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2017年10月26日

光る

 言ってみればこんな感じだけど、たぶん本当はそうじゃない。「あなたのその存在の輝きが、私を照らしてくれる」とか。「あなたに会う度に私は幸せになっていく」とか。「あなたは私の光」。

 けど日本語に訳すとそんな感じ。ロマンチックで強い言葉。わかりやすい愛の告白を受ける。曖昧さと暗示に重きを置く僕は、かえって臆病になって、

 たぶん本当はそうじゃない、と最後の瞬間まで繰り返す。

 ていうか輝いているのは君だし。君はアーティスト。君の瞳は100万ボルト。光っているのは君。そうメールしてパソコンの電源を切って、夜の3時まで町を歩きまわる。決して治安がいいとは言えない町。いやたぶん、本当はそうじゃない。

 晴れた日には湖の南に、蜃気楼のように霞むアルプスが見える。遊歩道脇のベンチにひとり腰掛ける僕の隣に、同性愛者のカップルが座って、いちゃつき始める。入れ墨を入れたものすごく太った女がものすごく格好いい自転車に乗って、すぐ前を通り過ぎる。



 僕たち3人は思わず顔を見合わせる。今デブに誘われたら、あのデブが僕を輝く光だと言ったら、一も二もなくついていく。いやもちろん、本当はそうじゃない。




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