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2019年4月29日

何か

 

 今の若い人はどうやって音楽を聴くのだろう。CDを買って聴く人はいるのだろうか。僕の音楽の聴き方もこの10年で大きく変わった。CDやレコードを買って部屋のステレオで聴くことはもうなくなってしまった。その代わりにライブに行くようになった。若いクラシックのピアニストを知ったことがきっかけだった。

 

 ピアノにグーパンチを喰らわせたり、頭突きをして音を出す(クラシックの)ピアニストは、僕が10代の頃聴いていたどんなバンドよりも、ずっとパンクでロックでグランジでハードでクレイジーでメタリックで歪んでいて、それでいて端正で美しくて水のように透明で本当に夢中になった。

 

 演奏が始まる前の、あのヒリヒリするするような沈黙を破る、爆発音のようなピアノの音。数十分の演奏の中に、自分が生きてきた数十年という時間を凝縮してぶちまける君に。柔らかい背中に。触れてくる指に。

 

 音楽はCDやレコードのような物質ではなく、流れていく時間を感じられるようにしてくれる非物質の何かだった。ギターやキーボードのような楽器でもなく、楽譜でもなく。何でもない一瞬が永遠のように感じられるときもあるし、その逆ももちろんある。日々が退屈に感じられたり、反対にどうでもいいようなその過去の日々が大切な思い出に感じられたりするのも、音楽のせいなんだろうか。全部その「何か」のせいなんだろうか。

 

 

 

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