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2016年6月29日

パリの千円札

 80年代、汚くて危険だった頃の、ニューヨークみたいだった。パリの地下鉄は、落書きだらけだった。そこに何と書いてあるのかはわからなかったが、危険だということは伝わる。できる限り乗らない方がいいだろう、と思えた。移動にはタクシーを多用し、ちょっとの距離なら歩いた。

 クレジット・カードを使えるタクシーは少なく、手持ちのユーロは、すぐになくなり、足らない分は、千円札で払った。あのタクシーの運転手は、英語の通じない若者は、円高を知っていたのだろうか。

 現在のパリは、ヘンリー・ミラーの描いたパリで、薄汚れた雨の町で、僕にはちょうどいいか、と思えた。もちろん、アナイスは君だ。鶴は掃き溜めにこそふさわしい。

 ヘミングウェイのパリは、僕が到着するずっと前に、違う誰かに消費されて、それでどうなったのかは、まだわからない。わかるまで、あるいは、わからなくなるまで、何度も通うだろう、きっと。パリもそれまでには、ミラーとアナイスのパリではなく、君と僕のパリだ。




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