もっとも奇妙な月
その人から教わった。4月はもっとも奇妙な月だと。
「残酷ではなくて、奇妙なんですね?」
「なぜ残酷だと思うの?」
「有名な詩があるじゃないですか」と言いかけたところで
「これを丸めてちょうだい」
渡されたのは女の下着だった。
「さっきまで私がはいてたものよ。嬉しい?」
「丸めるって‥‥?」
「クルクルと」
「は」
僕は言われたとおりにした。
「どう、奇妙でしょ? それとも残酷?」
「え〜と、難しいです」
「嘘、簡単なはずよ」
「いや、作業そのものは簡単です」
「それならもっとお願い♡」
「クルクルと‥‥」
「クルクルと」
たしかに奇妙だった。その女の人は下着を何百枚も重ねてはいていた。
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