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2019年6月 2日

今にわかるよ

 

 Vous allez voir / Tu va voir (今にわかる・わかるはずさ)と鳴りつづける目覚まし時計を抱えて、大学の広大な敷地の中を歩く。美術大学の美術部に入るなんて、よっぽど絵を描くのが好きなんだね、という会話が聞こえてくる。さらに歩くと校門が見つかる。やっと外に出ることができた。

 

 町は異常な人混み。その雑踏の中、電話ボックスを探して歩いた。写真を撮って、携帯電話の存在が小説やドラマをつまらなくした、という記事に使うつもりなのだ。しかしどこにも見当たらない。

 

 銀色の車体に赤い花の絵が描かれた路面電車。後ろからやってきた。駅ではないところから飛び乗った。人が歩くより、さらにゆっくりと走る電車だ。座席には、ウェデイングドレスを着た花嫁が、花婿とは離れて座っている。白い腕時計に、何度も目をやる。腕時計をした花嫁なんて珍しいな、と僕は思っている。

 

 ノロノロ蛇行する電車を、人々が追い越して行く。僕は車窓をぼんやりと眺めている。母親と手を繋いで歩く女の子と目が合った。ねぇ、どこに行くの? どこまで行くの? 車外から女の子は僕に声をかける。

 

 

 

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コメント

人混みの中、本当に電話ボックスを探す羽目になった(もちろん撮影のためではない)が、実際にはすぐに見つかって良かった。

投稿: ぼく | 2019年6月 9日 18:17

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