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2019年1月31日

 その小さな食料品店で、僕は店番をしていた。店の人が出かけるというので、しばらく代わったのだ。客は次から次にやって来て、花を買っていった。値段がわからなかったので、勝手に10ユーロで売った。それにしてもこの店のどこに、花が置いてあるのだろうか。僕も欲しくなり、店中を探してみたが、花びらひとつ見つからないのである。




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展示室

 美術館の展示室のような広い空間で、白い光を浴びて、マネキンのような人たちがポーズを取っていた。そこで僕は、すっかり色落ちして、膝に穴が開いたジーンズが捨ててあるのを見た。そのポケットには、ピカピカの十円玉。平成三十年の十円玉だった。




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タイムマシン

 夢。僕には10代の息子がいる、という夢。彼はその歳の僕と瓜二つ。外見だけでなく、性格や、考えていることも一緒。あまりにも似ているので、彼は僕の息子などではなく、タイムマシンに乗って35年前の世界からやって来た自分自身なのだ、と僕は思うようになった。




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2019年1月30日

計画

 先の計画を立てられるのはいいことだ。その計画を話すと、驚いたことに、君の頼りになる友人が何人か、僕の協力者になってくれた。ことがより快適に、よりスムーズに運ぶように、いろいろと手配してくれた。僕はどこへ行っても、みんなから愛される、というのは、まんざらお世辞でもなさそうだ。特急列車の乗車券を買って、僕にプレゼントしてくれる人まであらわれた。いちばんにお礼をしなければ。僕はその人と駅ナカのレストランで待ち合わせ、一緒に食事をすることにした。




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柑橘系

 オレンジなのか蜜柑なのかわからないが、街路樹に生った柑橘系の果物の収穫が、道端で行われていた。長い棒をつかって、枝から実を落とす人、それを受け止める人、2人一組の作業だ。歩行者がその樹を大きく迂回して、車道にはみ出して歩くので、通行する車も気をつかっている様子だった。




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屋上

 ビルの最上階に住んでいて、屋上も僕の所有だった。いつもの夢。ただ屋上に関しては、僕がそう思い込んでいるだけなのかも知れない。住人が自由に出入りして、洗濯物を干したりしているのだから。

 その日の屋上には、テーブルと椅子が並べてあり、住人たちはそこでお茶を飲みながら、談笑していた。僕はもう1人の若い女と一緒に、雑巾でテーブルを拭いて回っていたが、その必要はなかった。使い込まれたテーブルに、汚れはなかった。僕たちは作業をやめ、税金がどうとかいう住人たちの話に加わることにした。




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2019年1月29日

20スイスフラン

 前を歩く人の靴底に、20フラン札が貼りついていた。どこかで剥がれることを期待して、後をつけていった。ざっと5日分の食費を、見逃すわけにはいかない。するとその人は、僕のアパルトマンの玄関の暗証番号を押し、中に入っていくではないか。慌てて後を追うも、番号はいつの間にか変更になっているようで、ロックは解除せず、僕は入れない。

 そこでふと自分の足裏を見ると、あの20フランが貼りついていた。なぜか僕は裸足だった。




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日々是○○

 日本語を勉強している外国の友人と、深夜のマクドナルドに行き、彼が日本語の学習のために見たという映画やアニメの話をした。日本画の巨匠たちの話をした。おせち料理の作りかたの話をした。彼は何でも知っていた。日々是なんちゃらという、代ゼミのキャッチフレーズのような言葉まで知っているのだ。どこで覚えたのだろうと不思議に思う。僕が彼に教えることなど何もなかった。




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夢(正夢)

 あなたはどこへ行っても、みんなから愛される。羨ましい、と君は言うけれど。それはそうだろう。誇りに思う、尊敬している、などと会う人会う人に僕を全力でアピールしまくっているのは君なのだから。

 12歳で単身フランスに渡ってから僅か5年、17歳でパリ管弦楽団を指揮した少女が、当時暮らしていたのは埃だらけのガレージだった。部屋とも呼べないただの車庫。

 そこからさらに7年、ベートーベンのソナタ全曲を録音した8枚組のCDでデビューした天才が、所属する音楽事務所を倒産に追い込んだ悪女が、暴言を吐いてピアノコンクールの審査員職をあっさりと捨てた強気一辺倒のわがまま娘が、クラシック音楽の世界に革命を起こすカリスマが、特別に入れ込んでいる日本人の「親友」、それが僕だということを、彼女と関わる全員が知っている。

 レコード会社や放送局のプロデューサーに、世界的な指揮者に、音楽評論家に、出版社の編集者に、市長だったり知事だったりする政治家に、やって来た僕はただファーストネームを名乗るだけでいい。ひとこと「友達」と告げるだけでいい。全部を言い終える前に相手の態度が変わり、扉は開き、夢はいちばん突拍子もないものから順に正夢になっていく。




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2019年1月28日

メロディ(前半夢)

 君に3カ国語でプロポーズする。「さて、どうしたものかな」という顔をする君。返事はもらえないのだろうか。ややあって君はピアノで返事をすることに決め、激しく、ドラマチックな曲を即興で演奏する。狂ったように拒絶されたのか、はたまたそれは熱狂的なOKの返事なのか、演奏を聴いただけでは判断できず、呆然と立ち尽くす僕。

「ねぇ私が今弾いたのは、メロディだと思う? それともアルペジオだと思う?」と君が訊く。僕はメロディだと思う。「あらそう? 私はアルペジオを弾いたつもりなんだけど?」そうだったんだ。「まぁいいわ、いつかあなたのために、メロディを弾いてあげる。本物の旋律を」。ありがとう、それよりさっきの返事はもらえないのかな?「返事は今したじゃない」




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人形(夢)

 黒い布を使って君がつくった丸い犬と可愛い女の子の人形が書店の棚に飾られている。君と、君のマムと、僕が一緒に写った写真もある。写真館で撮られた家族写真のようだ。僕は知らない国の見たことのない民族衣装を着て、帽子を目深に被っている。いつ撮ったものなのか、思い出せない。どういういきさつがあって僕はその服を着たのだろう。




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2019年1月27日

方言

 ほぼ独学でフランス語を勉強して、ある程度話せるようになったのよね、あなたのこと、みんながすごいって言ってる、私も誇らしいわ、などとおだてられ、徹底的に甘やかされて学習した僕のフランス語は、実際のところ、君1人にしか通じない、特殊なフランス語の方言のようだ。

 君の部屋が、君のコンサートが、君のパーティが、君の国だ。君がパンとチーズを買いに行くスーパーが、君の国だ。そういう小さな国の中だけで使う方言のような言葉と共に、僕は生きていく。




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B&B(夢)

 遠い国のB&Bにいる。ハムと卵が焼けた。朝食に集まってきた3人の宿泊客の内、2人が日本人だ。僕ともう1人のその女性は、一言も日本語を話さないが、着ている服や雰囲気で、日本人だということがわかる。




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教室(夢)

 大学の教室にいる。渡された資料を見ながら、学生同士で議論している。様々な国から来た学生たち。日本人は1人もいないが、全員が日本語を話す。明らかに知的レベルが劣る僕がこの場にいるのは、日本で暮らしてきた日本人としての意見を期待されてのことだ。それはある意味僕のために行われている討論なのだ。なのに僕は一言も発言できない。




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2019年1月26日

パーティーで

「ママに挨拶してきて」と、君が僕の手を引いて言った。向こうの部屋にいるらしい。僕を驚かせるような話があるらしいのだが、何なのかわからない。連れて行かれた部屋で、英語もフランス語も日本語も話せない君のマムと僕の2人きりになってしまう。

 驚いたのは間違いない。マムは僕にコーヒーとチョコレートを勧めた。そしてにこにこしながら僕には一言も理解できない話をした。最後に「あなたにもそう言ってもらえて嬉しいわ」と多分そういう感じのことを言い(えっ、僕は一言も発してませんが‥‥)、席を立ち娘と合流した。




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マッチョマン

 地下鉄。発車ぎりぎりに飛び込んできた女性が、ハンドバッグを扉に挟まれたところ、ちょうど居合わせたマッチョマンと僕とで、協力して扉をこじ開け、女性を(というかバッグを)救出した。マッチョマンと一緒に何かを成し遂げたのは、初めての貴重な経験だった。

 マッチョマンは通常マッチョマン同士で協力し合うもので、僕のような非マッチョマンの手を借りるのは異例なのである(マッチョマンと僕の手は真っ黒になった)。




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ボウイ

 デビッド・ボウイのように左と右で瞳の色が違う猫がこちらを見つめていた。




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2019年1月24日

ペントハウス

 ビルの屋上には洗濯物を干そうと大勢の人が集まっていた。雑巾を渡された僕は、手摺を拭いてタオルや布団を干す手伝いをした。明け方まで雨が降っていたらしく、あちらこちらが濡れていた。僕はビルの最上階に住んでおり屋上も僕の所有だったが、ビルの住人たちは自由に出入りしていた。グループで記念撮影をしている人までいたが、僕はなんとも思わなかった。




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捨て子

 その車を運転していたのは、コルゴ13のような劇画風の中年男性で、僕は後ろに座っていたのだが、その後席にもハンドルとアクセル、ブレーキがあり運転できるようになっていて、ゴルゴがスピードを出し過ぎているときには、気づかれないように少しブレーキを踏んで調節していた。

 急坂を登り切ったところに小さな駅があり、ゴルゴは駐車場に車を入れた。駅の待合室には数人の男女がいて、その内の1人とゴルゴは知り合いのようだった。何やら込み入った話をしているな、と思っていると、突然ゴルゴは部屋を出て、車に乗り走り去ってしまった。

 夢の中では僕は子供だった。こんな知らない土地に1人で残されて、いったいどうすればいいのか、駐車場で途方に暮れているところに、ゴルゴと話をしていた女性がやって来て、5通の手紙を差し出した。ゴルゴの置き手紙だった。

 置き手紙なのに律儀に切手が貼ってある。要約すると手紙には駅で僕をほったらかしにしてその女性とばかり話をしていて悪かった、と書かれていて、それを見せるとその女性は、「あの人もしょうがない人ねぇ」と僕に言い苦笑した。彼女がその日から僕の母親になった。




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2019年1月23日

名探偵(夢)

 タキシードを着た名探偵の元に事件解決の依頼が届く。なにぶん名探偵なので世界中から依頼が届く。幽霊や宇宙人の仕業だとされ迷宮入りした事件の依頼もある。

 けど幽霊は怖いな、と名探偵は思う。宅配で届けられたお菓子を食べながら。




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ルックス

 ハンサムというわけではないが、人目を引く。思わず、はっとするようなルックスだと、僕は言われたが、そうなのか、すれ違う人々がこちらをチラ見していくのは、僕ではなく、僕の背後霊を見ているのだと、自分では思っていた。

 すれ違っていく人たちの中に、1人だけ知った顔があったが、どこで会ったのか、どういう知り合いだったのか、思い出せないまま。お堅いお話は、突然終って、いきなり話題が変わって、僕の話になるが、僕は気に留めずに、進む。




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朝日

 朝日を浴びて、中年の女性が何人か、スツールに腰を下ろして、日本語で話をしていたが、そこは日本ではなかった。みんな、どういう事情があるのか、日本を離れ、その国で働きながら、暮らしているらしい。




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2019年1月22日

正夢アーティスト

 6つの道路が集まる六角形の交差点を、無線の指示に従って自転車で走った(夢)。

 ☆

 夢で見たのとほぼ同じ場所、同じ風景を見つけたので、過去の夢日記を読み返し、いくつかの夢を故意に正夢にしてみた。100%の再現は難しかったが、そこそこ満足できる結果にはなった。この夢の正夢化を、正夢アートと呼び、僕は正夢アーティストを名乗ろう(夢)。




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2019年1月21日

正夢化する

 夢が正夢になるのは普通のことだと思う。夢はある程度の確率で正夢になるのが普通なのではないか? 100%そのまんま、ということはないにしても。繋いだ手、広い階段、畑の中のコンサートホール、僕のための通訳者、中央分離帯、ストリートビュー、信号機、雪、ピアノ、小銭、ブロッコリー、傘。それらが全部1つに繋がり、パズルは完成する。ここまで現実になったのだから、ついでにあそこに行ってあれとそれとこれをやれば他の夢も正夢化できるな、などというスケベ心で僕の人生は動く。当初は思いもしなかった未来へ向かって。




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朝の7時

 長い時間歩いて、そのホテルに到着したのは、朝の7時だった。チェックインには早すぎる。が僕の予約したシングルルームのドアが開いていて、中を覗くことができた。10m x 20m はあろうかという広い部屋で、隅っこに小さなベッドが置いてある。他には何もない。窓にカーテンもない。部屋にあるのはただそれだけだった。

 チェックインまでロビーで待つことにした。少し休みたい。するとたくさんの人が集まってきた。その中には長いこと連絡が取れなくなっていた、昔の知人がいた。宿泊客なのか、このホテルのスタッフなのか? 彼女は違うと言った。スタッフではない。ここに泊まっているわけでもない。ただちょっと寄ってみただけ、と。そして「今から仕事に行く」と言ってどこかに去って行った。その人がもう何年も前に亡くなっていたのを思い出したのは、目を覚まして数時間ほど経ってからだった。




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2019年1月19日

うさぎ(夢)

 君、僕。白い兎、幸せな気持ち。




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誰かの幽霊が

 部屋で本を読んでいると、誰かが来て僕の背後にまわった。

「誰が一緒に読んでいるの?」と僕は訊ねた。

「幽霊」と幽霊は答えた。「同じ気持ちになりたくて、同じ本を読んでいるの」

「僕は誰かと一緒に本を読んでいるような気持ちなんだけど」

「すごい」と幽霊は言った。「私はその誰かと一緒の気持ち」

 ☆

「私は誰と恋に落ちたのかな?」ずっとあとになって幽霊は言った。「誰と誰が恋に落ちたのかな?」

「幽霊の誰かと」僕は言った。「誰かの幽霊が」

 そう答えると幽霊は笑った。




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2019年1月18日

バラの花

 家に、たくさんの客が来ていた。新しい家具が、いくつも運び込まれてきた。新生活が、始まるのだ。そんな喜びの中僕は、風呂に浸かっていた。

 バラの花を持った訪問客が、浴室にやって来て、僕と話をし、また去っていく。僕は花びらを湯に浮かべた。

 小さな男の子2人と、彼らの父親が、その風呂に入りたいと言うので、風呂を上がった。すると、脱衣場に置いておいた着替えがなくなっていた。しかたなくバスタオルを腰に巻き、上は誰かのダウンジャケットを借りて羽織り、家中をうろうろした。

 だがどの箪笥の、どの引き出しを開けても、入っているのは女物の服ばかり。

 2階では、10代の少年と、その小さな弟が、僕のものを盗んで逃げようとしている。そういうわけだったのか。この兄弟が家に来ると、いつも何かがなくなっていた。警察に通報することにした。

 近くにいた老婦人に、電話を借りた。サングラスと一体になった電話だった。そんなものは初めて見た。使い方がわからない。

 というか、本当に僕の家なんだろうか、ここは。だんだん自信がなくなってくる。だいたい何の集まりなのだろうか、これは。服もまだ見つからない。




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2019年1月17日

虫眼鏡 不死鳥

 2階の部屋の虫眼鏡の中に、僕は西日と不死鳥を閉じ込めていた。テレビ局が嗅ぎつけて、それを取材に来た。

 雨戸を閉め切った1階の広い和室で、スタッフが待っている。虫眼鏡を持ち、部屋に入った。

 覗いてみると、不死鳥は、息も絶え絶え。見え透いた演技だったが、心は動かされた。僕は虫眼鏡の仕掛けを解き、不死鳥を解放した。

 西日の中で、何かまずいことが起きるのは明らかだった。トイレに行くと言い、僕はその場から離れた。




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赤 緑 青 白

 夜の寒さに、信号機の赤と緑が震えた。それを見て僕は、日本では信号の緑は何色だったのか思い出そうとしていた。あれは、本当に青かったのだろうか。

 降る雪は、伝統的な雪の姿をとることをやめていた。平べったい、四角形や五角形だった。白い、落ち葉のようだった。積もるのではなく、積み重なっていくのだった。




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(夢)

 扉の前で僕は、下降するエレベーターを待っていた。しかしやってくるのは、上昇する箱ばかりであった。諦めて、階段を下りることにした。20人が並んで歩けるくらいに、広い階段だった。

 1階にいた若い女が、下りてくる僕の足を見上げていた。ここには、1人で住んでいたはずなのに? だが彼女も、僕に同じことを言った。人の家に迷い込んでしまったのは、僕の方なのかも知れなかった。




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北壁(夢)

 その町は、人間と同じだった。建物は、人間と同じように、暑い夏になると、汗をかいた。冬に雪が降ると、北側の壁が寒がってくしゃみをした。くしゃみに驚いて、犬が吠える。少し離れたところで、僕たちは顔を見合わせて笑った。




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2019年1月16日

創造主

 神様がいるかどうかは僕にはわからない。でも神様は、この世界に住んではいないのだろうということはわかる。神様はこの世界を創造した。けれど自分でつくったこの世界に住むことはなかった。なぜだろう。とにかく自分では別のところに住んでいるのだ。それはちょっとどうなのかな、と僕は思う。せっかくつくったのだがら、こっちに来て僕たちと一緒に暮らすべきなのだ。




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信号機は緑に

 僕ともう1人の男は、「日本政府のやっていることにはまったく共感できないな」と言いながら、緑色の袋を1つビルの外に運び出そうとして、エレベーターが来るのを待っている。「悲しみにも怒りにも、喜びにも誇りにも‥‥」

 袋の中身は死体だとその男は言う。「赤かったものが、黄色くなり、死ぬと緑になるんだ、信号機の逆でな」。何が死んだのだろう。それが死んだとしても、悲しくならない何か。気になりつつも、訊く気にはなれない。エレベーターが来るのが遅い。




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2019年1月14日

現場検証

 えんじ色のカバーが掛けられたベッドが部屋に運び込まれてきた。難しい顔をした数人でそれを囲んでいる。刑事ドラマでよく見る、現場検証のような雰囲気だった。僕は「何が問題なんでしょうかねぇ」と言いながら、持っていた赤い傘でベッドの上や床をつついていた。




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トマトを目指して

 動物の背中の毛繕いをしてあげていた。何の動物かはわからない。背中にずいぶんと白髪が出てきている。撫でるように毛を梳くと、白い毛だけがきれいに抜けて落ちた。

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 その毛が、進化の系統樹になった。普通とは反対に、たくさんの枝が、だんだんと1つにまとまっていく樹だ。その進化の最終形態は、小さな赤いトマトだった。




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2019年1月13日

人混み

 道を歩くと混んでいた。人混みだった。家族連れやカップル。聞いたことのない国の言葉。みんなどこへ行くんだろう。1人で歩いているのは僕だけだった。用事があるのも僕だけのようだ。みんなはただ、人混みを歩いているだけ。どこに行って、何をするというわけでもなく。そしてそのうちに僕も、自分の用事を忘れてしまった。自分の言葉を忘れてしまった。




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店番

 もう数時間で世界が終るというときに、僕は小さな食料品店で店番をしている。世界が終る。なんかもう、どうでも良くなって居眠りしてしまった。

 はっと目を覚ますと、世界の終わりまであと数分、というところで、店には中国人の女のコが1人、煙草を買いに来ていた。とっくに売り切れていたが。「やっぱりそうよね‥‥頼まれて買いに来ただけなの」




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2019年1月12日

 いつも起きるのは昼過ぎ。部屋を出て30分ほど南に歩くと、無料で入れる動物園だった。天気のよい昼の間はずっとそこで過ごした。本を読んだり、動物を眺めたり、買ってきたパンを食べたり‥‥。その動物園からさらに南に30分歩くと、旧市街だ。ライトアップされた旧市街は幻想的な美しさで、一晩中歩き回っていても疲れを感じなかった。

 カフェでエスプレッソを飲む金すらなかったが、僕は幸せだった。「ここ」と決めた幾つかの場所で、ホームレスのように路上に腰を下ろし、道行く人々を眺める。女のように見えるのは夜道では危険ではないかと考え、ある日髪を短くした。それでも僕は女に見られてしまうのだ。明け方の新市街を抜け郊外のアパルトマンに戻るまでには、無精髭も伸びていたはずなのに、それでもまだ僕は女だった。




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過去 未来

 過去は、僕が意のままに書き換えることのできる夢だった。自分の思いどおりの夢を見ることができない人も多いのは知っていたけど、それは僕の知ったことではない。ときおり、現在の自分が些かの疑念や、僅かの絶望を感じる度に、僕は過去をより強力なものに変形させ、それらの疑念や、絶望を打ち消していた。僕は、その自由に書き換えられた過去に基づく未来の世界で、王のように暮らしていたのだ。




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死体

 役者志望の若者に演技を教える学校だった。今日は教室を出て、駐車場で、死体の演技をする。そこらで寝てればいいのかなと思っていると、クラスの若い女が体を密着させてきた。「私たちは、血の通った、生き生きとした死体を演じましょう」

 それで僕たちは、生きていたときよりも、もっと生き生きとした死体になって絡み合った。




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占い師

 占いの館で客を待っていたのだが、待っていたのとは違う客が来た。占い師は黒いベールで顔を覆った若い女だった。年齢不詳の雰囲気を出したがっていたけど、若さは隠せない。僕はその占い師の助手。僕たちは顔を見合わせた。準備していたのとは違う客が来たのだ。

 女は戸惑いつつも、いつもの怪しげな儀式を始めたが、客は何やら、自分の話をしたがっているようだ。僕たちは結局、その客の話に耳を傾ける。その客が占い師で、僕たちの未来を占っているような雰囲気になってしまう。




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2019年1月11日

未来人

 未来から来たとかいうその女は過去に繋がる電話を持っていて、僕は1980年代に電話をかけることができた。テキトーな数字をプッシュして、出た相手に、僕は未来からかけている未来人だと力説する。当たり前だが誰も信じようとはしなかった。「当時の実家の番号とか」女は言った。「覚えてないの? 好きだった女の人の番号とか」覚えてるわけがない。

「レーガン大統領と話してみたら?」番号知らないよ。

 話を聞いてくれた男の人が1人だけいた。中年の男性だった。未来人よ、もし生きていたら35年後に会おう。「生きてて、覚えていたらだけど」。電話で待ち合わせの場所を決めた。その場所に女と出かけた。

「あのさ」と女は言った。何? 「まだ気づかないの?」何に? 「私が誰なのか本当にわからないの?」

 雪の中、女と2人で待ちつづける。その男、もう老人になっているだろう男はあらわれない。既に亡くなったのかも知れない。




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中央分離帯

 本屋で栞型のチケットをもらった。ハングルで書いてあって読めないが、何かの講演会らしい。1月18日、特に予定もなし。行ってみようと思い場所を検索してみると、会場はソウル一の繁華街を抜ける幹線道路の中央分離帯である。360°のストリートビューを確認する、激しく車が行き交っている。




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2019年1月10日

顔 手

 君と君の姪がいて、僕は2人の顔を両手で撫でた。目を閉じて手で触れただけで、それぞれを認識できるか、実験だった。

 妹のような姪は、くすぐったがって笑った。




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箱 ハンマーグラヴィア

 水を入れた箱を傾けると音が出る仕組みだった。傾ける角度によって色々な音が出る。僕はその箱に雨の町の歌を歌わせた。誰もいない雨の工事現場、雨の公園。そんな夢だ。気がつくとコンサートホールの待合室だった。

 ☆

 ハンマーグラヴィア・ソナタを歌うときには、君のピアノでさえ、苦しそうに息を継ぎ、そして空には複数の彗星が、てんでバラバラな方向に、行ったり来たり、行ったり来たり、僕はフィクションの中でさえ、そんな光景を見たことがなかった。




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化粧

 君のマムが手招きして僕を呼んだ。マムは言葉が喋れないらしい。連れて行かれた部屋に君がいて、あなたを驚かせるようなことがあると言う。僕はもう充分に驚いていたが、その何倍も驚くと言う。それじゃ今から化粧をして髪を整えるから、見ないで、と君は言い、僕は部屋を追い出された。

 それにも確かに驚いたが、驚くようなことは「これ」ではないのだろう。身支度を終えた君と一緒に、僕は出かけた。それから先の僕の人生は、驚きの連続だった。そのどれが、本命なのだろう、と僕はずっと考えていて気づかなかった。

「私が顔を変えたのに」と何年もしてから君は言ったものだ。「髪型も変えたのに、驚かないの?」




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2019年1月 9日

足たちが挨拶する男

 町を行く僕たちの横に、角度を少しずつずらした金色の鏡がずらっと並んでいて、金色の足が何本も映っている。

 行く先々にも金色の鏡はあり、金色の足たちが僕を出迎えてくれる。

 歩くときほとんど膝を曲げずに踵から着地する。着地した瞬間に、踵を支点にして、つま先がクッ、クッと内側に少し動く。これは僕の癖だ。

 金色の鏡で自分の足と歩き方を再確認しながら、僕は歩く。まるで少女のように細い足。

 足たちが挨拶する男が、足を見て僕を女と間違うのも無理はない、と思う。世の中には足を見て足に話しかけ、足を食事に誘い、足と結婚する男もいるのだから。




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階段(夢)

 使う人はあまりいないが、そのデパートには広くて立派な階段がある。総床面積の1/4くらいがその階段である。

 内装のコンセプトも階段部分とデパート本体とでは異なる。22世紀と20世紀くらいに大きく異なる。元々そこにあった全然別の建物が階段だけを残して取り壊され、デパートにつくり変えられたのではないだろうか、という気さえする。

 デパートにはもちろんエレベーターもエスカレーターもあるけど、僕はできるだけその階段を使うことにしている。

 2本の足と飛行機以外の乗り物には乗るな、というのが僕のモットーである。




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ブロッコリーの茎

 土砂降りの雨の中、待ち合わせの場所まで歩いて行く。傘は持っているができるだけ差して歩きたくない。建物の軒下を通るようにする。

 待ち合わせの正確な時間を覚えていない。たぶん11時だったと思う。念のため10時にその友人の家に行ってみた。友人の家は安くて量の多い食事を出すお店だ。友人のマムがテラス席の客の注文を取っていた。

 マムによるとその友人はまだ部屋で寝ているらしい。やはり来るのが早すぎた。彼女が残り物の野菜を炒めて皿に盛ってくれた。野菜はブロッコリーの茎の部分だ。テラス席の客と一緒に食べた。雨はいつの間にか上がっていた。




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2019年1月 8日

370円

 女性の下着が吊るしてある部屋だった。とにかくすべて黒だった。黒いブラジャー、黒いショーツ、黒いストッキング‥‥

 僕の手のひらには百円玉と五十円玉と十円玉と五円玉。僕はそれで370円を出そうとしていた。




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腕時計

 目が覚めると、枕元に、見覚えのない腕時計が3つ置いてあった。夢で「あなたを驚かせるようなことがある」と言われたのはこれかな、と思った。まぁ確かに驚いた。けどちょっと違うような気もする。それに本当に目覚めてしまえば、時計は消えているんだろう。




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2019年1月 7日

焼きごて

 夢の中では泳げるけど、本当は泳げない。僕は暖かい海で泳いでいた。一緒にいた若い男はタオルと水着を持ってきていた。僕は高級そうな革靴を履いていた。泥だらけの海岸にそれを脱ぎ捨てた。海に来るつもりじゃなかった。

 夜にホテルを抜け出した。もういちど海岸に行き泳ぐつもりだったが、地元の不良グループの抗争に巻き込まれた。僕が囮になり、相手グループのリーダーをおびき寄せる。護身用にと銃の形をした焼きごてを渡された。

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 僕を追いかけて捕えられた敵のリーダーもこの焼きごてを持っていた。この辺りの不良少年はこれで人を脅して悪さをするのだ。




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2019年1月 6日

誕生日の贈りもの

 誕生日には何が欲しいと訊いてくれた人がいた。



 誕生日プレゼントには歌が欲しいと言うと、その人は10年後に僕の背中で歌ってくれた。

 そこは優しいだけの音楽が流れている24時のカフェで、僕は1人で本を読んでいた。音楽が突然終り、「歌」が始まった。



 あれはあの人で、それは僕のものだったんだな、と気づいたのは、それからさらに10年後だ。

 20年前のあの日は、あの人の歌だけでなく、あの人自身の、すべてが、僕のものだったのだ。




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枝カフェ

 フクロウを止まらせた枝を持った男が客引きをしている。枝と自由に触れ合える枝カフェの客引きだ。いい枝が入店してますよ、と僕に囁く。金さえ払えば枝に何をしてもいい、と言う。店を出て連れ回してもいい。何ならその枝にフクロウを止まらせても構わないのだ。



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盗聴器

 工事中の道路を歩いてやっとそのホテルに辿り着いた。学校のように横に長い、3階建ての白い建物だった。エレベーターの前に係の人がいて、扉を開けてくれた。チップをいくら渡せばいいのかわからない。荷物もなかったし、階段を上れば良かったと思う。

 3階の客室に盗聴器を仕掛けようとしている男がいる。どうしてそんなことをするのか訊くと、「支配人に言われたから」。それならばこちらの部屋に仕掛ければいいと思う、と僕は引き出しのある家具が幾つも置かれた部屋を教えてあげた。部屋はまだ掃除中のようだった。




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西郷どん

 顔が水道の蛇口になっている男と、痩せた西郷隆盛が戦った。顔が水道の蛇口になっている男が敗れ、地面に倒れた。西郷が蛇口を足で踏みつけると、水が出てきた。この水は飲めないな、と西郷は思った。

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 そういえば喉が渇いていたのだった。




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2019年1月 5日

グレースーツ

 娘と仲良しの父親は羨ましいなと思って見てしまう。空港に向かうバスにその父娘はいた。小学生くらいの娘は薄着で寒いのだろう、父親のジャケットを肩に羽織っている。

 そのときの自分がグレーのスーツを着ていたのを覚えている。たとえ夢の中であれ僕がスーツを着るのは珍しいので、覚えていたのだろう。




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胃に何か

 胃に何かあって草彅君が緊急入院したという知らせが入ってきた。病院から診断結果が事務所にFAXされてくるというので、元メンバーの3人と僕は、苛々待ちつづけている。




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2019年1月 3日

リーゼント

 野球部やサッカー部の連中に挨拶だけして帰ろうとすると、向こうからリーゼントの男が歩いて来る。部活の同窓会があり広場に集まった。僕が所属していたラグビー部は不良ばっかりだった。大人になった彼らはほぼ全員が刑務所に入っていて、出て来れたのは僕だけだった。と思っていたら違った。もう1人いたのだ。




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人魚

 船内はバレンタイン前のデパ地下にも匹敵する熱気と混雑で‥‥

 甲板に出て船員たちと一緒に夜釣りをしていたら大物がかかった。サメだろう、という。僕の手には余る。釣り上げるのは船員たちに任せて、僕は船の中に引っ込んだ。

 しばらくして戻った。釣り上げられていたのはサメではなかった。太った男の人魚だった。「人魚の肉を食べた人間は不死になると言われているが」と船長が話した。「人間の肉を食べた人魚もまた不死になるんだ」



 この人魚も不死だった。殺しても死なない危険な人食い人魚だ。

 サーカスにでも売り飛ばすか、という話になる。人魚には生の牛肉を与えた。腹を満たしておけば人間を襲うこともないだろう。

 入港に際して税関の査察がある。人魚は船底に隠しておく。



 僕は倉庫の殺鼠剤をチェックするふりをして税関職員の動きを監視していたが、その必要はなかったのだ。誰にも人魚は見つけられないだろう。人魚はもう海に逃げてしまったから。




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2019年1月 2日

リューズ

 数字と赤い日付の入った督促状を持った使いの者が、泣き出しそうな顔で僕のもとにやってくる。「‥‥はもうお済みですよね。あとは‥‥するだけですよね。きっとそうですよね?」

 とんでもない。実はまだ取りかかってもいないのだが、泣かれても困るので、無事終ったということにしておく。

「あぁぁぁぁぁ、良かった」と感極まったお使いの男は言い、自ら4桁の数字となって、時間の海を泳いで、明後日の方へ帰ってしまった。僕は腕時計のリューズがもげそうになるのをガムテープで固定して、何とか誤摩化しながら使いつづけている。

 ボロい腕時計はこのように幸運を呼ぶのだ。




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2019年1月 1日

白霧

 ジーンズの膝のところから発生した白い霧が僕を包む。とても明るくて、何も見えない場所に、僕はいた。




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ふり

 誰かの隣で、ピアノを弾いた。というか、弾くふりをした。ふりで構わない、というのだ。実際、そうすると、音は別のところからやってきて、僕の指に被さっていった。




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北から来た

 僕たちは北から来た。どことなく千葉県ぽい国道の、南なんとかというバス停で、バスを降りようとしている。一緒にいた顔のない3人の男女につづいて、料金を払おうとしているところだ。手のひらには銀貨を4枚と、銅貨が9枚。それを組み合わせれば、正しい料金になるだろう。

 いつかは僕も、自分の顔を必要としない人間になるだろう。顔がなくても、やっていけるようになるだろう、彼らのように。でもそれはまだ先の話だ。




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