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2019年10月14日

殺人者

 

 上で「今からお前を殺す」という声がした。「ここでお前を殺す」と。僕は慌てて階段を駆け上がり、君のところへ向かおうとした。

 

 しかしその白い石でできた階段を1つ上がると、僕は1つ歳を取ってしまうのだ。段は50近くあった。生きて君の元に辿り着くのは、不可能に思えた。

 

 半分上がったところで、足腰が立たなくなったが、僕は這いつくばって、何とか残りの段を上がりきった。

 

 そうすると、景色はすっかり変わっていた。僕の体の外側でも、実際に50年が流れたみたいだった。建物は柱だけになっていた。天井は崩れていた。空からは小雨が降っていた。

 

 君は玉座で、僕を見ていた。50年前の殺人者がどうなったのかは知らない。杖を頼りに僕は近くまで歩いて行った。

 

「ここはどこなんだろう?」と僕は英語で訊いた。「今はいつなんだろう?」

 

 それには答えず君は僕の腕を取った。そして僕を雨の夜の中へ導いた。君と僕にはまだどこか行くところがあるみたいだった。

 

 

 

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コメント

 玉座がどこにあるのかわかった。夢で見たのと同じ階段を50段上った。

 町を見下ろすコンサートホール、女王の服を着た君、肩にダウンジャケットを羽織って、高齢の母親とその友人たちに囲まれている。

 駐車場の車で帰るという。あなたはどうするの? ホテルまで送っていこうか? タクシーを呼ぶ? いや、ホテルはすぐ近くだから、歩いて帰るよ。わかった。

 目で「またね」と言って、階段を下りようとすると、君は駆け寄って来て、僕の手を取った。母親の年配の友人たちを振り返り、韓国語で何か話した。

「何て言ったの? 僕のこと?」

 それには答えず、「じゃまたね」と耳打ちして、君は玉座に戻った。僕も「またね(アビアントゥ)」とみんなに手を振った。

 すると驚いたことに、全員がフランス語でまたねと応えるのだ。これは実話だ。僕は目を丸くした‥‥君は笑う。(2020年1月17日夜)

投稿: ぼく | 2020年1月20日 12:35

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