黒こげ
彼女たちが何ていう名前なのか知らなかった。あだ名は知っていた。「ジェイ」と「ヒロ」っていうんだった。もう1人あだ名がないコがいて、そのコのことは結局何もわからなかった。目立たない感じのコだった。
おそらく10代だった。彼女たち3人と僕は自転車で町を走っていた。そのあだ名のないコは自転車を持ってなくて、ヒロの後ろに乗っていた。
すると彼女がその子供たちを見つけたんだった。子供たちが直立不動の姿勢で夕日を見ているのを。長く見つめすぎたせいで子供たちの眼は焼き切れていた‥‥
ジェイとヒロは気味の悪い子供たちに近づき、恐る恐る訊ねた。「大丈夫なの?」「いったいどうしちゃったのよ?」
あだ名のないコはそんなことはしなかった。優しく話しかけたりはしなかったってこと。彼女は子供たちの焼け焦げた眼にいきなり直接手を触れ、こちらを振り向き、何か叫んだ。それはそれは大きな声で。でも何て言ってるのか。僕の耳には全然聞こえなかった。
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