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2024年7月31日

 無題                                                                  

 

 写真のコンテストだった。撮った写真を1枚、大きく引き延ばし出展した。野生の熊を写したカラーの作品である。

 

「これは『熊』というタイトルの作品だね?」誰かが僕に訊いた。

 

「タイトルはないんだ。『無題』ということになると思うよ」僕は答えた。

 

 

 

 審査を待つ間、僕たちは予想しあった。作品が入賞するかどうか。そこにいた全員が、『熊』が3位入賞を果たすと予想して、実際にそのとおりになった。

 

『熊』を撮った大柄な写真家が小さくガッツポーズをしたところを、僕はカメラに収めた。

 

『無題』の話をする者はなかった。

 

 

 

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 その道                                                                  

 

 その人は、僕と違う道を歩いて、僕と同じ目的地へ行こうとしている。その道が、とても気になった。僕の歩いている道よりも、平坦で、歩きやすい道なのではないか。

 

 僕はためしに、その道を歩いてみようとした。何、簡単なことだ。ここから左に直角に折れて、20mも直進すればいい。

 

 しかし10m行った地点で、弾力のある空気の壁に跳ね返された。

 

 それは、透明なマットレスのようなものだった。僕はその「壁」にもたれかかり、立ったまま眠ることさえできると思った。

 

 

 

 

 

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 饅頭怖い                                                                  

 

 鶏肉、豚肉、牛肉、マグロ、サーモン、松茸など、目の前に100の食材が示され、どれがいちばん好きかと訊かれた。

 

 僕は答えられなかった。僕の本当に好きなものはその中にはなかった。

 

 じゃあ、どれがいちばん怖い? それなら答えられるだろ?「饅頭怖い」の要領でさ。顔の見えない質問者は笑った。

 

 

 

 いちばん好きなことは何かと考えた。たしかに食べることはそうかも知れないと思った。

 

 しかし僕は食べたくて食べているのだろうか。食べないと死んでしまうから食べているだけではないか。

 

 食べなくても生きていけるなら、何も食べないことを選ぶのではないか。

 

 

 

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2024年7月29日

 完全なる飼育                                                                  

 

 そのジャーナリストさんは、僕の質問に、テンノーの好物はライチョウの丸焼きだと答えた。オレも毎日食べてると言った。

 

 天然記念物じゃないか、と僕は思った。食べていいのか。そもそも毎日食べられるほどの生息数なのか。

 

 ジャーナリストさんに連れられて、皇居の中に入った。

 

 地下では秘密裏にライチョウが飼育されていた。

 

 しーーーーん

 

 クローンで増殖するのである。

 

「わかった、これはGHQの隠謀だ」と僕は冗談を言った。

 

「‥‥」

 

 彼は笑わなかった。ただ「ここから二転三転するよ」とだけ言って、僕を皇居の外に放り出した。

 

 

 

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 スタバ                                                                  

 

 スターバックスの隣に、スターバックスではないカフェができていて、僕たちは覗いてみた。

 

 そこには「薬シュレット(ヤクシュレット」という、聞いたことのない飲み物が売っていた。

 

 コーヒーだというが、コーヒーとは思えない。

 

 やはり、スタバに行こう、となった。

 

 しかしスタバにも、その薬シュレットは売っていた。

 

 アイス薬シュレット、4000ウォンである。相対的に、安い。

 

 

 

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 キイ                                                                  

 

 キイ星人は、雨のないキイ星から来た。てるてる坊主としての役割を期待されて。

 

「明日の遠足を晴れにして下さい」

 

 僕たちはキイと一緒に、キイ星の方角に向かって祈った。しかし、大雨だ。

 

 キイは言った。「この雨を、キイ星に空間転送します」と。

 

 そしてキイはいなくなったが、雨はいつまでも降りつづいた。「はやく、はやく」と僕たちは急かした。

 

 

 

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2024年7月28日

 赤い蛇                                                                  

 

 尊敬する人が僕に生きた赤い蛇をくれた。僕はそれを自分の首に巻いた。頭と尻尾の先に留め金があった。くっつけた。すると蛇は動かなくなった。

 

 蛇の胴体部分には、4桁の数字があった。それは現在の時刻を示すものだったかも知れないが、数字ももう動いていない。

 

 僕は蛇を首から外した。広げると無地の赤いスカーフだった。蛇の模様はなかったし、時計もついてなかった。

 

 

 

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 講演                                                                  

 

 壇上の講演者が、いつの間にか僕の背後に立っていた。僕は彼女に背を向けて、講義を聞いていたのだ。彼女は僕の肩に手を置いて、ずっと喋りつづけた。

 

 

 講義の後、僕たちは並んで歩いている。行く手に、「中国」が見える。僕たちは、歩いて中国まで行くのだ‥‥もう、着いた。

 

 そこでは‥‥誰もが日本語を話している。日本語が話せない彼女の言葉までもが、日本語だ。

 

 彼女は、自分が何を喋っているのかわからないまま、僕に話しつづけた。恥ずかしがるような小声で「私が何を話したのが、帰ったら教えてね」‥‥そこだけは韓国語だ。

 

 

 

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2024年7月27日

 軽自動車                                                                  

 

「次の停車駅は月です」 

 

 日本の軽自動車に牽引された列車が駅に入ってきたのを見て、僕もやっと少し不安になることができた。

 

 最後尾の車両のドアは開かなかった。何冊もの本を抱えた僕は1つ前の車両から乗り込んだ。

 

 携帯に「重量オーバーです」というメッセージが10件以上届いていたが無視した。

 

 座席に腰掛け、列車の出発を待った。けれど一向に動かない。

 

 

 

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 シンガポール                                                                  

 

 最後の滞在国はシンガポールだった。滞在時間は12時間。空港から電車に乗る。韓国のみんなと世界一周旅行をしていた。

 

 乗車券売り場に行き、自動販売機でチケットを購入する。韓国語の案内があった。日本語はない。

 

 先に乗車券を買おうとしていた仲間が悲鳴をあげた。「気をつけて」

 

「押し間違えると罰金」「指定時間内に購入できないと罰金」

 

 

 

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 列                                                                  

 

 朝起きると僕の家には知らないたくさんの人がいた。1人で住んでいたはずだった。彼らは先に食事をとったようで、歯磨きのために洗面所に並んでいる。僕は大量の食事をゆっくりと食べた。しかし洗面所の列は少しも短くならなかった。

 

 1つしかないトイレにも行列ができていた。僕は歯磨きを諦めて2階の寝室に戻ろうとした。エレベーターに乗った。しかしエレベーターは2階には止まらなかった。50階まで行ってしまった。

 

 そこで降りる。そこが地階だった。紙の買い物袋をいくつも抱えた買い物客が行き来している通りだ。

 

 夏だった。朝から気温が高く、日差しが眩しい。でもそこにいる女性は皆、子供まで全員、ベージュのトレンチコートを着ていた。

 

 

 

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2024年7月26日

 本棚                                                                  

 

 本棚のある部屋にいた。本棚には本があった。どれも僕が執筆した本だ。執筆した覚えはないのだが。僕は眠くなった。

 

 床に横になる。部屋には妹の1人がいた。本が読みたいと言う。1冊貸してくれと言う。

 

 どれでも‥‥好きなのを持っていけばいい‥‥

 

 僕は床に寝そべったまま、本棚の下の方にある分厚い事典を見ている。妹は腰掛け僕の書いた小説を熱心に読んでいる。本に挟まっていた栞が床に落ちた。栞にも何か書いてある。小さな小さな字で。

 

 

 

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2024年7月25日

 手紙                                                                  

 

 僕に手紙が届けられた。君がそれを持ってきた。しかし封筒に書かれていた名前は僕のものではなかった。

 

「何言ってるの。あなた今日からこの名前になったんじゃない」

 

 そうだった。そうだったかも知れない‥‥。よく覚えてない。

 

 僕はその手紙に何が書いてあるのか、フロに浸かりながら読みたいと宣言した。君も「それはとてもいい考えだと思う」と大賛成してくれた。僕の体があまりにも汚くて臭かったからだ。

 

 

 

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2024年7月23日

 ホテル                                                                  

 

 家族でホテルに泊まった。父と、双子の妹たちがいた。いつものように、母の姿はなかった。どこかにいるのだろう。僕は熱を出して、部屋で寝ていた。何日も、うなされていた。その間に父も姿を消した。妹の1人も見えなくなった。残った双子の片割れはずっと何か喋っていたが、その声も聞こえなくなった。

 

 そして目が覚めた。熱は引いていた。起き上がり、廊下へ出た。向かいのドアを開けた。ここも、ウチが押さえていた部屋だ。こちらの方がバスルームが広い。僕はそこでウンコをした。尻は拭かずに、シャワーで流すことにした。熱があったせいで、ひどい汗をかいている。

 

 

 

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 ナビ                                                                  

 

 子供が高熱を出した。でも家にはかえらなかった。どうしようか迷いながら、ずっと仕事をしていた。そしたら離婚された。とタクシー運転手が話している。

 

 彼は剣道の有段者だった。決断がおそい人間がよく剣道なんてやるわね。彼の妻はそう言って彼をなじった。

 

 彼のタクシーには古いタイプのナビがついていた。最新の道路情報をダウンロードしている、にもかかわらず、ナビはよく間違った場所に彼を導く。

 

 

 

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 酒癖                                                                  

 

「なぁ、どうしてヘアスタイルの話なんかしなきゃならないんだ?」

 

「してないし! 私はお酒が飲みたいだけ」

 

 車のタイヤがパンクした。そのときの音は銃声と間違われた。グラスが落ちて割れた。それもまた銃声だった。誰かが平手打ちされた。銃声だった。全員が撃たれたのである。

 

 そこは寺の境内だった。パーティー会場だった。女優とその父親が来ていた。著名な映像クリエイターである父。彼を紹介してもらおうと思って僕は女優に話しかけた。彼女とは前に食事をしたことがあった。

 

 女優は撮影中に酒を飲んでいて、酔ったまま演技をした。酒癖が悪いのである。女優が主役に抜擢されたのは映像クリエイターの父の七光りだと、あの映画の撮影が終った後もずっと言われていた。

 

(ところで父親は寝たふりだった。みんなが彼の娘のことで話しかけても、決して目を開けなかった。)

 

 

 

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2024年7月22日

 垢                                                                   

 

 歩いているときに手から垢が出る。それが解せないのである。垢は指先から落ちる。

 

 僕の歩いた後に垢の道ができる。誰かがその道を辿ってくる。

 

 

 

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 人間交差点                                                                  

 

 道で、大の字になって寝ている、僕は生きる交差点になってしまった。

 

 僕の腕や足の付け根に、信号機ができてしまった。車が体の上を通る。

 

 すっかり目が覚めたが、起き上がってはいけないと言われてしまった。

 

 

 

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2024年7月21日

 小銭                                                                  

 

 椅子に乗り、そこから高い食器棚の上に登り、そのさらに上の方に設置されている棚の中を覗き込むと、そこには古い乾電池や、小銭がたくさん入った小箱があった。

 

 そこで名前を呼ばれた。誰にも教えてない、僕の昔の名字で、僕を呼ぶ者がいる。母のように背の高い女性だった。食器棚から飛び降りた。

 

 彼女は、よじ登るために僕が最初に使った椅子を持っていて、その椅子の座面からは水が涌き出しているのだが、それはなぜかと僕に訊いた。

 

 僕のズボンの尻は、濡れていた。わかんないけど、もう座れないね、この椅子には。僕はそう答え、手に握りしめていた小銭を、宝物だと言って見せた。

 

 

 

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 マルク                                                                  

 

 地面を歩くようにして、空中を歩いている。僕の他にも、大きな動物が1匹。それは見たことがない動物だ。そいつも空中を歩いている。おっかなびっくりの僕とは対照的に、自信たっぷりの足取り。

 

「お金を拾った‥‥」動物が変なお札を拾った。口に咥えている。50と、300という数字が書かれている2枚。古いドイツマルクのようだが、漢字が印刷されている。

 

 

 

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 噂                                                                   

 

 君のバッグを僕が預かる。黒い大きなバッグ。何が入っているのか、たぶん楽譜だろうが、ずしりと重い。それを抱えて廊下に立っている。

 

「誰のバッグ?」

 

「ピアニストの‥‥」

 

「あぁ‥‥専用のスツール持ち歩いてるって噂、本当だったんだ」

 

「いや、スツールじゃないでしょ」

 

「スツールにしては丸いね」

 

「切り株(笑)」

 

 いろんな人が声をかけてくる。

 

 

 

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 シン・浦島太郎                                                                  

 

 亀が迎えにきた。亀は窓を叩く。僕は窓を開ける。星までつづく階段ができていた。(竜宮城に行くんじゃなかったのか?)

 

 亀は僕を背に乗せてくれない。(そんな予感はしてた。)僕は歩く。亀は後からついてくる。その歩みはのろい。

 

 

 

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 跳ぶ                                                                  

 

「この人たち、生きてるよ」僕と女房はマネキンのふりをしていたのだが小さな男の子に気づかれた。

 

「ねぇこの人たち、生きてるよ!」

 

 やってきた大人に少年は連れて行かれた。危ないところだった。

 

 少年が外に連れ出されたのを見て、僕たちは動いた。

 

 僕たちは中間的な動きができなかった。停止しているか、走るか、どちらかである。歩くことができないのだ。

 

 走り出した。走りながら、大声で喋った。そのときに気づいたのだが、僕は何歩か置きに50mほど跳躍することができた。

 

「2mくらい跳ぶことができたら便利なのにね」と彼女は叫んだ。

 

「そうだね」

 

 外に出るとちょうど雨が降り出したところだった。僕は病的に雨を嫌がる。すぐに屋内に戻った。

 

 女房は雨をまったく気にせず、傘もささない。

 

 

 

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2024年7月18日

 皿                                                                  

 

 2階によじ登り、ベランダの窓を開けて、家の中に入ろうとすると、そこには鎖が、ぐるぐると巻きつけられていて、アラームが9時にセットされた大きな目覚まし時計が置かれているのだが、今はまだ8時だ‥‥

 

 おそらく9時になると、鎖は解かれるのだろう。僕は中にいる人と協力して、家中の皿を、ベランダに並べる。丸い、何の模様もない、白い皿を、月光を、浴びながら。庭にいるおじいちゃんが、その作業に、あれこれと、うるさく、口を出すだろう。

 

 

 

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2024年7月17日

 地上高                                                                  

 

 それは、やけに車高の低いバスだった。席に腰掛けると地を這っているようだ。それでもまだ低さが足りないというのか‥‥エスカレーターに乗ってバスは地下に下りていく‥‥

 

 地下には銭湯があった。銭湯、サウナ。バスは‥‥女湯に侵入した。男性の運転手が僕を振り向いて、ニヤニヤ笑った。

 

 ‥‥こいつは、確信犯だ。

 

「お客さん‥‥女じゃなかったんだね‥‥」

 

 何をわざとらしいことを‥‥

 

 

 

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 イベント                                                                  

 

 狭い道を抜けると駅前だった。体を横にしてやっと通る。目の前が急に賑やかになった。

 

 そこから駅の構内に入るのに、また狭いところを通り抜けねばならなかった。

 

 左足が何かに挟まって抜けなくなった。

 

 駅構内では映画のイベントが催されていた。僕はそれを観に来たのだ。突然駅全体の照明が消えたり、稲妻のようなものが光ったり、そんな演出を楽しんだ。駅を利用する客にとっては馬鹿げたイベントなのかも知れなかった。

 

 

 

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 レストラン                                                                  

 

 一戸建て家の隣に、レストランがあり、そのレストランの隣に、また住宅がある。そんな通りを、車でゆっくりと走っていた。昼どきで、どの店でランチにしようか迷った。ふと気づいた。この通りの家の住人は、毎日必ず隣のレストランで食事をするのだ。玄関を出て、右隣に行くか左隣に行くか悩む。彼らの悩みと言えば、それだけだ。いやもしかしたら、家を出る前に決めてあるのかも知れない。考える時間は、山ほどあるのだから。

 

 レストランは看板を出しておらず、どこで何の料理が食べられるのか、高級店なのか大衆的な店なのか、見当がつかなかった。そうこうしているうちに道が狭くなり、それ以上車が進めなくなった。その時点で、僕たちはやっと車から降りた。右に行くか左に行くか、話し合うために。

 

 

 

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2024年7月16日

 パンク                                                                  

 

 帰宅するとすぐ「出かけよう」と言われた。銀色のリムジンが車庫にあった。運転手はどっか行っていなかったので僕が運転する羽目になった。僕はこんな大きな車を運転した経験がない。

 

 慎重に発進させた。ゆっくりゆっくりと家の前の道路に出た。下校の時間帯で、ギャーギャーうるさい高校生の乗る自転車に僕らは囲まれる。そのとき後ろのタイヤがパンクしていることに気づいた。

 

 僕がブレーキを踏むと、自転車が乗った高校生たちも動きを止めた。話し声も、ピタッとやんだ。車のドアを開け僕は降り立った。制止した彼らの中に。

 

 僕はパンクしたタイヤを見た。しばらく見た後で、「やっぱり自転車で行こう」と言った。けどその言葉を聞いても、高校生たちは、誰も動き出さなかった。固まったままだった。

 

 

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2024年7月15日

 椅子                                                                  

 

 僕は孤児だった。あるとき名家の養子になった。そこには僕より背の高い「妹」がいて、でかい椅子にデンと腰掛けていた。

 

 僕は孤児院から持ってきた小さな椅子にちょこんと座って、ぎこちなく挨拶をした。

 

 その家では話をするときは必ず椅子に座って話をした。当然食べるときも椅子、飲むときも椅子なのだが、椅子に座ってないときに、人と話をしてはいけない決まりだった。

 

 

 

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 怪獣                                                                  

 

 女の怪獣が僕と彼女を追いかけてきた。僕らは走って逃げた。歩きでは追いつかれる。怪獣は僕らより速く歩けるから。車でも追いつかれる。怪獣の車は僕らより速いから。でも怪獣は僕らより走るのが遅い。だから僕たちは走ったんだ。眠らないで北海道まで走った。駅に停まっていた北海道行きの急行にも乗らなかった。怪獣は特急に乗るだろうから。

 

 

 

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2024年7月14日

 広角レンズ                                                                  

 

 階段を下りて1階に行こうとしていたとき、僕は自分の目が、超広角レンズになっていることに気づいた。

 

 1階は遥か遠く‥‥

 

 しかし下まで下りてしまうと、目は標準に戻った。

 

 そこから階段の上を見上げる、目は望遠レンズであった。

 

 

 

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 矢ガモ                                                                  

 

 ショッピングモールに、ボウガンを持った男がいた。本物なのかどうかわからなかった、何かの撮影かも知れない‥‥。しかしその男は人を撃った。パニックになった。

 

 撃たれた人は、痛がらなかった‥‥。ただゾンビのようになって、男に操られた。ボウガン男は、そうして、何人かを操り人形にし、SPのように自分を守らせた。

 

 1人の若い女が、立ち上がり、ゆっくりとその男に向っていった。ボウガン男は彼女を撃った。しかし矢が当たっても彼女が操られることはなかった。

 

 彼女は太極拳のような遅い動きで、男に飛びかかり、ボウガンを奪った‥‥

 

 あまりにもそっと、優しく奪ったので、男が自ら、彼女にボウガンを差し出したように見えた。

 

 

 

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 別荘                                                                  

 

 別荘から自宅に電話した。知らない男が出た。僕は「今から帰るよ」と女房に向って言うように話した。

 

「予定より早いじゃない」とその男も女房のように答えた。

 

「ところで誰と一緒にいるの?」

 

「変なこと訊くのね。ここには誰もいないよ」

 

「そうか。じゃ今から帰るから。夕食には間に合うよ」

 

 実際には僕はずっと別荘にいる。当分帰らないつもりだった。

 

 

 

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2024年7月13日

 ブラピ                                                                  

 

 失恋して無人島に行くとブラピがいた。そこは無人島ではなくブラピの島だったのである。ブラピは何年も前から来ていたようで、髪も髭も伸び放題だった。ホームレスと区別がつかなかった。ブラピも失恋したようである。

 

 

 

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 白い犬                                                                  

 

 飼っている白い犬が崖から飛び降りた。下にいる僕に抱きとめてもらえると思ったのだ。しかし僕が避けたので犬は足を骨折した。悪かったな、と僕は声をかけた。

 

「痛いか?」

「痛い」

「左右どっちの足が痛い?」

「左」

「じゃあ左足が折れたんだな。ちなみに前足? 後ろ足?」

「両方だよ! ワンワン!」

 

 オートバイで病院に連れて行った。

 

 

 

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 北海道旅行                                                                  

 

 連休だった。女房が旅行に行きたがった。僕は自転車の後ろに女房を乗せ、全速力を出し、北海道を目指した。高速道路を走った。

 

 途中、グランドキャニオンのような絶景が広がる。高い柵が張り巡らされ、立ち入り禁止だった。「ここはどこ?」と女房が訊いた。「ここは東京だよ」と僕は答えた。「かつて東京と呼ばれていた都市さ」 そしてさらに早く自転車を漕いだ‥‥

 

 知り合いの牧師が北海道にいた。彼の教会の中を自転車で走り回った。子供たちの描いた絵がたくさん貼ってあった。「床に足をついたらだめだよ」と牧師は言った。「壁に手をついてもだめ」「ついたらどうなるの?」「帰れなくなるよ」

 

 だが女房は自転車を降り地面に足をつけた。トイレに行きたかったのだ‥‥ 。女房を待っている僕を雷鳥たちが取り囲んだ。「雷鳥に触れたらだめだよ」 牧師は言った。「天然記念物だからね」 その牧師の言葉が最後になった。

 

 気づくと僕は家にいた。1人だった。手が雷鳥臭かった。手を洗った。すると僕の両手は石になった。さらにゴシゴシやっていると、ぼろぼろに崩れた。

 

 

 

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 ついてきた                                                                  

 

 僕の後を誰かがつけている。僕が振り向くと、その男は近づいてきて、何をしてるんだ、行こう、と言う。「早く」

 

「行くって、どこに?」

 

「あんたが行こうとしてるところに、だよ」

 

「何でついてくるの?」

 

「まぁいいから」

 

 友人と8時に待ち合わせだった。

 

 僕(僕たち)が3時に着くと、友人はいた。改札を出たところで、しゃがみ込み、スマホをいじっている。

 

 僕が振り向くと、ついてきた男は笑った。

 

 みんな、何をやっているのだろう。僕はスマホを持ってこなかったことを思い出した。

 

 

 

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2024年7月12日

 王様                                                                  

 

 空港から、市内へ向う直通電車へ乗ろうとしていたとき、古い友人と出会った。

 

 電車は、既に満員・満席状態だったが、彼と僕が最後に乗り込むと、席が2つ開いた。座ろう、と彼は言った。

 

 僕は立ったままでいたので、彼も立っていたのだけど‥‥

 

 そうすると、車内にいた全員が席を立ち、別の車両に移った。

 

 さぁ、座ろう。彼は言った。

 

 僕が彼と並んで、腰を下ろすと、ドアが閉まる前に、電車は動き出した。

 

 


 

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2024年7月11日

 クラゲ                                                                  

 

 クラゲ。クラゲ。たくさんのクラゲ。珍しいクラゲがたくさん。どこがどう珍しいのか、解説している音声。

 

 ユニコーンのような、角を生やしたクラゲ。ヒョウ柄のクラゲ。これは珍しいだろう、と思う。しかし音声は、どちらも珍しくないと言った。

 

 

 

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 白い車                                                                  

 

 前を走る白い車が、黒い影の中に入る。大きな道路。右に直角に曲がっているが、真っすぐ行こうとすれば行ける。そこは、道なき道。僕のポルシェには、ちょいと狭すぎる道だ。

 

 

 

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 お供え物                                                                  

 

 あの日僕の家の前にお供え物がしてあるのに気づいた。食べ物である。食べてみた。腹は壊さなかった。ちょうどそのとき僕は神になったのだ。正確にはその食い物が僕を神様にした。

 

 

 

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2024年7月10日

 燃料切れ                                                                  

 

 壮年のカップルが目の前を手を繋いで歩いていた。彼らがどんどん若くなり、最後は幼稚園くらいの子供になるのを見た。僕はタイムマシンの背中に乗っているのだとわかった。あぁまた乗っかってしまった。足下のタイムマシンをつかまえる。燃料はもう切れていた。

 

 

 

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 ドローン                                                                  

 

 ヨーロッパ各地の民間施設がドローンで攻撃される夢を見た。

 

 ロシアは関与を否定した。

 

 しかし多くの人がプーチンの仕業と思い込んだまま‥‥

 

 まず最初に攻撃を受けたのは児童が乗ったスクールバスだった。

 

 死傷者は1人も出なかったが人々は戦慄した。

 

 走行中のバスのタイヤがドローンによってパンクさせられたのだ。

 

 ロシアのドローンは、遠隔でこんな精密な攻撃を仕掛けられるのか。

 

 ベルリンで人気の、空飛ぶレストランがドローンの大群に取り囲まれた。

 

 パニックに陥った飛行船のパイロットが、パラシュートで1人脱出する‥‥

 

 

 

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 ホームセンター                                                                  

 

 楽なバイトが終った。僕は立っていただけだった。仕事は周りの人が全部やってくれた。

 

 僕はただ立っていただけだった。ホームセンターのようなところだった。

 

 仕事が終ると夜中だった。僕は階段を下りて店の地下に入った。地下は1つの都市だった。そこは仕事をしている人たちでいっぱいだった。

 

 怪しまれないように、手にバケツを持った。仕事をしているように見えることを期待して。

 

 カラのバケツである。それを持って、朝が来るまでうろついていた。

 

 

 

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2024年7月 9日

 象ボクサー                                                                 

 

 ボクサーがいた。大きさは象ぐらい。目は垂れ目だったが、強そうだった。実際、勝負にならなかった。気づくと、僕はリングに寝ていた。試合は、とっくに終わり。レフリーも観客も、帰った後だった。

 

 トボトボ歩いて、控え室に戻った。象が待っていて、「おかえり」と言った。夕食の支度をしていた。ここに家族が来ると言う。僕はみんなに紹介された。

 

 

 

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 あるノート                                                                  

 

 あるノートが回ってきた。長い間順番を待った。何でも願い事が叶うノートだ。僕は「ガイジンとつき合いたい」と書いて、次の人に回した。

 

 普通は「映画スターになりたい」とか書く。「永遠の命」と書いてあるのも見た。

 

 アホウドリ並みのアホウだ。

 

 彼らは映画スターになっても、ガイジンとはつき合えない。永遠に生きても、永遠につき合えない。「ガイジンとつき合いたい」とノートに書いたやつは、僕の他にいないからな。

 

(ガイジンとつき合えるのは僕だけなのだ。)

 

 

 

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2024年7月 8日

 ノート                                                                  

 

 僕が描いた絵を表紙に印刷したノートが教会で販売されていた。何冊かは売れたようだった。僕も自分で1冊買い、来ていた友達のお母さんにあげた。

 

「この絵はあなたが描いたの?」「私の娘を描いてくれたのね?」僕はどちらの質問にも「はい」と答えた。

 

 

 

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 ゴリラ                                                                  

 

 彼の小便は臭くなかった。むしろ、いい香りがした。「俺は弱いからだ」と彼は説明した。「弱者の小便は臭くない」

 

「あんた、何言ってんだ?」

 

「ゴリラの群れを見てみろ。ボスゴリラの小便は鼻が曲がるほど臭い」

 

 

 

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 かさぶた                                                                  

 

 そのコは顔に怪我をしていた。茶色いかさぶたが、右目から頬にかけての皮膚を覆っていた。僕たちは誰もそのことには触れなかった。本人もいつもどおりに振る舞っていた。そこに無理してるような、痛々しい印象はなかった。

 

 僕は画家で、別のコとつき合っていた。その恋人をモデルに、絵を描いた。彼女の顔に、同じようなかさぶたを描いた。それはあのコのかさぶたより、もっと広範囲に、醜く顔半分を覆う。

 

 

 

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2024年7月 7日

 エアカー                                                                  

 

 その教会はホテルであり、デパートでもあり、今日はコンサートホールでもあった。ロビーにたくさんの椅子が並べられていた。

 

 ステージは遠くにあった。建物のほとんど外にあるように見えた。

 

 僕が予約していた席は、ホールの反対側だった。そこに行くには、エレベーターで地下へ下り、そこからエアカー(空飛ぶ車)に乗らなければならない。

 

 エレベーターには大勢の人がいたが、エアカーに乗るためにそこまで下りた人は僕1人しかいなかった。

 

 制服を着たエアカーの運転手がドアを開けてくれた。

 

 多額のチップを期待する、恭しい手つきで。

 

 

 

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 橋                                                                  

 

 橋を歩いているとホテルが見えてきた。映画の舞台となった有名なホテルだ。僕は立ち止まりじっくり見ようとする、そうすると何も見えない。また歩きだす、どんどん早歩きになる‥‥スピードをあげればあげるほど、そのホテルははっきり見えてくる‥‥

 

 僕の移動の速度があがると、橋は長くなった。こんな長い橋は渡り切れそうにない。僕は立ち止まる。そうすると橋は消えてなくなる‥‥みんな川に落ちた。

 

 

 

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2024年7月 6日

 ルル                                                                  

 

 昨日と同じ夢を見たが、今日も同じように忘れてしまった‥‥それは「○○の夢」というように一言で言い表せる単純な短い夢だった。メモするまでもないと油断していたら忘れてしまって‥‥

 

 夢の背景に聴こえていた「ルールール、ルルルルル、ルルールル」という音は覚えているので忘れてしまう前に書き留めておく。この「音」に節をつけて歌うことができるようになったクールな僕は、今ピアニストの友人の気を引こうと鼻歌にしてみるのだが、あまりにもわざとらしく子供っぽい行動ゆえ‥‥誰の関心も引けそうにしない。

 

 

 

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2024年7月 5日

 カー                                                                  

 

 マイクロバスに乗っていた。予備校の先生の引率で東京に向う。僕たちは医大を受験するのだった。何年も浪人しているのが僕ともう1人。髪の長い男。前の方に現役の高校生たちが固まって乗っていた。彼らは合格するだろう。先生が今になって予想問題のプリントを配り始めたが、浪人組は目も通さなかった。挙げ句に長髪の男はカーセックスがしたいとか言い出してひんしゅくを買う始末だ。僕が「カーカー」と言い、男は「セックス」と応じて、大笑いするのである。

 

 

 

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 免許                                                                  

 

 飛行機の操縦免許を取るのに、教習所に通う必要があった。教習所は全米各所にあった。アメリカはとても広い。NY以外見たことがなかった僕は、この機会を活用できると考えた。第一段階は東部で、第二段階は南部で、仮免を取って第三段階は西部で、と各地を巡ろうと思ったのだ。

 

 

 

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2024年7月 3日

 ビートルズ                                                                  

 

 ガラス張りの温室の中で僕たち4人は演奏した。観客はそれを囲む広大な庭園にいた。観客の大半は若い女性だった。僕たちはビートルズのように人気のあるロックバンドだった。

 

 コンサートはしかし最後の1曲を残して中断された。庭園のどこかに爆弾が仕掛けられたというのだ。「俺たちも逃げようぜ」ジョージが言った。「逃げたきゃ逃げろよ」ポールが言った。「臆病者が」ジョンも言った。

 

 ファンの1人が花束を持ってやって来た。「ありがとう」リンゴが受け取った。

 

「君は逃げないの?」

 

「そうだ、早く逃げないと危ないぜ」ジョージ。

 

「曲を思いついた」ポールが演奏し始めた。ジョンがそれに詩をつけて歌った。

 

「素敵」とファンの女のコは言った。

 

 

 

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 ぬいぐるみ                                                                  

 

 大きな段ボール箱、その中にぬいぐるみとカップ麺を入れる。それが僕の仕事だった。

 

 ぬいぐるみとカップ麺は別の箱に入れるべきではないかと思っていた。しかし箱は1つしかないのだった。(大きさのわりには重くない。)

 

 すべて入れ終わると、誰かがその箱を持っていった。また人が来た。大きな段ボール箱を1つと、ぬいぐるみとカップ麺を抱えて。

 

 

 

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 麻酔銃                                                                  

 

 麻酔銃を撃っても撃ってもその人は眠らなかったので家に連れて帰った。一緒にコタツに入った。じきに眠るだろうと思った。しかし夜遅くになっても眠らなかったのでまた麻酔銃を取り出した。

 

「眠らないと撃つよ」

 

 やっぱり眠らなかった。僕は何発も撃った。弾がなくなった。

 

 

 

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 地平線                                                                  

 

 地平線ははっきりとした1本の線だった‥‥絵の下手な人が書いた絵のように黒く太い線だ。その線の上に魚が並べられていた。頭を左側に向け、等間隔で置かれている。

 

 それぞれ色は違ったが、同じ種類の魚だ。

 

「あれはしんでいるの?」と僕は問いかけた。「それともいきているの? たべられるの?」 誰となしに問いかけたが、答えはなかった。ただ優しい人がいて、僕に画用紙をもう1枚渡し、絵を新しく書き直してみることを勧めた。

 

 

 

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2024年7月 1日

 セミ自慢                                                                  

 

 そいつの口の中で、セミが鳴いていた。そいつは口を大きく開けて、みんなにセミを見せている。おそらく自慢しているのだが、僕たちは誰も羨ましくはない。

 

 耳が死んで、目が泣く。カネを払おうか、と僕は考える。でもいくら払えばいいだろう。わからない。

 

 

 

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 ズボン                                                                  

 

 彼女たちはウエストがゴムになっているズボンを僕にはくように勧めた。濃い紫色で、縦に細いストライプが入っている。鏡で見てみると、悪くない。それとセットになった、ロングコートを羽織った。長髪と相まって、まるでロックスターのようだった。

 

 その服を着たまま、店を出た。支払いはしなかったが、何も言われなかった。ホテルに戻り、昼過ぎまで寝た。目を覚ますと清掃の人が部屋にいた。ブティックにいた彼女たちだった。僕は「手伝いますよ」と言ってシーツを張り替えた。

 

 あのズボンとコートは、着たままだった。

 

 チェックインしたときには気づかなかったが、部屋はベッドが3台もあるスイートだった。使わなかった2台のベッドのシーツも、僕は張り替えた。そうすると少し疲れた。

 

 

 

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