地下
地下のそのスペースにたくさんの人が集まっている。みんな友人だがもう誰が誰だか思い出せない。ある音楽が演奏されたのだった。その音楽は僕たちの記憶を洗い流していった。‥‥帰ろうかと思うが足が動かない。ここがどこなのかすらわからない。何か重大な目的があって僕たちはそこに集まったのだった‥‥
会場の出口では記憶が売りに出されている。それは1点ずつ違うCDだったり紙の本だったりする。映像データではないのだ。それでも自分の記憶なら買いたいと思うが、僕たちは自分が誰なのか知らない。
僕は床に落ちている硬貨を拾う。本物のお金なのか、ゲームセンターで使われているコインなのかわからない。とにかく全部拾う。たくさんのコインが落ちている。僕は財布を持ってない。誰も財布を持ってない。人々のポケットには穴が開いていて、中にあるものが全部溢れ落ちる。僕たちは床に両膝をつく。僕たちから溢れ落ちたものの中に僕たちは埋まっていく。
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