気配たち
半開きになった扉の向こう。部屋に、誰か人のいる気配がした。声や、足音や、何かに体がぶつかる音がした。
僕は、その部屋の外の、階段の脇のテーブルで簡単な朝食を取っていたが、すぐに食べ終わってしまった。
物音はしているのに、その部屋の主は、結局姿を見せなかった。じきに物音もしなくなり、気配も消えた。僕の食事の様子を眺めていた、女の姿も見えなくなった。
湿気と、木の匂い。「もう行かなきゃ」と僕は消えてしまった気配たちに言った。
そしてアパルトマンの自分の部屋へ、荷物を取りに戻った。明るい冬の朝だった。
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