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2024年7月13日

 北海道旅行                                                                  

 

 連休だった。女房が旅行に行きたがった。僕は自転車の後ろに女房を乗せ、全速力を出し、北海道を目指した。高速道路を走った。

 

 途中、グランドキャニオンのような絶景が広がる。高い柵が張り巡らされ、立ち入り禁止だった。「ここはどこ?」と女房が訊いた。「ここは東京だよ」と僕は答えた。「かつて東京と呼ばれていた都市さ」 そしてさらに早く自転車を漕いだ‥‥

 

 知り合いの牧師が北海道にいた。彼の教会の中を自転車で走り回った。子供たちの描いた絵がたくさん貼ってあった。「床に足をついたらだめだよ」と牧師は言った。「壁に手をついてもだめ」「ついたらどうなるの?」「帰れなくなるよ」

 

 だが女房は自転車を降り地面に足をつけた。トイレに行きたかったのだ‥‥ 。女房を待っている僕を雷鳥たちが取り囲んだ。「雷鳥に触れたらだめだよ」 牧師は言った。「天然記念物だからね」 その牧師の言葉が最後になった。

 

 気づくと僕は家にいた。1人だった。手が雷鳥臭かった。手を洗った。すると僕の両手は石になった。さらにゴシゴシやっていると、ぼろぼろに崩れた。

 

 

 

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