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2017年7月 7日

静か

 去年のいつだったか、君と一緒に行った晩餐会には、日本の外交官も来ていた。軍服姿の軍人や、民族衣装を着た王様、タキシード姿の政治家たち。ブラックジーンズにモヘアのセーターを着た僕は場違いだったが、ヨーロッパの大人たちの目には、僕は20代の若者と映るらしく、君の友達ということもあって、ギリギリ受け入れてもらえたのだろう。

 一方で夫人とずっと日本語で会話しているその外交官は、可哀想なくらい浮いていて、しかもそのことに気づいてない様子で、最後には僕は、彼らを可哀想だと思うことをやめた。意識してやめた。

 繰り返し見た夢は、いくつかまとめて正夢になった。君が僕をステージに引っ張り上げて、観客みんなに紹介するあの夢は、そのまんまの形で現実になった。そのあまりの正夢ぶりに、僕は驚いてしまって、何も言葉が出て来なかった。「何か話して」と君に言われたけど、何も。勉強してきたフランス語も、英語も、日本語も。

 自分の気持ちを声にすることなど、到底不可能に思える。いくら外国語を勉強しても。とりあえず聞く耳だけは得たのかも知れないけど、僕には声がない。僕の心中には模様のような文字だけがあり、音はない。ここはとても静かだ。




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