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2023年9月14日

 干物                                                                  

 

 地べたに座っていた見知らぬ人が、僕にそれを渡した。干物だろうか。それは臍の緒だという。誰の? えっ、まさか。そのまさかだよ、あんたのさ。

 

 食べてごらん。食えるわけないだろ? いや、あんたは食べる。勝手に決めるなよ。

 

 食べた者に、永遠の沈黙をもたらすのさ。は? それって死ぬってことだろ? わかってないな、これは言葉を必要としない世界へ行く鍵だよ。

 

 喋れなくなるってことか? あんた、本当に馬鹿だな。

 

 喋れなくなるんじゃない、喋る必要がなくなるんだ。 

 

 感情、意志、欲望、そんなものを口に出す必要がなくなる。

 

 僕は理解される、誰もが僕を受け入れる。

 

 みんなが僕の前では黙る。

 

 みんなは「沈黙」になった。僕が「理解」になった。そうして世界を満たした。

 

 

 

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