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2019年4月12日

無風状態

 

 川沿いの参道には、桜の花びらでつくられた、巨大なピラミッドが並んでいた。そよ風が吹けば、崩れてしまう。そこは、完全な無風状態だった。僕は空気の流れを起こさないよう、できる限りゆっくりと歩いたが、駄目だった。背後には、桜のピラミッドが、音もなく崩れていく気配が‥‥。僕に振り返る勇気はなかった。

 

 それから10年も昔のことを思い出して、彼は笑っていた。どんなにか可笑しい思い出があるのか、聞いてみるとどちらかと言えばそれは悲しい話だった。そうだよ、と彼は言った。いかにも。悲しんでいるのさ、おれは。それの何が可笑しいんだ? お前は何を笑っているのだ?

 

 

 

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