巻き尺
道路脇に無人のブース。ピンク色の傘が捨てられている。
雨の中を歩いた。濡れた手に巻き尺を持っている。家から斎場までの距離を測ろうというのだ。
道路を渡る。その向こうが斎場だ。同行者と共に信号が変わるのを待っている。
この道の幅は測らなくていい、と同行者は言う。
どうして?
雨が強くなった。訊きたいことがたくさんあるのに。
同行者は手に鞭を持っている。それを振るう。
同行者は傘をさしている。それは父の傘だと気づく。柄に彫られた名前を見た。間違いない。
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