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2019年12月31日

意見広告

 

 SUV車を買うつもりだ。BMW、トヨタ、幾つか候補がある。スマホで比較検討しながら、雨の町を、タクシーで、1人、移動していた。

 

 車が、大きな看板の下を過ぎた。この国でオープンカーの屋根を開けて走ることができる晴れの日は、400日の内たった3日だけだと書いてある。それなのにあなたは買うのですか?

 

「オープンカーを? ‥‥何の話?」

 

 

 

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2019年12月30日

疲れ

 

 気温と人口密度が低い、外国の町だ。僕は子供だった。子供の頃僕は疲れなかった。車道を走って横断する。走るのは車道だからではない。移動は常に全力疾走だ。どれだけ走っても、全然疲れなかった。

 

 

 

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2019年12月29日

形見分け

 

 駅前で瀕死の男に出会った。もうすぐ死ぬという。靴でもコートでも時計でも何でも、欲しいものがあったらやるという。茶の革のブーツが良かったので、試着させてもらった。サイズは24.5cmだというが、ぴったりだ。

 

 お礼を言おうとすると男は死んでいた。

 

 急いで語学学校に行かなければならなかった。教室は駅に停車した電車の中だ。駅員に学生証を見せて改札を抜け、ホームを走った。発車のベルが鳴る‥‥。

 

 

 

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2019年12月28日

宿題

 

 ちょっとお行儀が悪かったけど、食事中のテーブルを跨いで乗り越え、その向こうの窓を開けて、ベタンダに出た。ハーブが生い茂っている。隣の家の子が、そこに机を出して宿題をしていた。

 

 

 

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 着替えをしようと思ったが、その部屋には人がいる。でも気にしないでいいよと言われる。その人は耳が聞こえないから。着替えても大丈夫。

 

 兎や鼠や、象の耳をした小さな人間の子供たちが、はしゃぎ回っている。人間たちにぶつからないように、気をつけて歩いていく。

 

 

 

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2019年12月27日

終着駅病

 

 老婆が言った。私はターミナル病なの。ターミナル病。死に至る、不治の病だ。僕たちは言葉もない。各々「お気の毒です」という表情をつくって、それを順に老婆に見せる。

 

 

 

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2019年12月26日

本を返す

 

 誰か偉い人が来るとかで、みんな起立した。パラパラと拍手が起きた。僕はスーツの上に、黒っぽいコートを着たままだった。偉いのは誰なのか知らない。どこに来るのかも知らない。もう来ているのかも知れなかったが、僕たちはそのまま、立ったままで雑談をつづけた。

 

 赤ん坊がいたので、笑わせようとした。

 

 すると以前に、僕に占いの本を借りたままだった、という女の人が、すっと隣に来た。本を返しに来たよ、という。

 

 

 

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2019年12月24日

formidable

 

 私の大好きな、私の自慢のあなた。君は言う。誰に自慢するの、と僕は訊いた。会う人みんなに、と君は答える。あなたは formidable だって言うの。フォホミダブル。僕は何度もなんども辞書を引く。その度に formidable には新しい意味が付け加えられていく。

 

 

 

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コインロッカー駅

 

 電車に乗っていて、わからなかった。いつの間に雨が降り出したのだろう。乗り込んできた男の傘が濡れていた。そいつの傘で、僕の足も濡れてしまった。

 

「ポーシャン・アレ、ガール・コインロッカー、ガール・コインロッカー(次はコインロッカー駅、コインロッカー駅)」僕はやや気分を害したまま、そのコインロッカー駅で降りた。が雨など降ってなかったし、コインロッカーもなかった。

 

 

 

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2019年12月23日

青い空気

 

 その惑星の空気には、青く色がついていた。乾燥した砂漠の古い町だったが、そのおかげで水の中にいるように感じられた。

 

 宇宙船から、降下した探索挺。男はその青のせいで寒いと感じた。女は反対に暑いと言って、冷蔵庫の中に手を突っ込んだ。

 

 

 

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ジョイ

 

 僕はトレイシーの声で「ジョイ」を歌う。僕は自分の声が別の人の声になっているのに気づかなかった。自分で歌っているのに自分が歌っていると気がつかなかった。どこにスピーカーがあって、どこからこの歌が流れてくるんだろう、と不思議に思っていた。

 

 トレイシー・ソーンは真っすぐに僕を見つめている。「いい歌ね」と僕の声で言った。それからトレイシーは僕の声でもういちど最初から「ジョイ」を歌った。すると歌詞が少し変わった‥‥。僕はほんの少しの間目を伏せたが、その間も彼女はこちらを見つめていた。

 

 

 

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2019年12月22日

メニュー

 

 レストランに行くと君は先に来て待っていて、君はメニューには載っていない料理を、店のシェフに直接注文したようだった。

 

 テーブルについた僕はとりあえず店の人を呼んだ、店の人は丁寧にメニューの説明をしてくれたが、その仏語を僕は半分も理解できず、逐一‥‥君に英語で解説してもらった。

 

 

 

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未来

 

 ものすごいスピードで未来がやってくる。その「未来」もあっという間に過去になる。時速300キロで高速道路を疾走する夢を見た。僕はリラックスして運転席に座っている。ほぼ自動運転なので大してやることもないのだ。道路は片側6車線ほどある。車は流線型で、風切り音もなく、ほとんど揺れない。移動の感覚はない。ただ景色だけが変わっていく。

 

 

 

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2019年12月20日

棒アイス

 

 世界は君を誇りに思っている、という褒めレターが効いた。破壊的なくらい調和的だ。君の奏でる音はこの世のすべてと美しいハーモニーを、どうたらこうたら。それが効いたらしい。早めのクリスマスプレゼントをもらった。新春コンサートのチケットだ。

 

「ベートーベン好きとか、言ってたよね?」「すごい、交響曲第7番」「これなら寝ないでしょ」「大好きな曲なんだ」 という会話があった次の日、こんな夢を見た。

 

 ‥‥

 

 身長8メートル、巨神兵サイズの女児が、棒アイスを僕に渡そうとする。棒アイスも巨大だ。正直欲しくないが、断り方を間違えたら、泣いて暴れて、町を破壊されそうなので、慎重にいかなければならない。

 

 

 

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2019年12月19日

たむろする人たち

 

 忙しいのが嫌い。怠けているのが好き。集まったメンバーは皆ずいぶんと若い格好をしていたが、リーゼントには目立つ白髪があった。

 

 

 

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危険なエスカレーター

 

 デパートに来ているときに携帯電話が鳴った。人と会う約束があった。彼らも同じデパートに来ているというので、8階のバルコニーで落ち合うことにした。

 

 その階まで上がるエスカレーターは、とても狭かった。幅が50cmほどしかなかった。フロアは吹き抜けになっていて、足を踏み外せば1階まで落ちてしまう‥‥。言われなくても手すりにしっかりと掴まって1列で乗るしかなかった。

 

 

 

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2019年12月17日

放課後

 

 その日の授業が終った。僕は教室を出て、右足だけで階段を下りた。ケンケンケンと、3段抜かしで飛び跳ねていった。僕には左足がなかったのかも知れない。‥‥ よく覚えていない。

 

 校舎を出ると、そこは空港の出発ロビーだった。飛行機に乗り遅れた、という女の人が取り乱していた。空港の職員が何か話しかけていたが、言葉がわからないようだった‥‥ 。職員の制止を振り切り、その女の人は滑走路に飛び出した。そして空を見上げながらどこかへ駆けていった。

 

 ‥‥授業が終った。その後に清掃の時間になった。僕ともう1人の男子生徒は、狭い放送室の担当だった。掃除はすぐに終わり、その男子生徒は先生のところへ終了の報告に行った。僕も「終ったら各自下校してください」と放送して、帰る準備を始めた。

 

 僕たちはベランダから外に出た。そこは懐かしの渋谷のように見える繁華街だった。彼は映画を観ると言い、どこかのビルの中に消えていった。ふと気づくと、路上には僕1人だった。誰もが屋内にいる‥‥ 。繁華街は2倍の広さに感じられた。

 

 

 

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褒めレター

 

 またラブレターを書いて、送った。内容は愛の言葉というより、褒め言葉だった。ここを褒めれば喜ぶんじゃないかな、というところを褒めて褒めて褒めまくる。それが上手くツボにハマれば返事が来る。完璧な褒め言葉だわ、と君も僕を褒めてくれる。

 

 世界にここまで日常的に私を褒めてくれる人はいない、と君は言うが、その言葉だけでは、僕は愛されているのか、ただ単に感謝されているだけなのかわからない。でも君にはわかるのだ。自分は褒められているのか。それとも愛されているのか。そもそもその2つを分けて考える必要はあるのか。

 

 僕には決してわからないその違いが。

 

 君を一生褒めつづけたい、という言葉で僕は、プロポーズした。永遠の愛を僕は誓えない。永遠の褒め言葉なら約束できる。一生の間、毎日欠かさず君を褒める。君は真顔で答えた。私もあなたに永遠に褒められたい。

 

 僕はわからない。僕は愛しているのか。それとも褒めているのか。そもそもその2つを分けて考える必要はあるのか。ただ1つだけわかることがある。誰かを永遠に愛しつづけるのは難しい。しかし君を永遠に褒めつづけることはできるのだ。僕ならば、ごく簡単に。

 

 

 

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2019年12月15日

めはくちほどにものをいい

 

 僕はいつものように、表の木のところに歯ブラシを置いていた。

 

 今朝取りに行くと、昨日の雨で木も歯ブラシも流されていた。

 

 僕は手ぶらで洗面所まで戻り、歯ブラシが雨で「流れちゃったんだ」と伝えた。

 

 女房は何も答えなかった。キチガイを見るような目で、僕をちらっと見ただけだった。

 

 

 

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バスタブの付き人

 

 バスタブが2つあった。1つには僕が、もう1つには新米の女のコがついた。

 

「もう少し熱くしてくれ」と僕のバスタブに浸かった男が言った。僕は時計回りにバスタブを半周した。「うん、これでいい‥‥」

 

「もっとぬるいのがいいの」と新米の担当するバスタブに浸かった女が言う。「冷ますことはできないんです」と新米は答えた。「どうして? 反時計回りすればいいんじゃないの?」

 

「無理です‥‥」「あんたじゃ話にならないわ。あっちのベテランを呼んで」

 

 というわけで僕が呼ばれた。しかし無理なものは無理なのだ。僕たちは2人でバスタブを何周もした。湯は完全に沸騰し、蒸発した。

 

 

 

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診療報酬

 

 僕は病院に呼ばれた。「いつものやつをやってくれ‥‥ 」医者は言う。そこには昏睡状態の患者が寝ていた。「何周まわればいいのかな?」

 

 僕は時間を進めることができた。ベッドの周りを1周、それで1日だ。30周、1ヶ月だ。患者はまだ目を覚まさない。

 

 ベッドの周りを、365周した。患者の時間は1年進んだ。それでも目覚めなかった。

 

 医者はもう諦めるといい、家族も同意した。生命維持装置が外された。‥‥こういう場合、僕は報酬を請求できない。

 

 

 

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2019年12月14日

ザード

 

 僕はアスファルトに咲く花だ、とどこかで聞いたようなことを君に言い、

 

 目の前のお花畑ではなく、あえてアスファルトの割れ目に種を蒔いた。種は芽吹いて、淡いピンク色の花が咲いた。

 

 花の季節が終って、お花畑が更地になってしまった後でも、アスファルトに咲く花は、ひっそりと咲きつづけた。

 

 更地には病院が建てられた。僕の友達がそこに入院して、退院した。その間も花は咲いていた。

 

 

 

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2019年12月13日

アウトドア・シューズ

 

 夢を見ているときの僕はいったい何歳の何様のつもりなんだろう。いつも昼まで寝ている。そして働いたこともない。今日は大運動会だ。僕も大50m走に出なければならない。だから早起きした。でもクツがない。スニーカーは底に穴が開いてしまった。それで捨ててしまった。

 

 

 

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電話係

 

 仲間と身代金目的の誘拐をする。誘拐する係、電話する係、身代金を受け取る係、3班に別れる。

 

 僕はいちばん楽な電話係。

 

 電話係だけで予行演習をする。だがセリフが書かれた台本がみつからない。隣の部屋へ探しにいくと、仲間の1人がヘッドホンで音楽を聴きながら、踊り狂っている。

 

 それで踊り狂う係は楽しそうだな、と‥‥。

 

 何を聴いてるの? 彼女は答えてくれない。

 

 

 

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2019年12月12日

コースター

 

 起きてみると僕に手紙が来ていた。そして女房の機嫌が異常に悪かった。何があったのかはわからない。僕宛ての手紙と関係があるのかないのか‥‥。

 

 安全策をとって僕はその手紙を開封しなかった。存在しないものとして扱うことにした。すると手紙はコースターの代わりになった。くしゃくしゃにした手紙を円形に整え、女房はその上にコップを乗せていた。僕はそれにもまったく気づかないふりをつづけた。

 

 

 

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白い光

 

 夜、暗い部屋で寝ていると、白い光が僕を照らした。パトラッシュとネロが死んだときみたいな光だ。ジョーがリングで灰になったときみたいな光だ。僕は、そのまま寝ているふりをつづけた。

 

 

 

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STRAIGHT DEATH

 

 5cmくらいのコウノトリが手のひらに僕の赤ん坊を運んできた。赤ん坊は2cmくらい。かわいい男の子だ。

 

 5cmくらいのコウノトリが僕の手のひらにクチバシでメッセージを書き始めた。STRAIGHT DEATH と読める。どういう意味だ? と問いただしたが、コウノトリは何も答えず飛び去ってしまった。

 

 

 

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ミイラ男の指

 

 私は女子バレーの日本代表メンバーだった。身長160cm、セッター。エジプトで開催の世界大会に参加している。監督や、チームの長身のみんなと歩いて試合会場に向かう途中で、おもしろそうな古代の遺跡を見つけた。

 

 遺跡の発掘現場だった。実際に目にするのは初めてだ。バラバラになったミイラ男が冷蔵庫に保管してあった。ミイラの手や足の指が何本か、そのへんの地面から生えている。乾燥した千年前の死体の指にそれほどの怖さは感じられなかったが、他のみんなはグロいと言いその場から逃げていった。

 

 

 

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リングネーム

 

 会場にはリングが設置してあった。ボクシングかプロレスの試合が行われるらしい。観客はマンガのキャラクターだった。(現実の)人間ではなく、絵に描かれたキャラクターのようなのだ。

 

 その内の1人が自分の顔を鋏で切り裂いた。やはりその顔は紙に描かれたものだったのだ。その中から生身の人間が姿をあらわし、リングに向かって僕の名を叫んだ。

 

 

 

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幼稚園の先生 セーラー服 KKK 北海道 九州

 

 その幼稚園バスには屋根がなかった。園児たちとお姉さんの様子が2階の僕の部屋から見えた。何となく眺めていると、その幼稚園の先生は僕に気がついたようだ。園児たちを降ろした後で窓から部屋に入ってきた。

 

 僕はその時間まで寝ていた。起きるともう夕方で、嵐は通り過ぎていた。窓の外の樹は強風で折れ曲がっていた。家の白い壁は泥で汚れていた。

 

 僕は服を着たまま寝ていたようだ。幼稚園のお姉さんが部屋に入ってくる前に服の皺を何とかしようと慌てていたら、テロンテロンのパジャマに着替えることになってしまった。寝癖はもう諦めるしかない。2人で1階に下りていった。

 

 1階には知らない女の人が何人かいた。といっても向こうは僕を知っているようだ。女房は白いレースのついたセーラー服を着ている。あんなに長かった髪はショートになっている。そしてこんな時間にパジャマであらわれた僕を、完全に無視している。食卓には朝食が用意されたままだった。

 

 僕に郵便が来ていた。出版社からで、中身は写真の原稿だ。写真は結局使われなかったのだろうか。とにかく僕は先に朝食を食べてしまおうと思った。

 

 セーラー服を着た女房と一緒にいたのは、3人の女だった。1人はクー・クラックス・クランの覆面をしているが、タイトなドレスを着ているので女だとわかる。その覆面の女性が突然「北海道に帰っちまえ」と叫んだ。誰に向かって言ったのかはわからない。

 

 僕は喉が腫れていて、食べたものをなかなか飲み込むことができなかった。2人の女性が、食事中の僕のところにやってきて、「北海道出身なの?」と訊いた。僕は「九州出身なんだ」と答えた。「でも九州には行ったことがない」「出身なのに行ったことないの?」「そうなんだ」

 

 

 

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2019年12月11日

古本屋に行く

 

 僕は肺の空気を抜き、胸をぺちゃんこにし、そうして、夜の湖の底に沈んでいった。店に行くのだ。店のオヤジに、僕は「佐藤正午」と告げた。オヤジは無言のまま、奥の書庫から、3冊の本を持ってきてくれたが、どれも僕が期待していたものではなかった。

 

「村上龍」と注文を出した。オヤジが持ってきたのは、1冊だけ。だめだ、だめだめだめ。諦めた方がいいだろう。僕は何も買わずに店を出て、肺にまた新しい空気を詰めた。

 

 

 

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2019年12月10日

乗船拒否

 

 赤い服を着た女がやってきた。宇宙船に乗ろうとするのだが、乗船を断られて、帰っていった。

 

 

 

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白い花

 

 僕が歩いて近づくと、道端に咲いていた花が、白い花になった。赤や黄色だった花が、白い花に。

 

 もとから白かった花は、それ以上白くはなれなかったけど、とてもいい香りを放つことはできた。

 

 

 

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犬のところ(ラプラスドゥシアン)

 

「犬のところへ」と書かれたボードを持ったヒッチハイカーを拾った。「どこに行くの?」と僕は訊いた。「犬のところへ」「いやだから、それってどこ?」「犬のところ」

 

 僕はしばらく走ってからそのヒッチハイカーを降ろした。「ここでいいかな、いいような気がする‥‥」「ここは犬のところ?」「たぶん」

 

 

 

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2019年12月 9日

猫を愛する男

 

 君の部屋に行くと、いつか僕が寝かせてもらったソファで小猫が寝ていた。どうしたの、この(汚い)猫、と僕は訊いた。どこで拾ってきたの? 君の返事はない。

 

 僕のソファで猫が寝てるんだけどどど?

 

「誰のソファで?」いや、何でもない‥‥

 

「猫は好き?」僕は猫を愛する男さ‥‥

 

 

 

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僕の死

 

 次のリサイタルに向けて君が曲を練習しているときに居間で僕は倒れた。たぶん心臓の発作だと思う。練習中は絶対に邪魔をしてはいけないことになっていた。それで僕はものすごく静かに倒れたのだ。声を出さずに苦しんでいたら、いつの間にか死んでいた。

 

 演奏が一区切りついた。僕が死んで何十分も経ってからだ。子供が君に知らせに走った。あのね、パパ死んじゃったの。すると遠くで悲鳴が聞こえた。救急車を呼んでくれたのは隣の部屋の住人だった。運ばれていったのは半狂乱になった君。僕は既に手遅れだった。

 

 変な体勢で床に倒れたまま僕は思い出していた。初めて君の部屋に行ったときのことを。そのとき僕が寝かせてもらったソファが見える。そのソファで僕は奇妙な夢を見た。僕は死んでしまうけど、いなくなってしまうわけではないので、誰も僕の死に気づかない、そんな夢だった。

 

 

 

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2019年12月 8日

第2宇宙速度

 

 子供が生まれてきた。出産に立ち会った僕は気を失いそうになった。鏡を見なくてもわかった。顔が真っ青になり、全身から血の気が失せていくのが。あれを「感動」と呼べば呼べるかも知れない。確かに心の中の何かは動いた。ただそれは動きすぎて心の外に出ていってしまったようだ(第2宇宙速度で)。

 

 

 

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卒業

 

 僕の車はナンバープレートの周りに花が飾り付けられているオープンカーだった。運転してみるとブレーキがまったく効かない。何かにぶつけて止まるしかないようだ。すぐに傷だらけになってしまう。

 

 映画に行く約束があった。雨も降ってきたし、僕は車を降りて、地下街を抜けていくことにした。このまま真っすぐ行けばいいのだ。1度も地上に出ることなく、新宿まで歩いていける。

 

 

 

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教会

 

 僕は首に濃い色のバスタオルを巻いて道を歩いていた。

 

 道端には白い花がたくさん咲いていた。ムーミン谷のような町だ。

 

 斜面を見上げると、人間がつくったと思われる教会があった。

 

 町の住人には出会わなかった。通り過ぎていく車1台すらない。

 

 

 

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2019年12月 7日

彼らのゲイの息子

 

 友達はゲイだ。今度結婚する。

 

 彼の実家は、旅館を経営している。そこで披露宴的なパーティーをすることになり、僕も招待された。

 

 だが彼の年老いた両親は、息子が男性と結婚するという事実を、なかなか受け入れられずにいた(旅館の仕事が忙しいと言って、パーティーには顔も出さなかった)。

 

 パーティーでゲイの友達は、1枚の絵を披露した。この日のために描いた‥‥、と言って。得意げに。僕はその絵を持ち、彼の両親の居室を訪れた。

 

「すごい才能ですよ」「ははは、そいつはどうかね」などという会話があった。それから彼の両親は僕に、50年前、彼らが結婚したときの写真を見せてくれた。

 

「50年前ですか? 今と少しもお変わりありませんね」

 

 彼らは、50年前から老人だった。

 

 ‥‥

 

 しばらくして、電話がかかってきた。彼の母親が受けた。メモした紙を、僕に渡してくれる。住所だ。僕は頷く。そして

 

「このまま、1ヶ月ほど、ここに滞在してもよろしいでしょうか?」と訊く。そこに彼らのゲイの息子がやってきた。

 

 

 

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2019年12月 5日

画材屋

 

 ネットで配信される連続ドラマに出た。夢いっぱいの若者が見るようなドラマだ。端役だったし本名も明かさなかったので、昔の知り合いで僕に気づく者はないと確信していた。

 

 だがそれから暫くして、美大の学生に混じって画材屋の前にいたとき、後ろを歩いている女性が僕のことを話題にしているのを聞いた。ドラマを見て、すぐに気づいたという。そうなのか‥‥。彼女は僕の高校の同級生だった。振り返って挨拶しようか、迷った。結局決断できないまま、無限の時が流れた。

 

 

 

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2019年12月 4日

おでん

 

 たくさんの洗濯物が干してあるバルコニーにいた。風に飛ばされそうになっているタオルを何枚か取り込んで、部屋の中に戻った。食事中だった。

 

 女房はもう出かけるようだ。僕は上半身裸で、おでんを煮ている。30分前に朝食を取ったばかりだが、また食べようと思う。冷蔵庫の中には、期限間近のケーキが大量に残っている。果たして全部食べ切れるかどうか、自信がない。

 

 

 

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2019年12月 2日

刺なし

 

 さて薔薇の茂みを抜けると、そこは空港か、あるいは駅か。人々が大きな案内板の電光表示を見上げている。

 

 はて僕がさっきまでいたのは、こんな場所だったっけ?

 

 芝生の道を戻ろうとすると、僕の行く手を、薔薇の茂みが遮っていた。さっきまでは、何もなかったのに。その薔薇に刺はなく、通り抜けるのは簡単だったが、

 

 枝を折り踏みつぶしていくのは、思いっきり気が引けるのだった。

 

 

 

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ワイルド・ジョッキー

 

 競馬の騎手というと華奢な小男のイメージだが、僕の周りにいたのは、それとは正反対の屈強な大男たち。彼らと一緒に、僕も競走馬に乗るのだ。これだけの体重差があれば、勝てるかも知れない。

 

 というかまぁ、普通に考えれば楽勝だろう。

 

 馬に乗る前に、僕たちジョッキーは、まずコースを一周し、観客に挨拶する。それが決まりだった。隅っこの方に生えた低木に、スズメバチの巣があり、刺激しないよう僕はそっと歩いたのだが、ワイルドな大男たちはわざと巣の近くを歩いて、ブーツで木を蹴飛ばしたりしている。驚きだった。

 

 そのすぐ裏には、鳩小屋があった。とびきりワイルドな騎手の1人が、そこで鳩と一緒に寝ていた。「いつまで寝ているんだ、行くぞ」と僕たちは声をかけ、観客席の方へゆっくりと歩いて行った。

 

 

 

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2019年12月 1日

ブルー

 

 花束を3つ。白を基調にしたものを2つ。青や紫のものが1つ。やはりブルーの花束が綺麗だ。白も結局ブルーに染めた。花束はブル‥、ブル‥、ブル‥‥。

 

 そうして僕は、目的地の近くまで来た。目的地がどこなのかはわからないが、すぐ近くだということはわかっている。地図を見ても何の目印もないけど、何となくそういう感じはする。

 

 

 

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教育 政治 文学

 

 中年の男性の後をついて、机が並んだ広いフロアを歩いた。やがて僕の、というか僕たちの机があるところまで来た。4台の机が、固めて置いてある。その内の1台が、僕の机だ。勉強でもしろ、ということだろうか。確かに遊んで暮らすのも飽きた。

 

 若い男が立ち上がって、「僕は教育」と自己紹介した。若い女も立ち上がった。「私は政治」「じゃあ僕は文学」と僕は宣言した。小説を読み始める。その様子を見ていた中年の男性は、満足そうに頷いて微笑んだ。

 

 

 

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