レダ
レダという名前の女性が待ち合わせ場所に指定してきたのは、レダという店の中にあるレダという星だった。どういう種類の星なのかは知らない。店の中にあるぐらいだから本物の星ではないのだろう。僕は『星の王子さま』に出てきた小さな星を想像した。王子さまの故郷の、わがままなバラが咲いている星を。そして煤払いをしなければならない3つの火山を。
レダはまだ来ない。店には誰もいない。店にはたくさんの星があった。どれがレダなのかわからない。いくつかの星は燃えていた。ずっと燃えている。燃え尽きることのない火なのだ。またいくつかの星は氷だった。決して溶けない氷だ。星たちは霧の海に浮かんでいる。火と氷の間を船が行き来している。僕はいつのまにか船上にいた。
「この船はレダに行く?」僕は船員に訊いた。
「ダレ?」
「誰? 違う、レダ‥‥レダ」
「ダレ‥‥? 誰?」
彼女とは実際に会ったことはいちどもない。ネットの通信で知り合った。
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