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2020年5月24日

日本ノ友達ノ名前                                                                  

 

 手渡されたその本を借りることにした。図書館を訪れると司書のお姉さんが小松左京をお薦めしてきたのだった。

 でも家に帰って見てみると、その本の作者は村上春樹になっていた。いい本だったけど、何度か読んだことがあった。話の展開も知っていた。主人公がどんな目に合うのか。そしてそれを見て僕がどんな気持ちになるのか。僕は読む前から

「そんな気持ち」

になっていた。

 

 

 夜には君と会い少し話した。

 僕が頭の中で日本語で考えたことを、フランス語にして話すと、君はそのフランス語をまた違う言語にしてパソコン画面の向こうの先生に伝える。僕の知らない外国語だ。君の喋る「日本」という単語と、「友達」という単語がかろうじて聞き取れるくらいだ(そして僕の名前と)。

 僕の名前を聞いて先生は頷き、笑顔になった。先生が外国語で答えるのを、君がまた別の外国語にした。その言葉はダイレクトに僕に届き、

 頭の中から最初の日本語を追い出してしまった。

 

 

 

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