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2006年3月26日

ロッキンオンはいつからだめになったのか

 ハラキリロマン。夢オチについて書いた記事にいただいたコメントでこのブログを知った。中にロッキンオンを痛烈に皮肉った文章があって大爆笑してしまった。正確な批評だとは思うのだが、20数年前の熱烈な読者として、ロッキンオンはいつからこんな雑誌になってしまったのかと寂しく思うところもある。批評精神に満ちたネットの住人から、こんなふうに笑われていることを彼らは知っているのだろうか。本当に、ロッキンオンはいつからだめになってしまったのか。


              ☆


 いや、その答は20年前に出ているのだ‥‥そう、あの日、創刊当初から守り通してきた280円という価格を捨てた、あの日からだ。


              ☆


 渋谷陽一という天才的な編集者が始めた、280円時代のロッキンオンは良くも悪くも「同人誌」だった。記事のほとんどを、思い入れたっぷりの、つまりは偏向したただの音楽マニアに過ぎない読者からの投稿に頼り、取材ができなかった大物ミュージャンの、彼ならきっとこう答えるだろうと「たぶん」で話をでっちあげ、それを「架空インタビュー」と称して、妄想のインタビュー記事を載せる。


 肖像や著作の、知的所有権にうるさい今なら問題にもなろう。


 しかし、その架空インタビューに象徴される、思い入れ、三度のメシよりロックが好きで好きでたまらないというマニアの思い入れ、それを吐き出す場としてロッキンオンは、音楽を聴く人間にいちばん近いところで作られた雑誌だった。僕自身、思い出すとちょっと恥ずかしくなるような記事を投稿してもちろんボツになった経験もあるのだがそれはまぁ、いい。


 まずかったのは、280円、という月刊の音楽誌としては不当なまでの低価格を捨て、同人誌的体質からの脱却をはかり、いつの間にか音楽メディアとして主流の位置に躍り出た「それから」のロッキンオンが、しかし、その後も280円のオルタナティブをずるずると引きずったままだったことだ。


 それが問題だった。


 大物に本物の取材ができるようになってからも、彼らがやっていたことは架空インタビューの時代と何ひとつ変わらなかった。彼らとはその後のロッキンオンに続々と入社してきた、思い入れたっぷりの投稿記事を書いていた280円時代のアマチュア・ライターのことだ。とにかく、彼らは、人の話など聞いちゃいない。前述のハラキリさんのブログ記事もそこのところを皮肉っていて見事だったわけだが、自分の思い入れに合うとおりに編集して結局、取材を妄想の「架空インタビュー」に仕上げてしまう。


 自己のスタイルを確立している「大物」相手ならそれもまだギャグとして許されるかも知れない。


 しかしデビュー間もない新人に「アナタはこうあるべき」だとの勝手な思い入れを注入する、架空インタビューの手法で可哀想なカン違いをさせてしまって‥‥あのエレファントカシマシのように極論「ロッキンオンに潰された」と言える、そのような被害は報告されていないだけで実は数えきれないほどあるのではないか。


              ☆


 多かれ少なかれ「メディア」にはそんなところはあると思う。私見の入らない取材というものはないのだし。架空インタビューだってもともとは、あなたがたのやっていることだって結局は「架空」ですよ、とそのような既成の音楽メディアに突きつけたパロディだった。


 280円時代のロッキンオンは、読者と共にそれを笑っていたのだ。


              .


phy
Lyashko Vlad


 ロッキンオンの悲劇は、全部が傍流だった音楽雑誌の世界で天下を取ってしまったオルタナティブの悲劇である。当時の編集長だった渋谷陽一だけはそれに気づいていたのだろう。それゆえにたかが40円の値上げに踏み切る際、280円との訣別、などという大仰な文章を雑誌に載せたのだ。僕のこのロッキンオン批判の、だから当たっているいないに関わらず今のロッキンオン関係者はこのブログを読まないと思う。それは別に構わない。それでも僕は、好きだった何がこんなふうに変わってしまって、それがこんなふうに笑わられているのが自分のことのように悔しいのだ。


 残念でたまらない。


 お前らだからまた「架空」を使いたいならな、無料のネットで、やればいいのだ、ただ同然の価格で、ゲリラ的にやれよ。ロッキンオンもいつの間にか、ハラキリさんのような想像力豊かなウェブの、訣別したはずの280円的な書き手から、まさに自分たちの当時の十八番だった架空インタビューの手法を使って、その編集方針を皮肉られる存在になってしまったのだということぐらいは、特に今の若い社員は、知っておいた方がいい。


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コメント

☆それでも買います"rockin'on"☆

最近編集者の世代交代みたいですね。
まあ何でも2代目には風当たりが強くて、3代目で飛躍するか?つぶれるか?って
そんな先は知ったことではないですが・・(^_^;)

でもお笑い『渋松対談』がある限り?買います。(実は、松村さんの隠れファンなんです。
神戸のライブハウスにも行って本にサインもらいました。
一見普通のおじさんですが、トーク・ライヴが始まると、止まりません。
徹夜でやってしまうんですから・・・)
それと、New York 通信の中村明美さんと、
UKからの『今月の琴線』の坂本麻里子さんのLondon 通信がある限り買うと思うなあ・・・(^^♪

投稿: ロックフリーク | 2006年3月26日 16:17

 これどうでしたっけ? 280円じゃなくて、270円だったような気もするのですが (^^ゞ 

 ぼくもアレですよ、もう渋松対談しか読むところないなぁ、と思って買うのやめちゃったんです。昔、NHK-FMで夜の10時ごろ、「こんばんは、シビア陽一です」ってあのラジオ番組が大好きでした。ZEPはもちろんなんだけど、渋谷サンの影響でチープ・トリックとかハマりましたね。トッド・ラングレンとか。トッド・ラングレンはすごく好き! あの手のパワーポップを聴くとあのころを思い出します。

 松村さんの本は何冊か持っていたのに、引っ越しに紛れてなくしてしまったのか。

 友達にあげちゃったんだったかな‥‥。トークライブはいちど行ってみたいな。


投稿: ぼく | 2006年3月26日 18:55

うわぁ、なんか、こんなにすごい感じで取り上げていただいて、ほんと、ありがたいっす。
ロッキンオンジャパン自体が、すでに「一つの権威」のようになってますよね。雑誌をこえた存在として。
記事の半分以上がインタビューのふりをした読書感想文で、下手したらインタビューをうけているほうはほとんどしゃべってなかったりして。
とにかく過剰に褒める、もしくは過剰に疑問を投げかける。それをまともに受けた結果、エレファントカシマシは「このままではだめだ」と想い、ロッキンオンジャパンフェス会場で、その日最大の「トイレ休憩タイム」になったわけです。すごい光景でしたよ、エレファントカシマシがライブをはじめたら、たくさんいた客がどんどんいなくなるんです。それでも、ロッキンオンファミリーに組み入れられたエレファントカシマシがはずされることはなく。
ファミリーに組み入れられることがすごく大事なんですよね。それはもはや雑誌ではなく、じゅうぶんに一つの「権威」で、だとするならば、権威に対してキバをむくことこそが、ロックだと思うんですけどね

投稿: ハラキリ | 2006年3月27日 15:15

 昔ロッキンオンジャパンに星占いが載っていた時期がありまして。
「占いのある音楽雑誌は潰れる」ってジンクスを知ってすぐになくなってしまうんですけど。
 ‥‥まいいや。

 読書感想文レベルの「架空」が天下を取れてしまった、という状況そのものに問題はあったのだと思います。

投稿: ぼく | 2006年3月27日 20:33

初めまして。
この記事を読んで、とても考えさせられました。
私は、ジャパンという雑誌が好きでしたが、疑問が湧きました。
とても考えさせられました。
それで一気にぼくさんのこの記事を含めて感じた事を長々と書いてしまいました。
何か勘違いしているかもしれませんが、トラックバックさせて頂こうと思い、コメントも書かせて頂きました。

投稿: | 2006年10月30日 06:41

こんにちは、はじめまして。”ロッキンオン”検索で検索していてたどり着きました。
テキストをおもしろく拝見しました。地方に住み信頼の置ける音楽雑誌として崇拝するがごとくロッキンオンを読み漁っていた頃を思えば、確かになんか変な雑誌になったな感が否めません。思い入れ過剰なインタビューも嫌いじゃないのですが、そこは「ぼく」さんと共感です。パロディと言い切っていただいてスカッとしました。

投稿: Q | 2007年1月22日 11:28

おもしろく読みました。
私がロッキンオンを手に取るようになったのはすでに、
平積みにされてた頃だったので。
GLAYが表紙になった時に、買うのをやめた記憶があります。

無料のネットで、やってほしいですね。
それは面白いと思う。

投稿: yooko | 2007年3月18日 03:25

「ルーズリーフ・マガジン」というアイディアが昔あったのを知っていますか。書棚にはひとつひとつの、ルーズリーフになった短い記事を並べて、つまり記事毎のバラ売りという形で読者に書店で選択してもらってはどうか、という。自分のチョイスで記事を選んで、自分だけの一冊が作れるわけです。インターネットは、逆にない方が紙の雑誌は、面白くなるかも知れません。今ではそんな気がしています。


投稿: ぼく | 2007年3月19日 00:09

全く同感です。
当時、280円でした。
今のrockin'onは買っても渋松対談以外に読むところがなくて寂しいです。
インタビューも私にはつまらないし。
今、こういうのが売れるんだなって思うだけで。だから買いません。

投稿: | 2007年9月14日 10:53

[架空インタ]ってホントですか?
私は89年迄『RO』買ってましたよ。
90年に入って最初の号で止めました。馬鹿な編集
に抗議したもんね。(東北の田舎町出身の馬鹿女が書いた記事~レビューで。一見性別がわからない
名前だった)88年から質が下がっていた様に
思ってました。
『バーン(Burrn!)』ってメタル・ハード系の
雑誌があるでしょう?あれの初代編集長って
ひどかった。公私混同もいいところ、金積まれないといい記事書いてやらないタイプ。音楽とまるで関係ないとこで酷評レビューしてみたり。この人(ルックスはオバサン・パーマの中年主婦みたいだった)、92年頃ここ止めて、暴露本出していたそうです。3部作で。でっち上げ座談会とかそういうのを書いていたんでないか?(『Burrn!』の)
業界からは、この初代編集長って、上から人を見下すので有名だったって。元はと言えば、まるで売れないグループでキーボードやってて、それがミーハー雑誌の代表だった『ミュージック・ライフ』の編集長に拾われたんだって。

投稿: Yamari | 2007年10月19日 17:20

それでも、やっぱロッキングオンは良い雑誌だと思うよ 雑誌それぞれに色々な形があるのは当然だし とにかくそれが嫌いで酷評をしてる雑誌とか、アルバムとかを採点をしてる雑誌よりはよっぽど好きだよ

投稿: ギグラ | 2008年1月 5日 09:10

「権威」になる前、そう、岩谷宏が身を引いた時に終わってたよ。

投稿: ひゅう | 2008年4月27日 21:48

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