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2024年1月19日

 もっとも奇妙な月                                                                  

 

 その人から教わった。4月はもっとも奇妙な月だと。

 

「残酷ではなくて、奇妙なんですね?」

 

「なぜ残酷だと思うの?」

 

「有名な詩があるじゃないですか」と言いかけたところで

 

「これを丸めてちょうだい」

 

 渡されたのは女の下着だった。

 

「さっきまで私がはいてたものよ。嬉しい?」

 

「丸めるって‥‥?」

 

「クルクルと」

 

「は」

 

 僕は言われたとおりにした。

 

「どう、奇妙でしょ? それとも残酷?」

 

「え〜と、難しいです」

 

「嘘、簡単なはずよ」

 

「いや、作業そのものは簡単です」

 

「それならもっとお願い♡」

 

「クルクルと‥‥」

 

「クルクルと」

 

 たしかに奇妙だった。その女の人は下着を何百枚も重ねてはいていた。

 

 

 

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