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2019年2月28日

取材

 また君のマムが、僕にはさっぱり理解できない言葉で、集まったみんなに、何かを話している。たぶん僕の話で、たぶんいい話なのだが、たぶん褒め過ぎている。そういう過剰なところは、娘と一緒だ。集まったみんなの僕を見る目が、驚きと賞賛と尊敬の色に染まっていく。いや、僕はみなさんの尊敬に値するような人物ではありません、この人ちょっと大袈裟に褒め過ぎてるんです、適当に受け流してください、僕は必死で、テレパシーを送りつづける。



 TVカメラが、僕を取材に来る。この人ほら、友達だから。ああ、あの日本人の。誰かが誰かと、そんな話をしたのだ。インタビューは、日本語で受けた。後で字幕を被せるから、と。僕は君にもらった、新しい右手の話をする。彼女の人柄が偲ばれる個人的なエピソードですね、インタビュアーは、うまくまとめた。




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ET

 右手を新しくして2日目の夜、その人差し指の先から月が出て、またそこに沈むのを見た。映画のETみたいだ。このもらった右手で何ができるのかは、まだよくわからない。

 右手のほくろが、時間帯によって濃くなったり薄くなったりするのも、おもしろい。何かが変わるんだろう。たぶんいい方向に。徐々に慣れていけばいいだろう。




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2019年2月27日

鏡(夢)

 飛行機の窓から覗くと、下は海ではなくて、鏡だった。鏡で覆われていた。青い空を映して輝く。僕たちの乗る飛行機を映して。




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右手

 気づくと、右手がなかった。「手をどうしたの?」と君は訊いた。わからない。

「右手が必要なんじゃないの?」うん、まぁ。

「どうして手がないの? 手はどこへ行ったの? どこかへ出稼ぎに行った?」さぁ、たぶん。

「手に働かせて、本人は遊んでる?」いや、仕事ってわけじゃないと思うけど、わかんない。

 ☆

 という会話があって、数日後、君は白い手袋に包まれた新品の手を持ってあらわれた。

「右手、良かったらどうぞ」え、いいの? ありがとう。

「私もいつも使ってるやつなんだけど、すごくいいよ」ほんとに? てことはこれ、ピアニスト用の右手?

「手を大事にしてね」やー、もったいなくて、使えない。

「何言ってるのよ、これからはあなたも弾くのよ」




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2019年2月25日

プレゼント 鏡

 数日前、コンサートホールで思いがけないプレゼントをもらう夢を見た。何をもらったのかは書かなかった。実際に僕はたくさんのものをもらった。スイートルームにアップグレードしてもらった。別のコンサートのチケットももらった。ゴールドカードで奢ってもらった、ケーキやビール、コーヒー、麺。現金で買うのとはまた違う味がした。食べかけのパンと飲みかけの水をもらった。もちろん全部食べた。そして、確かに思いがけないプレゼントももらった。

 水の上を歩く夢を見た。青い空を映した、鏡のような水面。本当に鏡だったのかも知れない。そのとき靴を履いていたかどうか、僕は覚えていない。




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ティートリー

 ティートリーが香っていた、ホテルの廊下。初日は、シングルルームに泊まった。アメリカンエクスプレスのゴールドカードを持った友人が、僕を迎えに来た。僕がシングルに泊まっていると話すと、彼女はホテルのスタッフを呼んだ。一言か二言話した。そうして僕は、最上階のスイートにアップグレードされたのだ。支払いは、その時点で済んでいた。廊下には、ティートリーが香っていた。

 僕の記憶にあるよりも、やや甘く香るティートリー。ローズウッドがブレンドしてあったのかも知れない。

 その人には、小学生と中学生の息子がいた。夫と子供たちを送り出した後の平日は、ピアノのレッスンを受けたり、家で外国語の勉強をしたり。週末には、クラシックのコンサートに出かける。共通の友人を介して、僕たちは知り合った。

 みんなと平等に接するのは、友情でも愛情でもないと思う。その人は言った。友情は、自分が気に入った人に対して、特別に注がれる愛情のことよ。それから僕に訊いた。嫌いな人と一緒にいなければならないとき、あなたはどうしてる? 僕の周りには、僕の嫌いな人はいないよ、と僕は答えた。周りには、好きな人ばかりだ。

 音楽の後で、ビールを飲みに行った。「今夜はお酒がすいすい入ってくるね」とその人は言った。日本語で。僕はジョッキの半分しか飲めなかったが、彼女は5杯飲んだ。ホテルに戻って、彼女のSNS(レゾウ・ソシアル)を見た。日本人の友達ができた!!と投稿があった。

「彼は自分の好きな人としか一緒にいないの。すごい。それでいいんだ」




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2019年2月24日

ディスタンス

 昨日、夢で階段を下りたら、今日は200段上がる羽目になった。前を歩く女の背中に、「距離」という字がプリントしてあった。深夜の地下鉄、エレベーターは運転を止めていた。地上に近い1つ前の駅で降りて、歩くべきだった。

 スケートリンクで、天才的に上手い少女が、フィギュアの練習をしていた。左回りに周回する子供たち。中央で天才少女。子供たちの背中には、やはり「距離」という文字のプリント。




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2019年2月22日

階段

 その女は、いちども振り返らなかった。後を追って、長い階段を下りた。どこまで下りても、まだ下があった。地下の、いったい何十階なのだろう。追う僕の足音だけが、大きく響いた。




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2019年2月21日

collyre, en sommeil

 目薬の最後の一滴を差そうとしてずっと目を開けていたのに、なかなか液が落ちてこなかった。諦めて目を閉じると、時間が流れ出して溢れた。

 1階のその部屋には、名前のない男が寝ていた。朝が来て、家の外に出るには、その部屋を通らなければならなかった。彼を起こさないように、そっとそおっと部屋の中を歩いた。

 気をつけていたのに、布団の外にはみ出た男の足に触れてしまった。彼はわけのわからない寝言を言ったが、目は覚まさなかった。

 部屋の引き戸を開け、外に出ると明るかった(外は雨だと、家中のみんなが言っていたのに)。僕が戸外で浴びたのは、白い太陽の光だった。




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CDEAB

 ずっと行きたかった場所Aに行く途中で、会いたかった人Bとは別の人Cと偶然会い、僕はその人と一緒に、コンサートホールDへ向かった。

 Dで催された演奏家Eのコンサート。演奏されていたのは、会いたかったBが昔大好きだったのに、弾くのを禁じられていたあの曲だった。

 僕はBに贈るつもりだったプレゼントを、Cに渡した。するとCは、僕がBに言うつもりだった言葉を、その演奏家Eに対して言い、プレゼントを手渡した。

 その後で僕は、場所Aに行った。Bと落ち合い、Cと一緒にDを訪れた話をした。

 あのときはありがとう、とBは僕に言った。あの日あなたが禁を解いてくれたのよね。そして僕はBからの、思いがけないプレゼントを貰った。




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2019年2月20日

パレード 食堂 本屋

 東洋人だが日本人かどうかはわからない。橋の向こうから大勢の人が歩いてくる。パレードを見物に行った帰り午後の人混み。見たことのない景色だが季節は夏。

 食堂で昼食を取ろうとしている。食券を持ってカウンターに並ぶのだが、長蛇の列ができている。最後尾の僕は何も取ることができない。しかたなくそのままテーブルにつき、友人たちと話していると、調理のおじさんがやってきて、まかないのカレーうどんを分けてくれる。

「ほら、どこへ行ってもみんなに愛される(君→僕)」「ありがとうございます(僕→調理のおじさん)」「いや、すまなかったね(おじさん→僕)」

 そこは巨大なデパートだった。中に巨大な本屋さんがあった。僕は1冊の本を手に持って、本棚の元の場所に返そうとするのだが、どこに置いてあった本なのか、もうわからなくなってしまっていた。




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2019年2月18日

電車代

 電車代が安い。町もコンバクトにまとまっていて、移動に便利だ。僕は町中を巡って、親切な友達に会い、夕食を奢ってもらう。ついでに、金も借りた。ホテルに泊まると高いので、誰かのうちのソファで寝た。最悪の場合でも、空港で寝ることはできる。まぁ、どこの国でもやってることだ。そうして1ヶ月ほど過ごし、日本に帰る。

 日本の電車は、あの料金は、ぼったくりとしか思えなくなっていた。




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2019年2月16日

ワークブーツ

 天使があらわれた。天使は、手に天使の人形を持っていた。天使の人形は靴を履いていたのでちょっと驚いた。天使は裸足というイメージがあったからだ。靴をよく見てみると、ワークブーツだったので更に驚いた。僕と同じ、マーチンのワークブーツだった。天使も僕の靴を見て、何か言いたそうだった。




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2019年2月14日

ラッキー・スター(夢)

 魔法使いは、魔法使いではない、というふりをして、僕の前に、笑顔であらわれた。

 黒い服を着た長い髪の魔法使いは、僕の心を読めるが、日本語は解さない。僕は自分に、魔法がかけられていることに気づいた。日本語で気づいたのであって、だから気づいても、気づかないふりをしていられる。

 僕の頭上の、ラッキー・フォーチュン・スターにも、気づかないふりをしていよう。それがいつからあったのかは、わからない。もしかしたら、いや多分、最初からそこにあったのだろう。



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2019年2月13日

半透明の巨人

 ディズニー版の『銀河鉄道の夜』を映画館の大きな画面で観ていた。日本版のアニメでは登場人物が確か猫だったが、ディズニー版では巨人だった。半透明の巨人が幻想的な星の海を旅する話だった。




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2019年2月12日

いぬだまり

 昨日できたいぬだまりには、今日も犬が溜まったままだった。明日もそのままだろう。恐らく春になるまでは。天気はしばらく変わるまい。




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2019年2月10日

外野席

 カメラは野球の試合ではなく、スタジアムの外野席をずっと映していた。修学旅行の高校生の集団が、制服でゲームを観戦していた。彼らが喜んだり、落胆したりする様子で、その試合展開が想像できるのだ。ホームランで逆転され、彼らが応援しているチームは結局負けたらしい。




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書きかけのハガキ

 電車を何本も乗り換えて、僕はその駅に着いた。改札を出ると、開店前のデパートで、売り物は、ガラスケースの中に収められている。そこを抜けて、やっと駅の外に出た。

 道を渡ろうと、なかなか緑にならない信号の前で待っている。本当に、いつまで経っても緑にならない。信号の前には椅子とテーブルが設置してあり、僕はそこに座って待つことにした。

 やっと信号が変わった。道を半分渡ったところで、さっきのテーブル席に鞄を忘れてきたことに気づいた。慌てて戻る。鞄の中身を確認すると、書きかけのハガキがなくなっているではないか。

「おれが代わりに全部書いて投函しておいたよ」とテーブルの向かいに座っていた男が言った。




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2019年2月 9日

新種

 柳に似た木に新種の白菜がなっていたので収穫して食べた。


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2019年2月 7日

ボート

 僕は競艇の選手だった。初めてのレースだった。僕の操るボートがぶっちぎりの1着でゴールした。しかしその後で放送があり、危険な進路妨害で僕は失格になった、と知らされた。僕は引退することにした。




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2019年2月 6日

先延ばし

 パーティはお開きになった。帰ろうとしていると、君と君のマムが来て、少し話がしたいと言う。どこからか、コーヒーが運ばれてきた。僕はテーブルを挟んで、2人と向き合った。

 マムの話を、君が通訳する、という形になった。いつものように、英語とフランス語をごちゃまぜにして。いずれは僕は、自分が完全なフランス語を話すことになると知っていたが、何となくそんなふうにして、その日を先延ばしにする。いつまでも僕らは、すべてを先延ばしにするのだった。




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駅とカップル

 地下鉄の駅と、僕と、若いカップルと、もう一組のカップル、5人と1駅で待ち合わせた。僕は駅とカップルだったが、駅は仕事中で動けないので、その場に残して、僕らは出発した。

 夜遅くまでずっと、駅はその場で、僕らの帰りを待っていた。駅と僕は、2人の間だけで通じるフランス語で、秘密の会話をした。それから、僕は「アドゥマン(また明日)」と言って、地下鉄に乗り家に帰った。




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2019年2月 4日

3割引く

 急に5万ウォン入用になったが、日本円しか持ってなかった。しかも僕の千円札には、「3割引」のシールが貼ってあるではないか。700円分の価値しかない、ということだろうか。すぐに僕は、友達のことを思い出した。前も彼に、2万ウォン借りたことがあった。返すつもりだったけど、返せてない。延滞分の利息として、3割なのかも知れなかった。




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2019年2月 2日

紹介者(夢)

 ベッドは生きている。生きていて、僕のことを好きなので、僕が女の人と一緒に寝ていたりすると、嫉妬する。嫌がらせで女にとんでもない悪夢を見せたりする。可哀想だが、どうしようもない。いつも隣で寝ているこの人は、どんな悪夢を見ているのだろうと思いながら、罪悪感と共に僕も眠りにつくのだ。

 遅い朝に目覚めると、ベッドには僕1人だった。隣の寝室や、廊下や、1階に大勢の人の気配がしたので、慌てて起き出した。そこで気づくと、青かったはずの布団が、真っ黒になって、あちこち破れかけている。寝ている間に、何十年という時間が過ぎてしまったかのようだ。

 1階は、20代前半くらいの若い女のコでいっぱいだった。どういうことなんだろう。歯を磨くためにバスルームに入ると、そこにも女のコが3人いた。リステリンでもぐもぐやっている最中に次々と紹介されるが、僕は動揺していて、彼女たちの名前と顔を覚えられない。もういちど最初からやってくれ、と僕は姿の見えない紹介者に向かって言った。




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大声 小声

 空は晴れていたけど、雨が降ってきた。僕は傘を持っていなかった。汚れたビニール傘が道端に落ちていたので拾って差した。その途端に雨はやんだ。

 近くで大声がした。小声もした。大声と小声が会話をしているのだった。大声が「ボディソープ?」と言い、小声が「シャンプー?」と言った。僕は傘を畳んで、そっと元の場所に落とした。そして急いで、逃げるようにその場を立ち去った。




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2019年2月 1日

返事

 僕は君に問いかけた。君が返事をする前に、時間が来て僕は飛行機に乗った。返事は、飛行機の後を追いかけてきた。降り立った空港で、僕は背中から返事に抱きしめられた。




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霧 理科

 双子がしりとりをしている。「きり」「りか」「きり」「りか」「きり」「りか」。不気味なくらい誰も間違いを指摘しない。




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天使

 僕に初めての子供が生まれた。天使がやって来た、と僕は喜んだ。我が家に天使が来てくれた。僕は天使にキスをした。1分後、その男は死んでいた。魂の抜けたその男の体を、妻と僕は少し離れた場所から見ていた。




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