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2019年7月29日

最後尾

 

 受付に並んでいるのは20人弱。係の人が淡々と仕事を済ませていく。

 

 戸外は明るい柔らかい日差し。大きな扉の前の机で、女の人がその作業をしている。

 

 受付が終っても扉を開けて中に入る人は誰もいない。みんな受け取った書類を鞄に入れ、そのままそこに留まり、雑談しているだけ。

 

 1人で並んでいるのは僕だけだ。雑談する相手がいない。僕は列の最後尾にいる。

 

 

 

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2019年7月28日

壁紙 雨宿り 2階建てバス

 

 家の壁紙を張り替え中だった。昨日はリビング。今日は2階の寝室。今夜はどの部屋で寝ればいいだろう?

 

 という夢を見て長い旅行から帰って来ると、僕の住むビルは大々的な改装工事中で。部屋に入れそうにない。「‥‥さんたちは近くのホテルに泊まっているよ」ちょうど通りかかった他の階の住人が、教えてくれた。

 

 僕たち、その住人の男性とそのガールフレンドと僕、は歩いてホテルに向かった。突然激しい雨が降ってきたので、僕は傘を差した。「あんたは傘持ってないの?」と女性は男に訊いた。

 

 彼女たちは喫茶店で雨宿りすることに決めたようだ。僕も歩くのはやめた。あまりにも雨が強いので、タクシーを拾うことにした。みんなが泊まっているという近くのホテルではなく、中心街のホテルに向かうよう、運転手に言った。

 

 映画の撮影のセットのような書き割りの町を行く。

 

 そんな夢を見た。バス停で大勢の人とバスを待っている。やって来たのは赤い2階建てバスだった。ロンドンを走っているやつだ。初めて乗る。僕は興奮して乗り込んだ。それでどこへ行くつもりだったのか、‥‥忘れてしまった。

 

 

 

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素晴らしいスーパー

 

 そのスーパーに入ると女子店員が待ち構えていて僕の頭をマッサージしてくれた。そのあとブラシで髪を整えてくれる。さっぱりとした気分で気持ちよく買い物ができた。

 

 

 

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2019年7月27日

21(夢)

 

 枕元のメモによると、僕はホステスとブラックジャックをやったらしい。僕がホステスだったのか? まったく覚えていないが、ホステスが連戦連勝だったらしい。

 

 

 

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2019年7月24日

ヨン様

 

 キリンのように首の長い犬(もしくは鳥)がベッドに入って来て、布団の代わりになってくれる。「お前の仲間は脱走したんだろ?」と訊いてみた。「飛んで逃げたんだろ?」そのふさふさした黒い毛を撫でながら。

 

 次の場面では僕はヨン様のようにハンサムな友人と町を歩いているところ。あの首の長い不思議な動物のイラストが描かれたTシャツを見つけて購入する。「何の絵ですか?」ヨン様は日本語で訊ねる。

 

 

 

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2019年7月21日

虚構の自分

 

「虚構の自分」と題された作文が見つかり、僕はそれを読んでいる。縦書きの原稿用紙に、若い女性が書いた罪の告白もの(?)だ。私が今までやってきたことはすべて「虚構の自分」がしたことで、本来の私の意志とは異なる、というのだった。

 

 確かに自分の意志ではなかった。けれど「虚構の自分」がすることを面白がっている私もいた。そのうちに私は「虚構の自分」のファンになっていた。

 

 あなたを好きになった。私が好きになったのではない。「虚構の自分」が好きになったのだ。あなたには何の興味もなかったが、「虚構の自分」の一挙一動を追いかけている内に、自然とあなたが好きになった。でもあなたが好きになってくれたのは、私ではなく、私の中の「虚構の自分」だっだ

 

 あなたの愛を独り占めしたくて、私は「虚構の自分」を殺した。そうして私自身が虚構になった。しかし虚構の存在と化した私を愛してくれるあなたはいなかった。「あなた」もまた「虚構」だったのだ。

 

 階段を上がる私も虚構。下りるあなたも虚構。私たちは踊り場ですれ違うことすらない。

 

 

 

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2019年7月20日

古民家

 

 僕は大きな家の2階の寝室で寝ていた。つくりは日本の古民家のような家だったが、部屋にはベッドが入っていた。トイレに行きたくなって目を覚ました。

 

 襖は開いていて、隣の部屋が見えた。廊下を歩いて行く。幾つもの和室がある。和室にはベッドが入っていて、ベッドには知らない人が寝ている。

 

 一階のバスルームに行く。ここは洋風だ。バスルームの電気を点けようとして、スイッチに触れると、家中が明るくなってしまう。

 

 

 

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オーパーツ

 

 バスは定められた経路を外れて町の中心部を大きく迂回している。そのわけがわかった。万引き犯を捕えるため、非常線が張られているのだ。なんて大袈裟な‥‥

 

「犯人が盗んだのは」とそのハンサムな男は言う。「まだ発売前のOSだ。千年後の人類が遺跡から掘り出したら、オーパーツに認定するだろうと言われている画期的なOSだ」

 

「あれを使えば、人類の未来を変えられる」と男は言う。「すごい」と僕。「でもそんなの、普通の人には使いこなせないと思う」

 

 日差しが強い。僕は帽子をかぶっている。

 

 僕たちは取材のヘリに乗せてもらい、大捕り物の現場を上空から眺めた。パトカーにしてはやけにカラフルな車が、何百台も見える。

 

 町の中心でヘリから降り、泊まっているホテルに戻った。僕たちはゲイのカップルで、あるコマーシャル・フィルムに出演することになっていた。キスシーンもある、そんなものをお茶の間に流していいのだろうか。

 

 不安になる僕に、「時代は変わったのさ」とその相手役の男は言う。「さぁここでリハーサルをしよう」。僕たちは高級食料品店の看板の前でキスをした。

 

 

 

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2019年7月19日

英語の歌

 

 紫色の花を持った小さな女の子が、英語の歌(シャンソン・ダングレ)を歌っている。女の子は僕の娘で、僕は自分の未来の夢を見ているのだ。あるいは僕が見ているのは過去で、女の子はもしかしたら君なのかも知れない。僕は子供の頃の君に、いつから英語を習っているのかと訊いてみた。岸辺に自生するラベンダーを指差し、あの紫色の花がそうなのか、訊いてみるのだった。

 

 

 

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2019年7月17日

むらさき

 

 僕は靴を履いたままベッドで寝ていた。目を覚ますともう昼で、黒だと思っていたそのブーツを太陽の光で見ると、紫色だった。通販で買ったんだっけ。キラキラと輝いている。

 

 

 

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パスタ茹で過ぎ

 

 バスタブの脇にある調理場で、パスタを茹でていると、バスタブの中に枕と布団が置いてあるのに気づいた。誰が置いたのだろう。2階のベッドに返しに行く。戻って来ると、バスタブに花束がある。見覚えのある花束が。そうこうしている内に、パスタが茹で過ぎになってしまう。

 

 

 

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2019年7月16日

おどろき

 

 すごーい、おどろきー、と言いながら、君は客席の階段を上っていくけど、本当に驚いているのは周囲の観客の方で、さっきまでコンチェルトを弾いていたピアニストが、いつの間にかタンクトップに着替えて客席にいて、男友達(=僕)と腕を組んで歩いているのだ。

 

 観客の中に昔の同級生を見つけた君の挨拶の言葉もまた、おどろきー。おどろきー。楽屋に届けられた花束を、「これ、いる?」と僕に手渡す。僕はいるとも、いらないとも答えない。ただ心の中で小さく「おどろきー」と言う。その赤い花は僕の部屋に飾られることになった。

 

 

 

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陸上競技

 

 陸上の100mと200mと110m障害と400mのレースが同時に行われる。400mの走者が100mよりも早くゴールする珍事。

 

 

 

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2019年7月15日

帰り道

 

 同性愛のカップル。帰り道、車の中。助手席の女性が、実は自分は男と結婚しているのだと告白する。無表情の月が突然その明るさを増して、夜の町は真っ白になる。

 

 

 

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2019年7月14日

キタダヒカル

 

 その夢の中で、僕は「北」もしくは「北田」と呼ばれている。北田さんは人気者だった。こじゃれたお店のカウンターで飲み物を注文する僕に、「ハーイ、キタ」と声がかけられる。

 

 着飾った男女が、「キタ」「キタダっ」と声をかけていく。

 

 

 

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2019年7月13日

客席のピアニスト

 

 1曲目のプロコのコンチェルトを弾き終えると、君は楽屋で普段着に着替えて、客席で寝ていた僕の隣にやってきた。

 

 そして叩き起きした、僕を。「寝てた?」いや‥‥起きてる。

 

「嘘つき。髪伸ばしたのね、イケメンだわ」そっちこそ嘘つきだろ?

 

「ジャケットも素敵」それよりどこから入って来た? 

 

 2曲目のシンフォニーはろくに聴いてなかった。君が横に来なかったらそのまま寝てた。だからどのみちオーケストラの演奏など聴いてなかったはずだが。そしてコンサートが終る。

 

 客席にいる君に気づいたファンが、僕たちの周りに集まって来て口々に、

 

「え?」「あれっ?」「ピアニスト?」「嘘?」「あのピアニストの?」「本当に?」「さっきまで弾いてたピアニスト?」「いつからいるの?」

 

 と、言う。君は写真撮影とサインに応じる。ピースとスマイルで。実際はこうなったのだ。

 

 

 

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2019年7月12日

ハイペリオン 美容師見習い いいえで答える 冷蔵庫の中

 

 僕は広い家に住んでいた。使ってない部屋を賃貸に回したらどうだ、とアドバイスを受け、そのとおりにした。太って背の高い引き蘢りの青年が、2階に下宿することになった。僕の部屋に『ハイペリオンの没落』を借りに来た。前に貸した『ハイペリオン』がよほど気に入ったのだろう。

 

 1階に間借りしているのは美容師見習いの女のコとその母親。店に来た客と何かトラブルになったらしい。スーツを着たサラリーマン風の男が僕の部屋にやって来て言った。「僕にハガキが来てなかったかい?」

 

「ああ、あれなら代わりに返事を出しておいたよ。質問には全部いいえで答えておけばいいっていう、例のやつだろ?」

 

 1階のキッチンの、共用の冷蔵庫の中、あとで食べようと思っていたケーキが、半分以上なくなっている。

 

 

 

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脱出

 

 僕たちは2人組の泥棒で、盗んだ宝石を持って逃げ出すところだった。追っ手が迫る。重い扉を開け、僕は建物の外へ出た。

 

 そうすると突然、視点が、逃げ後れていた相棒に切り替わった。逃げ道がわからなくなっていた相棒(=僕)も、さっき僕が通ったのと同じ経路で扉まで辿り着き、建物の外へ逃げ出した。「助かったよ」と相棒は僕に言った。

 

 

 

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じもピー

 

 駅で外人の観光客が、下手くそなフランス語で僕に道を訊ねた。「‥‥に行くにはこの電車でいいですか?」僕を地元の人だと思ったらしい。が僕も同じくらい下手くそなフランス語で答えるので、少し不安になったのだろう、彼はまた別の人に同じ質問をしていた。けれどその人もまた、さらに下手くそなフランス語で返事をするのだ。

 

 大丈夫だという意味で、僕はその外人さんに向け親指を立ててみせた。

 

 

 

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2019年7月11日

サイコロカット

 

 サイコロカットされたオラウータンが床に散らばっているリムジンの中で、電話が鳴り出した。携帯電話ではなく備え付けの古風な自動車電話だ。僕たちは顔を見合わせた。

 

 

 

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2019年7月 8日

バス 鉄道 船

 

 バスが発車しようとしている。ぎりぎりで乗り込んだ。空いた席はなく吊り革に掴まって立った。立っているのは僕1人。乗客全員の視線を感じた。なんで? 僕は何かそんなに間違ったことをしているのだろうか?

 

 終点の港でバスを降りた。いつの間にか僕はバスの乗客全員を引率するツアーガイドのようなことをしていた。鉄道の駅の前の広場で、ブランドものの浴衣が売られている。そこにみんなを連れて行った。

 

 突然変な老女があらわれ、娘と結婚しろ、と言って僕の首を絞めた。本気でやっているわけではなくて、彼女にしてみればそれはただの挨拶なのだが。僕は「嫌ですよ」と冷たく答えて、駅のホームに向かった。

 

 そうすると鉄道の駅から、船が出航するところだった。

 

 

 

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2019年7月 7日

裸足で散歩

 

 町は大きな自然災害のあとのようで、建物はあちこちで崩壊していた。散策の途中で靴を脱ぎ、僕は裸足で未舗装の道路を歩いた。土の上を裸足で歩くのは久しぶりで気持ちが良かった。

 

 空中に黒いペンで絵が描いてあった。それを見ると崩壊する前の建物がどんなだったかわかる。復興を願って誰かが描いたのだろう。素晴らしいアートだった。

 

 建物の脇を、小川が流れていた。でもよく見たら違った。地下水が涌き出しているのだった。ユーカリの木が花をつけている。枝が何本か折れているが、木はまだ生きている。

 

 ユーカリの花を見るのは初めてだった。そばで手に触れてみたくて、湧き水を含んで柔らかくなった土の上を歩いて行った。

 

 

 

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2019年7月 6日

カボチャ料理の作り方

 

 見回してみればそこは混雑するデパ地下のようなところで、いつの間にか僕はカボチャを手に持った、哀れな迷える買い物客だった。その料理(上手く発音できない)の名を口にする度に、周囲の人々の失笑を買う。

 

 見知らぬおばさんがカボチャ持参であらわれて、僕に何とかというカボチャ料理の作り方を訊ねる。僕のカボチャ好きを知っての質問だろうか? でもそんな料理を僕は聞いたことがない。

 

 わからない、と僕は答えた。しかしそのおばさんは立ち去ろうとせず、一緒にいた息子らしき男の子に、この人は不親切な人だと話している。僕は拡声器を手に取り、「この中に‥‥(上手く発音できない)の作り方を知っている人はいませんか?」と呼びかけてみた。

 

 

 

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2019年7月 5日

文庫本

 

 昔の友人が本を出していたことがわかる。ペンネームで書いていたので今まで気づかなかった。でも確かにその人の作品だ。それはカナダとアメリカ、イタリアを数年かけて旅した体験を記した、やや感傷的な旅行記であり、宇宙船や光線銃が登場する古典的なSF小説でもある。文庫本で400頁ほどの長編だ。

 

 作者はこのヴォネガット的な小説1作だけを残して引退した。今はもう書いていないようだ。旅行記にあたる第一章と最終章を再読してみて気づいたが、それは僕に向けたメッセージでもあった。語り手である主人公が語りかけている相手は、僕だった。最初に読んだとき、なぜ気づかなかったのだろう。

 

 

 

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2019年7月 1日

口笛

 

 音楽コンクールの会場に向かっていた。途中、妙に柔らかい橋を渡った。体重を乗せるとぐにゃぐにゃになってしまう橋で、不安のあまり僕は口笛を吹いた。それはコンクールで演奏するはずの曲だった。審査員がそれを聴き、僕の書類にチェックを入れ籠の中に落とす。

 

 

 

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ドラマー

 

 小さなライブハウス。観客は20人くらい。ステージ脇の壁に、僕が描いた抽象画が掛けてある。僕の名前が、ひらがなでサインしてあるのを見て思い出した。それは小学生のころに描いた絵だ。

 

 コーネリアスが演奏すると聞いてやってきたのだが、ライブではなく、ただビデオを上映するだけだった。曲の途中で喧嘩が始まったのを機に、僕は会場を後にした。

 

 その隣で、知り合いのバンドのライブが行われていた。フィードバックしたサウンドに、金属的な女声のボーカル。女は黒い下着姿で歌っている。僕の知り合いはドラムを叩いている。コーネリアスより良かったよ、と演奏の後で声をかけた。

 

 ありがとうございます。実はあの喧嘩はこちらの会場に人を呼び込むための演出だったんです、とドラマーは言った。

 

 

 

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お釣り

 

 いつか来たことがある駅。見知らぬ年配の女性と一緒にいた。駅ナカの商業スペースを抜けて歩く。僕たちは空港に向かう連絡バスに乗るのだ。女性のペースに合わせて、僕は普段よりゆっくりと歩いた。本当はもっと早く行きたかったが、仕方ない。

 

 駅前のロータリーに出た。バスに乗るために小銭をつくっておきたくて、駅前をぐるっと巡り、食料品店でガムを買おうと思ったが、売っていない。諦めて乗り場に戻ると、そこにはバスではなく、飛行機が駐機していた。

 

 タラップの下には、長蛇の列。車椅子の客が先に乗り込むようだ。係員が搭乗券を販売している。大人1枚、片道でいくらですか? 千円札を出して訊くと、すみませんがこの計算機では片道の値段が計算できないんです、と係の人は答えた。往復で買うしかなさそうだが、それでもお釣りはもらえそうにない。

 

 

 

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手の夢

 

 1つの単語が、別の単語と意外な形で結びつき、思いがけない意味になるのを辞書片手に見ていた僕の背中の、肩のあたりには手が置かれていた。寝るときまで、手は僕と一緒だった。手の夢を見たような気がする。

 

 

 

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