虚数の話
歩く時に自然につま先がやや内側を向く人は運動神経が良いのだと言いますが、嘘です。過激な反例として僕がいます。大袈裟に言えば僕には運動神経それ自体がありません。
例えば僕は泳げません。まったくのカナヅチです。風呂以外の水に入ったことは数えるほどしかありません。
よだれ垂らすぐらい怖いのです、水が。
高校卒業まで水泳の授業も全てサボってきました。思えばよくそれで卒業できたもの。

好きなモノには病的に熱中するが、嫌いなモノにはまるで関心を示さない、そんな僕でした。嫌いな科目の授業では、寝てるか本を読んでいるかしてました。そのかわり好きな数学や物理では、テストで90点以下など取ったこともないという‥‥
あれ、意外ですか? 僕、理科系大好き人間でして。
中でも数学は、その「何の役にも立たない感」が大好きでした。ひねくれ者の僕としてはですねぇ、物理とかだと、実生活と結びついている感じがして冷めちゃうんですよ。その点、数学は偉い。0から9までの10種類の数字があるというだけで、ここまで広がる無意味な世界‥‥。「数学I」の教科書はもらったその日に徹夜で読みました。下手なエンターティメント小説よりずっとずっとドラマチックで感動的でした。
数学Iで「虚数」の概念を知りました。二乗するとマイナスになるという、実際には存在しない数字。「嘘っこの数字」ですよ! 役に立たない(ように見える)数学の中でも、極めつけの穀潰し、に思えて僕は狂喜したものですがしかし。
深く勉強してみると数学は、この「虚数」でさえも、我々の実生活に大きな影響力を持っていることに気がつきます。例えばパソコン。例えば携帯電話。もしもこの世に「虚数」の概念がなかったら、それをこんなに小さく作ることはまず不可能なのですよ。
それはなぜかを、わかるよう平易に説明できるほどの専門的知識の持ち合わせはないのですが‥‥。しかし「無い数字」が「在る世界」に影響を与えるというこの事実。すごいと思いません? ちなみに英語で虚数ってなんて言うか知ってます?
そう“imaginary number”‥‥想像上の数字。
現実の世界に影響を与えうる誰かの頭の中の妄想という、P・K・ディックのSF小説のような「事実」。それが幼い僕をどんなに勇気づけたことでしょう。
僕のこの「思い」も、誰に届くこともないこの「気持ち」も、決して無駄ということはない。いくぶんナイーブなメタファーとして、僕はそれを数学の中に学んだのです。
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コメント
Newtonという雑誌の「量子論」という号を読んでいたら、「虚数」という言葉が出てきました。聞いたことはあったのですが、中卒の私にはあまりにも「?」なものでチェックしたところ、こちらへたどりつきました。「imaginary number」からP.K.ディック、、どんぴしゃの流れでアタマに入ってきました☆ ありがとうございます。
投稿: loveshockers | 2006年6月24日 17:57
詳しいことは何も書いていないのですが‥‥。ヒントにでもなったのなら嬉しいです。
「i」って、最近のキーワードのひとつですよね。iモードとか、iアプリとか何とか。iにはいろんな意味があるんでしょうけど、その中にimaginary の意味もあったらいいなと思います。
投稿: ぼく | 2006年6月24日 21:53