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2016年5月31日

最高

 最高の笑顔、最高の喜び、最高の愛、最高の音楽、最高の演奏。僕は「最高」を知らない。最高の幸せの中にいても、それに気づかず、もっと幸せになれると信じている。最高を知らないのは、最高が何かを知っているよりも、良いことかも知れない。




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2016年5月24日

かわいい

 演奏中。リズム爆発が起きている。僕の耳に聞こえてくる音楽は、本当にバッハなのか、ラフマニノフなのか、今、自分はどこにいて、誰と何を共有しているのか、震えるほど感動しているときでも、かわいいひと、あなたは私の特別な友達よ、という君の言葉を、僕は思い出したり、あるいは忘れたりしていた。また会いたい、君のコンサートのチケットが欲しいと伝えると、君が、つまりアーティスト本人が、席を用意してくれた。そういうとき、かわいい僕は信じた。未来を思い出すようにして未来を信じたのだ。




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リハーサル

 夢が叶ったのかどうかわからない。それで、どうしようか、リハーサルもなしで。新しい生活をどうしていこうか、わからない。地方都市の、そのまた郊外の戸建ての住宅に越してきた当初、僕が思い描いていたのは、1人の生活だった。外的世界と内的世界の分離、ということだった。仕事は必要最小限にとどめ、好きな本を読み音楽を聴き絵を描きピアノを弾いて暮らす。けど変わった。1人のアーティストとの出会いが、その生活を変えた。怒られるだろうと思っていたのだ。リハーサル中のホールに入ってしまった僕。断りもなく、入ってしまった僕は。邪魔をしてごめんなさい。でも舞台の上の君からは、予想とは反対の、暖かい反応が返ってきた。来てくれて嬉しいわ。僕が迷い込んで来ることを、どうしてか、知った。知っていた君。私は、ピアノが弾けるのよ。ねぇ、知ってた? あなたのこと待っている間に、ちょっと弾いていたの。ずっとそんな雰囲気で、リハーサルは、何のためのリハーサルがつづいたのだろう。




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ふわふわ

 朝食をとらずに歯科の定期検診に行き、歯石をガリガリやられてすっきりするのだけど少しだけ体調が悪くなって帰宅したときの気分は、長時間飛行機に乗って帰国したときの気分と、とてもよく似ている。ふわふわしている。なんだか時差ぼけしているみたいだ。




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2016年5月13日

確約

 いいことがつづく。嬉しいことがつづく。ラッキーがつづく。悪いことが何も起きなくて、いいことだけが連続する。以前ならちょっと怖くなってしまっただろう。でも今は怖くない。なぜこんなに嬉しいことばかり起きるのか、理由を知っているから。理由は君なのだ。すべてがうまくいくわ。君がそう言うからなのだ。ピアニストであり予言者であり魔法使いである君が、確約する。あなたに降りそそぐわ、愛の光が。




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擦り切れたり

 また飛行機が上昇する飛行機が空を切り裂いていく。風が四方八方に散らばっていくのが見える気がして、僕は非科学的なことを思う。空は擦り切れたりしないのだろうかと。




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共犯者

 髪の長いピアニスト、君と出会ってから、いいことばかり、何もかもが思いどおり。「怖いぐらい」と書くべきだろうけど、僕は怖くない少しも。

 コンサートに行く。君が特別に用意してくれた席につく。最前列の更に前、手を伸ばせば鍵盤に触れることもできる、君にいちばん近い席。

 ガチガチに緊張した君。蒼白い顔をした君。僕には目もくれず、椅子に腰掛けた君。演奏はいきなり始まる。咳払いと拍手が止むより前に、君の指は鍵盤を叩く。

 聴いていると、胃が痛くなり、緊張のあまり、吐きそうだ。音の時限爆弾なのか、風船なのか、そういう何かがピアノの上にあって、君は時計のネジを巻くように、音を1つひとつ重ねる。

 とっくに割れてもいいはずなのに、風船はまだ膨らみつづける。もう耐えられない、と思った直後、君は時間を止める。



 音楽はつづく。なのに時間は止まるのだ。なぜ? 



 君は僕を見て、ウインクする。得意技の変な角度のウインク。そして時間が流れ出すと、音楽の爆弾は、風船は爆発する。その瞬間を、僕は聴き逃してしまったことに気づく。

 僕を見て君は、軍隊風に敬礼し、悪戯っぽく笑う。世界一悪戯っぽく笑える君だ。そしてロビーに集まった僕ら。

 ファンとの記念撮影に応じる君。顔をカメラに向けたまま、視線だけ外し僕を見て、舌を出し笑う。失礼だろファンに対して。ううん、あなたも共犯よ。




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