を見て、何か言う。

 

 

 

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2020年10月11日

ゴール                                                                  

 

 坂道を上ると、木が植えてある庭だった。僕は細くしなやかな枝に触れ、緑の葉の匂いを嗅いだ。

 

 ゴール裏で、サッカーの試合を見ていた。延長戦で、劇的なゴールが決まった。試合が終ってから、ようやく僕は君に会いに行った。

 

 

 

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狙撃手                                                                  

 

 狙撃の依頼を受けた。僕はスコープの中にターゲットを捉え、銃を固定した。引き金は引かずに、その場から去ると、入れ替わりに依頼者が来て、銃を撃った。

 

 

 

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2020年10月10日

尿検査                                                                  

 

 名前と住所、電話番号などを記入した紙を持って、列に並ぶと、紙カップに入った熱いスープを渡された。スープを飲み干してから、そのカップで尿を採取するのだ。

 

 

 

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KとJとジョーカーとQ                                                                  

 

 あの戦争が終ったあと、僕は眠りつづけた。しばらく目を覚まさなかったので、みんなが心配した。僕はその眠りの中で、遠い足音を聞いていたのだ。誰かが、ずっと同じ場所で、足踏みをしているよう。それが夢だと気づくと、足音は写真をめくる音に変わった。プリントされた写真か、あるいはトランプのカードか。君が僕の耳元で、写真をめくって見ている。1枚1枚、丁寧に。すべての写真に、僕が写っている。僕はキングで、僕はジャックで、僕はジョーカーだった。君はクイーンだ。

 

 

 

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2020年10月 9日

忘れられたやり方                                                                  

 

 僕がいちばん最初に思いつくやり方は、いちばん最近に忘れたやり方だった。いつもそれで上手くいくのだ。いつか試してみようと思っていたやり方は、試す前に忘れてしまう。試していればどうなっただろうと思うのだ。もっと上手くいったかも知れないし、失敗したかも知れないが。

 

 

 

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2020年10月 8日

割引券                                                                  

 

 駅で切符を買った。1600円ほど現金で支払おうとしたところで、割引券を持っていることを思い出した。500円の割引券を2枚出して、使えるかと訊ねた。「いちばん高い金額を払うものが、いちばん遠くまで行くんだがね」。そう駅員は答えた。

 

 

 

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6人の女                                                                  

 

 バスタオルが1枚だけあったが、そのタオルで体を隠そうとする者はいなかった。だから僕も何も隠さない。僕は女たちと一緒に風呂に入っていた。

 

 女性が何人いるんだろう、と思って数を数えた。「1」「2」「3」「4」「5」。わからない。5まで数えたところで、5以上の数を数えられなくなっていることに気づいた。僕は数えられなくなった最後の1人に、数字ではなく、名前を与えた。名前で呼ばれた女は、急に何かを思い出したように、タオルで僕の目から体を隠した。

 

 

 

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2020年10月 7日

朝の果物                                                                  

 

 赤い朝のような果物は、そのガラス容器の中で夜だった。さんらんぼのような形をしていたが、リンゴだということはわかっていた。リンゴだということもわかっていた。

 

 

 

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上空                                                                  

 

 そして

 

 玄関のドアを開けて外に出てみると、空の上だった。

 

 景色はいつもと変わらなかった。石の階段。湖へ下りていく坂道。足の下の地面は固い。

 

 でもそこは、上空8000mだった。

 

 体が軽すぎて、地面を踏みしめることができなかった。

 

 

 

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