酒癖
「なぁ、どうしてヘアスタイルの話なんかしなきゃならないんだ?」
「してないし! 私はお酒が飲みたいだけ」
車のタイヤがパンクした。そのときの音は銃声と間違われた。グラスが落ちて割れた。それもまた銃声だった。誰かが平手打ちされた。銃声だった。全員が撃たれたのである。
そこは寺の境内だった。パーティー会場だった。女優とその父親が来ていた。著名な映像クリエイターである父。彼を紹介してもらおうと思って僕は女優に話しかけた。彼女とは前に食事をしたことがあった。
女優は撮影中に酒を飲んでいて、酔ったまま演技をした。酒癖が悪いのである。女優が主役に抜擢されたのは映像クリエイターの父の七光りだと、あの映画の撮影が終った後もずっと言われていた。
(ところで父親は寝たふりだった。みんなが彼の娘のことで話しかけても、決して目を開けなかった。)
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