角を左に
「私は、自分の家がどこにあるのかわからない」 酔った女が、僕に道を訊いた。
「僕は、君の家がどこにあるか知ってると思うよ」
「教えてくれる?」
「ここをまっすぐ行って、最初の角を左に曲がると‥‥」
「曲がると?」
「そこが君の家だよ」
「どうして知ってるの?」
「簡単な話だよ」
「私には難しい」
「まずは、とにかくまっすぐ行くことさ」
「その『まっすぐ』が難しいのよね」
「だいぶ酔ってるみたいだ‥‥」
「大丈夫ですよ」
「右と左はわかる?」
「もちろん」
「僕、たまに右と左を間違える。右足を出したつもりで左足を出しちゃって、転んでしまって‥‥」
「かなしい?」
「間違えたなぁと思って(笑)」
「(笑)」
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