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2005年12月 2日

「禁煙ファシズム」という言葉があるらしい

 おとなのひとって どうして お酒をのむのかな?
 お酒って そんなに おいしいのかな?


 子供の僕が抱いていた疑問はこの歳になっても解決しないまま。たぶんそれは「酔い」という要素で、飲んで忘れたい現実の痛みとか? だが僕は酒を飲んで酔ったことがない。眠りが死を連想させる「恐怖」なら、酔いとは感覚の鈍化であり、それは老いることに対して僕が抱く「嫌悪」と似ている。
 喜怒哀楽、すべての感情を、与えられ、あるいは自らの選択した、そのままの形で味わいたい。特例で怒哀を減じてくれなくとも良いし、喜や楽の部分を嘘っぽく水(アルコール)増したくはない。というか体質的にアルコールにはやたらと強い僕だ。
 いくら飲んでも酔わない。しかも酒は僕に不味いのだ。いかにも僕にはお似合いの悲劇だが、無論笑ってくれても構わない。嫌いなものを我慢していくら飲んでも、酔わないから別に楽しくも何ともなく、あまりにも不味いので反対に怒りと哀しみは増すばかりという‥‥


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 WHO(世界保健機関)は喫煙者を職員として採用しないことを決めた。タバコについては、吸う人から「喫煙の健康に及ぼす被害は捏ち上げである」という、「禁煙」を「ファシズム」に喩えて揶揄る声が聞こえてくるほどに、嫌煙の流れは定着しつつある。世の中には、真理を求める激しさのあまり、目的を達成することがかえってその拠って立つ世界を根底から覆してしまう結果となる、そういった思想カテゴリーが存在するものだが、アルコールに関して「禁酒ファシズム」の発動はまだまだ先のようだ。最近では新入生がコンパで一気飲みを強要されることもないのだろうか?
 若い女性に言わせると、タバコは吸わないが酒はほどほどに飲める男が理想とかで、しかしタバコが格好良い大人のライフスタイルを演出する小道具だった時代もあったのだが。酒の席で、「飲めないから」とそれを断る人はいても、底なしに飲めるくせに不味いという理由で「飲まない」人は少ない。聞いたことがない。


 風呂上がりのビールってそんなに美味しいんですか?
 昔のワインってそんなに価値のあるものなんですか? 


 とにかく、飲酒に代表される「嗜好」について考えをめぐらすたびに、自分の「そのままの形で味わいたい」と思っている感情のすべてが、何を憎んで何を愛するのか、全幅の信頼をおいているこの感覚のすべてが、選択と行動のすべてが、つまり人生が、ことごとく世間一般からずれていることを、僕は改めて思い知らされるのだ。


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  「そういうときに、大人はお酒を飲むのよ」


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『ダンス・ダンス・ダンス』下巻140ページ、ユキの台詞。


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 illustration by me

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