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2024年8月31日

 脱構築                                                                  

 

 ナイフを手に持ち、大学までの道を行く。途中、ガラの悪い場所がある。

 

 歩いていると、頭上から唾が降ってくる。必要なのは、ナイフより傘だ。

 

 それは、わかっているのだけど。

 

 外部の美術評論家を招いて、講評会が行われるのだ。

 

 美大の授業の課題で、生徒たちはオブジェを製作した。僕の作品には白いケント紙が使われていて、動く。

 

 遅れて到着した僕は、オブジェにナイフを持たせる。

 

 スイッチを入れると、「彼」は自分で自分を切り裂き、脱構築する。

 

 

 

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 ウール                                                                  

 

 テーブルに細長い箱が何個か出され、その中には動物が入っている。

 

 一般に食用とはされていないが、おいしく食べられるように工夫した、サァ開けてみて、シェフは言う。

 

 1つ目の箱に入っていたのは、綿飴に見える。羊の毛だという。胡麻のような粒がふりかけてある。胡麻ではなく垢だ。何の垢なのか。

 

 僕は説明を聞く前に腹に入れる。

 

 

 

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2024年8月30日

 来客                                                                  

 

 絵を描いているときに人が来た。僕はその来客の絵も描くことにした。描き上がった。客は帰った。「絵は持っていかないのかい?」僕は声をかけた。しかし行ってしまった。長い渡り廊下の先へ。そこもまた僕の家だった。

 

 先程の客が、ソファで寛いでいる。

 

「まだ風呂に入ってないの?」「今日はいいよ」

 

「いいってどういうこと?」「今日は冷蔵庫にヨーグルトを入れに来たんだ」

 

 すっかり忘れてた。僕は紙のショッピングバッグから、ヨーグルトを出した。それを冷蔵庫にしまった。「明日食べにくるから」と言って。

 

 

 

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2024年8月29日

 奉公                                                                  

 

 別れの場面だ。ばぁちゃんと父ちゃんと母ちゃん、アタチ、そして妹。アタチは金持ちの家に奉公に出される。口減らしのため。ばぁちゃんの新しい義足を買うため。(アタチはばぁちゃんが大好きなので、喜んで奉公に行く。)

 

 金持ちの家は車道の先にある。交通量の多い道を歩いて行かなければならない。「車に気をつけるんだよ‥‥」と母ちゃんは言う。「何で歩道がないのかしらね‥‥」

 

 黄色いスーパーカーがびゅんびゅん通り過ぎる。「このあたりでは救急車もパトカーも黄色なんだ」父ちゃんが言う。「何で?」アタチが質問すると父ちゃんも母ちゃんも考え込んでしまう。

 

 父ちゃんの携帯に久々に仕事の依頼が入った。アタチが奉公に行く金持ちの紹介だ。もう行かなければならない。アタチはガードレールを乗り越えた。車道の真ん中に踊りでて、歩き始める。

 

 

 

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2024年8月28日

 来客                                                                  

 

 僕は熱を出した。コタツで寝ていた。おっと来客だ。誰が来たんだろ。

 

 僕はベッドに腰掛け、応対する。「さっきまで寝ていたんだよ」

 

 と言う。

 

「いや、コタツで寝てたのさ」

 

 僕はコタツのスイッチを切ったのかどうか、気になる。

 

 

 

 彼はテレビ操作のマニュアルを持ってきてくれたのだ。

 

 最近のテレビは高機能で使いこなすのは難しい。

 

 

 

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 オペラ                                                                  

 

韓国の友人たちと一緒に、ヨーロッパへ行った。7日間、毎日同じ

 

オペラを観る。もう7日が過ぎたのか。明日には帰るのか。

 

公演後、出演者たちの記者会見だ。主演の歌手がいない。

 

彼女は遅れてくる。楽屋でステージ衣装から、スポーツウェアに着替えている。

 

白いTシャツに、オレンジ色の短パン。

 

韓国人の彼女に、僕たちは韓国語で質問をする。

 

 

 

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2024年8月27日

 コメ                                                                  

 

 書店では本の代わりに米を売っていた。奥の書架に東北産の5kg袋が並んでいた。僕は3袋手に取った。ローラースケートを履いた店員がすぐに補充に来た。

 

「まだまだいくらでもあるわよ」店員は10代のように見える。

 

「米不足って聞いたけど‥‥」

 

「しーっ。店長が来た」

 

 僕は米の他にフランス語の教材を買おうとレジに並んだ。しかし顔見知りのレジ係は店長の許可がないと米は売れないと言う。

 

 

 

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 撃墜王                                                                  

 

 戦果を上げすぎたせいで、僕は配置換えになった。僕の上官に、クレームがきた。僕が撃墜しすぎるので、敵は困っている。

 

 新しい戦場でもしかし、僕は撃墜王だった。「ったく使えねぇな」と上官は吐き捨てた。「とりあえず3年寝てろ」

 

「ウチも平等にやってることを、アピールせにゃならんのよ」

 

 上官は僕の電源を落とした。それでも眠ることができないでいる僕の服を彼は脱がす。その瞬間に僕の戦争は終わった。

 

 

 

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2024年8月26日

 ハーモニカ                                                                  

 

 ハーモニカを吹き太鼓を叩きながら、男がやって来る。彼は女を連れていた。女を売りにきたのだ。

 

 僕は見に行った。買うことにした。吟味した末の決断ではなかった。衝動である。男のハーモニカがあまりにもヘタクソだったこともある。僕もハーモニカを持っている。彼よりは上手い。そこで女に聞かせてやろうと考えた。

 

 

 

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 鼓笛隊                                                                  

 

 格納庫に赤いガンダムがあった。僕は乗り込んで出撃した。しかし突然戦いが怖くなった。手にしたビームライフルの銃身を折った。

 

「これで出撃できなくなりました」と僕は報告した。「武器がないですからね」

 

 格納庫に太鼓の乾いた音がこだました。もう1台のガンダム(白いガンダム)が太鼓を叩いている。兵士を鼓舞する鼓笛隊だ。僕にはそっちが向いているのだ。

 

 

 

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 赤い矢印                                                                  

 

 香港から上海に向けて中国の沿岸を飛ぶ飛行機の床は透明で下界が見えた。ちょうど台風が真下にあった。

 

 赤い矢印が見えた。その矢印はどんどん大きくなった。矢印の向きや大きさと、吹き荒れる風の向きや強さは既にリンクしていない。下では何か非常にまずいことが起きているようだった。吹き荒れる風の色も赤かった。

 

 

 

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2024年8月25日

 青い蝶                                                                  

 

 駅前でバスを降り、そこから険しい山を登る。駅は山頂にあるというが、僕はどうも騙されたようだ。山頂には何もなかった。

 

 山道には穴蔵があった。そこに一匹青い蝶が潜んでいて、きっとその蝶の前世は人間だった。僕の前世は蝶だった。梯子がかけてあるところまで戻った。

 

 

 

 梯子の段に皿が置いてあった。カレーだ。僕はその皿を手に、麓のコンビニに入る。カレーの料金は、そこで払う。

 

「飲み物もあったでしょう?」店員が僕に訊く。

 

「あったけど‥‥」

 

 飲み物はいらない。実はお腹もすいてないことを、僕は伝えられなかった。

 

 

 

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2024年8月24日

 冷奴                                                                  

 

 皿に冷奴がある。ナイフとフォークとスプーンを手に持った僕。学校のチャイムが鳴る。キンコンカンコク。それは一口食べていいという合図だ。

 

 僕は一口だけ食べて、次のチャイムを待つ。

 

 僕と向かい合った席に座っている男性は牛肉ステーキを食べている。彼はチャイムにとらわれない。自分のペースで食べる。富裕層だ。権力者にコネがある。

 

 

 

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2024年8月22日

 見知らぬ乗客                                                                  

 

 見知らぬ乗客が電車の中に鞄を忘れる。彼を追って降車。「感動ポルノだな」という声がどこかから聞こえたが構っているヒマはない。

 

 だが追いつけなかった。諦めて駅に戻る。先程の電車がまだ停車したままだった。発車時刻はとうに過ぎている。

 

「追いつけなかったのか」またどこかから声が聞こえた。腹話術を使っているに違いない。

 

 僕は鞄を元の座席に戻す。そうして電車を降りると、誰かがその鞄を持って、笑顔で僕を追いかけてくるので、走って逃げた。

 

 

 

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 手                                                                  

 

 歯を磨いていると口の中から手が出てきた。半透明で、指は短かった。指先に爪はなくツルンとしていた。血は通ってなかった。どうやらそれは僕の親知らずであるらしかった。元の場所に戻そうとした。しかし僕の顔よりも大きなその「手」が、奥歯の位置に収まるわけはなかった。

 

 

 

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2024年8月21日

 蜜柑                                                                  

 

 その国ではみかんの皮が紙幣の代わりだった。クレジットカードは普及していなかった。財布の中が黄色くなった。富裕層は手が黄色いからすぐにわかった。

 

 

 

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 右翼                                                                  

 

 演奏が始まると「右翼」の人たちは椅子の上に立ち上がってヤジをとばした。僕たち「左翼」も負けじと声援を送った。それがこのコンサートの作法なのだった。

 

 ステージの上のピアニストは1曲だけ演奏して、マイクを手に取った。彼女は自分が右なのだとも左なのだとも明かさなかった。ただ「私には友達がいる」とだけ言った。その言葉に僕たちはみんな泣いた。

 

 

 

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 コメディ                                                                  

 

 休憩時間には橋で学生の演劇を見た。浮気した王様を巡るコメディであった。疑う女王は娘に魔法のナイフを持たせる。娘は王様の影を刺す。影は痛がって本当のことを話す。おもしろそうだったが休憩はもう終わりだった。

 

 河岸ではクラシックのコンサートが催されている。曲はラフマニノフの交響曲。第1楽章と第2楽章の間に休憩を入れるなんて変わってる。誰も楽器を持っていないのはもっと変わっている。これはすべての楽器音を「ジャジャジャーン」などという人間の声で表現する前衛的な試みなのだ。

 

「見てるだけじゃなくて参加しなさいよ」指揮をやっている君が僕に言う。

 

 それには答えずにさっきの演劇の話をする僕。そんな僕の影を君は指揮棒でツンツンしてくるのだった。

 

 

 

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2024年8月20日

 あなぐら                                                                  

 

 僕が住んでいる穴蔵に、その日神様がやって来て、私たちつき合うのと言った。私たち今日からここで一緒に寝るの。

 

 1人用の狭い穴蔵だった。食料も1人分しかない。隣に身を横たえた神様を見て、僕は少し不安になった。

 

 心の中で思った、僕たちいつまでつき合うの?

 

 神様の手を握って、離して、握って、離して、‥‥何回も繰り返した僕。

 

 神様はそれをおもしろがって、くすくす笑った。僕たちはおやすみと言った後も、なかなか眠らなかった。

 

 

 

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 足音                                                                  

 

 僕は自分で自分の足音を聞くのが好きなんだ。ところが月面に足音はない。僕は歩く。ときどき逆立ちして、手の音もないことを確かめた‥‥
 

 月の墓地には僕の墓があった。1588年~2504年。僕の名前が彫ってあるところをみると、僕のものなんだろう。墓地にあるところをみると、墓なんだろう。
 

 僕は夜空に浮かぶ地球を見上げた。
 

 地球にはもう誰の墓もないのは知ってる?

 

 

 

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 祈り                                                                  

 

「あそこに神様がいる」

 

 隣に突然あらわれたその女性が僕に言った。

 

 だが僕の目に見えたのは何本かの細い木だった。道路標識のようにも見えたし、墓標のようにも見えた。

 

 他にもいろんなものに見えたが、神様にだけは見えなかった。(ということは本当に神様なのかも知れなかった。)

 

「何か願い事をするといいよ」

 

 と言って祈り始めた彼女、彼女は裸だったのだが、祈るときだけ服を着た。それはさっきまで僕が着ていた服だった。

 

 気づくと僕は裸だ。彼女は顔を伏せ、目を閉じている。

 

 祈りが終れば‥‥服は返してもらえるのだろか。僕はいくつかの願い事を考えながら、そんなことを思った。

 

 

 

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2024年8月15日

 影のエレベーター                                                                  

 

 僕が乗ったエレベーターの隣で、もう1台のエレベーターが上昇している。そのエレベーターの中にも、乗客は1人。僕たちは会話する。超能力のようなものが使えて、なぜか会話できる。

 

 エレベーター同士で競争しているようだ。(すべてのエレベーターの隣に、もう1つの影のエレベーターがある。) その人は言う。大抵は影が負ける。ある特殊な条件下でのみ、影は勝つ。

 

「うん‥‥」 それは僕の曖昧な返事。

 

 影が勝つ。

 

「うん‥‥」

 

 

 

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 火を吹く                                                                  

 

 僕の赤ん坊の前にやってきた大男。口から火を吹いて、赤ん坊を燃やそうとする。僕は諦めと、倒錯的な歓びをもって、その場面を見つめる。赤ん坊も同じだ。そこに恐怖はない。純粋な好奇心だけがある。だから男が火を吹く直前で思いとどまり、僕を振り返って外国語で何か言ったとき、僕の心にあったのは深い失望だった。

 

 僕はその意味のわからない外国語を、心の中で、これまで聞いたことのあるもっとも邪悪な日本語に翻訳し、それに疑問符をつけて、男に投げかけるのだった。

 

 

 

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2024年8月14日

 特等席                                                                  

 

 いちばん後ろの扉から、僕たちは電車に乗り込んだ。予想どおりそこには、まだ、座る席があった。それを確認して、僕たちは前の車両に移った。そこには、ほとんど席はなかった。若い女性の隣に、2つ空きがあるだけだった。

 

 君が、その女性のすぐ隣に座った。僕はその君の隣の、特等席に座った。座布団が、何枚も積み上げてある席だ。どうしようもなく、落ち着かなかった。

 

 やがて、駅に着いた。みんながその駅で降りて、新たに乗ってくる乗客はなかった。がらんとした車両の中に、座布団が積み上げている席がいくつか見えた。

 

 

 

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 特例                                                                  

 

 特例で、教師にスパナが支給された。彼らはそのスパナを使って、ボルトを締めた。

 

 教師たちの多くは、世界に出た。世界のボルトを締めるため。学校に残った者も、もう何も教えなかった。ただ、ボルトを締めることだけをした。

 

 そのうち僕の家にも、教師は来るだろう、必ず。締めるボルトはありませんか、と訊くのだ。

 

 僕が、ある、と答えると、教師は、学校へ行け、と言う。僕にだけは、そんなことを言う。

 

 

 

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 燃え尽きて                                                                  

 

 未来が見える超能力者がいて、地元の商店街を回って、お店の人に、予言をしている。「この店は5年後に潰れるよ」

 

 聞いていると、すべての店が5年後に潰れるらしい。だからどうすればいいとは言わないのは、その年に人類が滅亡するからだろうか。僕は家に帰って寝た。

 

 

 

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2024年8月13日

 この世はカネ                                                                  

 

 身代金目的ではなく、成人するまで育てる気だ。双子を誘拐した男が、2人を見分ける係として僕を雇う。

 

 彼はSNSで、僕に双子の妹がいることを知り、僕に目をつけた。

 

 まぁ見分けることはできるかも知れない。できないかも知れない。アホらしい。それより僕は男を警察に突き出すこともできる。もちろん突き出すつもりだが、警察に突き出すにもカネがいる。この世はカネだ。

 

「カネを出せ」と僕は男を脅した。「さもないと警察を呼ぶ」

 

「お前に警察を呼ぶカネがあるってか?」

 

「ないよ、だからどうした。悪いのはお前だ」

 

「アホらしい」と男は言った。さっきの僕のセリフだ。

 

 

 

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 ベルト                                                                  

 

 モデルの友達が何人か集まっている部屋には姿見が1台しかない。スタイルのいい彼らが全員その鏡の前に集まっている。僕はお気に入りのジーンズをはいて自分の着こなしをチェックしたかったが難しい。

 

 別の部屋で着替えてきた女のコのモデルが部屋に入ってくる。そこでやっと鏡の前に空きができる。2人並んで姿見の前に立ち、ベルトをどうするかでずいぶんと悩んだ。

 

 

 

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 トロント                                                                  

 

 東京の男(「東京の男」としか形容しようのない男だ)は酒に酔っている。テーブルの上に乗り歌を歌い始めた。「トロント、トロント」と繰り返すだけの歌を。

 

 テーブルの真ん中には東京の穴が開いている。「東京の穴」としか言いようのない穴だ。男はその穴に落ちる。そこでみんながイイネ。

 

 

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2024年8月12日

 ダンス動画                                                                  

 

 僕の女房が歌い踊るところを偶然白人どもが見る。これは珍しい動物だと白人どもは思った。(彼らの国の動物園にはそんな芸のできる個体はいなかったから。)

 

 僕らの生息地にカメラが設置され、彼女は毎日決まった時刻に白人どものために踊るようになった。

 

 僕の群れの仲間たちは彼女の歌や踊りには関心を示さなかった。白人どもだけが夢中になった。

 

 

 

 白人どもの国の動物園の檻の中にモニターは設置されている。彼女のダンス動画はそのモニターでだけ見ることができるらしい。

 

 

 

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2024年8月11日

 政府支給                                                                  

 

 ピンク色の壁の家に、デヴィッドと忍び込んだ。その家の中に入ると、デヴィッドの金髪が黒くなった。

 

「殴らなければならない人がいるのだ」黒髪のデヴィッドは語った。

 

 彼は手にスパナを持っていた。それで殴るのだろうか。殺してしまうかも知れない、と僕は思った。

 

 デヴィッドの長い髪の黒は濡れたような色になって、彼の顔に張りついている。

 

「お前、それを‥‥」

 

 言いかけた僕の言葉を、彼は遮った。

 

「心配ない。犯罪にもコロナの特例が適用される。スパナも政府支給品だ」

 

 

 

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 コンサート                                                                  

 

 一緒にコンサートに行った。スーツを着た男性がステージで、ずっと喋ってるだけの「コンサート」だ。

 

 彼の英語があまり聞き取れないせいもあり、たいして興味は引かれなかったが、君は熱心に聞いていた。

 

 拍手もなくコンサートは終わった。

 

 

 

 同じ日、別の会場で、君の「コンサート」がある。開始時刻は迫っていた。

 

「タクシーで行こう」と君は言った。「着替えてくるから待ってね」

 

「遅刻するほど優秀だって言うよね」

 

「そのテーマで話せばいいよ」

 

「ふん(笑)」

 

 

 

 君の「コンサート」の後には、僕の「コンサート」がある。そのときは僕もスーツに着替えなければならないのだろうか。

 

 

 

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2024年8月10日

 リサイタル                                                                 

 

 リサイタルが始まる。開始時刻は過ぎている。演奏者はまだ会場に到着していない。彼女は僕と一緒に別のコンサートに来ている。

 

 やっとコンサートが終わる。「遅刻だね」と僕は言う。

 

「タクシーで行こう」「着替えてくるから待ってね」「遅刻するほど優秀だって言うよね」

 

 彼女の髪の毛の1本1本が蛇になっている。蛇たちは彼女の代わりに僕と喋る。「少し静かにして」と彼女はたしなめる。

 

 

 

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 講演会                                                                  

 

 ある講演会へ君と一緒に行った。白人の男性がクラシック音楽について語っている。

 

 英語があまり聞き取れないせいもあり、たいして興味は引かれなかったが、君は熱心に聞いている。

 

 最後の最後、壇上の男性は、「私には体がない」と話す。大柄な彼の言う、ジョークなのかと思った。しかし誰も笑わない。

 

 

 

「私には体がない」

 

 この言葉はある事実を僕に気づかせる。

 

 そのとおりだ、ここでは誰も体がないのだ。

 

「やっと終ったね」と君は言った。君の・心が・言った。

 

 心たちは新しい服に着替えて、次の会場へ向う。どの体も、30分ほど遅刻だ。

 

 

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 最高傑作                                                                  

 

 1両だけの電車は、坂だらけの町のいちばん高いところを走る。駅を出ると、どこまでも下り坂だ。坂の途中に、カフェがあった。今日はそこで、映画の上映会がある。

 

 有名な映画監督の、「最高傑作」が上映される。

 

 僕の後ろを、男性2人が、話をしながらついてくる。

 

「例の映画、最高傑作ではない」

 

「そうだな、おれは2番目くらいだと思う」

 

 カフェに着いた。(ここで時間が巻き戻される。)

 

 踏切を越えると下り坂だ。僕の歩みは軽い。

 

 

 

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 思い出                                                                  

 

 1人の少女がいた。彼女は家を差し押さえられたらしい。彼女にとっては昨日のことだ。(でも僕にとっては違う。)

 

 深夜零時から30分だけ、差し押さえられた家に入ることができる。

 

 家は40年前に差し押さえられて、そのままになっている。当時の服や、懐かしいLPレコードや手紙を、幾つか持ち出せればいい‥‥

 

 僕は空の段ボール箱を抱えて、自分の部屋に向った。少女は箱を持っていなかった。「どうして‥‥」と僕は訊いた。

 

「とっておきたいものがあるだろ? 思い出の1つや2つ‥‥」

 

 少女は何も答えず、妹の部屋のドアを開けた。

 

 部屋に入り、30分経っても出て来なかった。

 

 

 

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2024年8月 9日

 黒髪                                                                  

 

 その俳優さんの髪は、撮影のときだけ金髪だった。1日の撮影が終って、僕が「お疲れ」と言うと、黒髪に戻った。

 

 その黒髪と僕とで、共演の俳優を殴りに行った。毎日、撮影が終ると行った。

 

 黒髪が主に殴った。

 

 僕はその俳優を呼び止め、世間話をする。背後から忍び寄った黒髪がボコボコに殴る。

 

 

 

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 キーを借りる                                                                  

 

 歩くと往復30分かかる。僕は久しぶりに楽をしたくて、君にクルマを貸してくれないかと頼んだ。

 

「いいよ、キーを貸すよ」

 

 引っかかる言い方であった。キーを貸してくれるということは、クルマを貸してくれることではないのか?

 

 僕はマンションを出た。クルマは駐車場ではなく、近くの湖のほとりにある。

 

 マンションの隣に、僕の家があった。壁がピンク色に塗り替えられていたが、誰がいつの間にやったことだろう。人が住んでいるみたいだった。庭には洗濯物が干されている。

 

 

 

 湖は‥‥その家の中にあった。家よりも大きな湖が、家の中に。たくさんのクルマが、駐車しているのが見えた。借りたキーを僕はかざして、クルマのエンジンをスタートさせた。すべてのクルマのエンジンが、一斉にかかった。

 

 わからない。どのクルマを、僕は貸してもらったのか。

 

 とりあえず、家に入ろう。家の中に入ろう。ここは、僕の家だ。しかし玄関のドアは、そのキーでは開かなかった。

 

 

 

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2024年8月 8日

 焔                                                                   

 

 どういう仕組みなのかわからないが、進行方向にエンジンの焔を吐き出しながら進む宇宙船であった。

 

 焔は前方の障害物を焼き尽くす。

 

 おそらく時間を逆行しているのだ。

 

 後ずさりするその宇宙船にとっての過去、それが僕たちの未来であった。

 

 

 

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 ポスター                                                                  

 

 ポスターをベルトコンベアに載せて流す。

 

 数m向こうにいる人がそれを受け取り、僕に何か言う言葉は、ベルトコンベアの作動音が大きすぎて、聞こえない。

 

 僕はどんどんと流す。その内に受け取る人はいなくなってしまう。

 

 僕も流すポスターがなくなってしまった。

 

 さて帰ろう、と思っていたところに、ポスターを抱えた女性が来る。「アーティスティック・ピアノ」の美しいポスターだ。

 

 やっと仕上がったんだね、素晴らしい‥‥

 

 誰もいなくなった作業場。明かりは一晩中ついている。

 

 

 

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 魚の骨                                                                  

 

 何度も振り返り、目で合図を寄越す。未経験の僕が、バレエ教室に連れて来られた。

 

 教室を主催しているのは、僕の初恋の、背の高い女性だ。いったい、何を期待しているのだろう。

 

 僕の目の前で踊る、世界的なダンサーたち。

 

 突然、彼は倒れた。胸に、魚の骨が突き刺さっている。これで、4人目だ。

 

 女性が再度、僕を振り返る。これで、敵はいなくなったわ。思う存分、踊って頂戴。

 

 皆の、鼻を明かしてやるのよ。

 

 僕が躊躇していると、今度は、日本人のダンサーが舞台に立つ。すると、

 

 天井から落ちてきた、クジラの頭蓋骨が、彼を直撃する。 

 

 

 

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2024年8月 7日

 義手                                                                  

 

 彼女の腕がない。義手だがなくても不便はない。ただ周りが驚くのでマナーとしてつけている。その義手をなくしてしまったと言う。

 

(彼女のサリドマイド児のような腕を見るのは僕も初めてだった。)

 

 彼女は漫画家だ。漫画を書くときにも義手は使わない。書くところを見たことはないが。

 

 絵を見せてもらったことはある。あだち充の絵柄とよく似ていた。

 

 

 

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 採用面接                                                                  

 

「会長の考える美男美女ってどんなですか? 基準は人それぞれですからね‥‥」

 

「基準はワシの姪っ子じゃ」

 

 僕たちは履歴書の顔写真を見比べながら話し合う。一次審査。

 

 会長と僕とで、新入社員の採用面接をするのだが、会長は応募者の顔を重視すると言う。じゃあ僕は内面重視でいきますかと答えると、だめだだめだ、キミも顔で選んでもらわなければ困ると言う。

 

 

 

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 炎                                                                  

 

 道が2つに分かれた。

 

 そこまで僕たちを先導してきた弁護士はこう言った。

 

「男のように見える男は右へ行け。女のように見える女も右へ行け」

 

「女のように見える男は左だ。男のように見える女もな」

 

 その上で

 

「オカマどもよ、聞け。男には男の、女には女の役割があるのだ」

 

「価値錯乱者とこれ以上同じ道を歩くことはできない」

 

 人権派の弁護士とは思えない発言に、驚いていると

 

「あんたはどっちに行くべきかわかるな」

 

「えっ‥‥」

 

「教えてもらわなくてもわかるな‥‥」

 

 左の道の先には、煉獄の炎が燃えている。

 

「これはワタシの優しさなのだよ」

 

 

 

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 腕                                                                  

 

「何見てんだよ」女が僕にいちゃもんをつけてきた。

 

「ジロジロ腕見てんじゃねぇよ」

 

 よくよく見てみると綺麗な腕だった。こういう口の利き方をする女には珍しく刺青もない。

 

 カフェの少し離れた席に座っている女2人組だ。

 

 無視して席を立った。

 

 

 

 外に出るためには「柵」を飛び越えなくてはならなかった。

 

 僕は助走をつけてジャンプし、何とか飛び越えた。ギリギリだった。

 

 飛び越えられない老人たちは、あのガラの悪い女と一緒に、ずっと中に居続けることになる。

 

 死ぬまでずっとだ。

 

 

 

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2024年8月 5日

 赤と黄色の光                                                                  

 

 敵の陣地と、味方の陣地の間に、どちらのものでもない陣地があって、戦闘はそこで行われている。僕は軍のジープにジャーナリストを何人か乗せ、危険な地域を走っていた。

 

 夜だった。黄色や赤に発光する民間の旅客機が、戦闘地域で超低空飛行をしている。僕は空に携帯を向け、趣味でその旅客機を撮影したが、ジャーナリストたちは無関心だった。

 

 

 

 鉄道の駅に着いた。戦闘地域から逃げ出そうとして、一般市民が列車の出発を待っていた(何日も前から待っている)。ところが電気の供給が充分ではなく、列車は動けないのだ。

 

 若い母親が1人、諦めて家へ帰ろうとしていた。娘の手を引いている。女性のジャーナリストが、彼女たちの後を追いかけた。そのさらに後を追って、僕はゆっくり歩き出した。

 

 

 

 ジャーナリストは橋の上から、「ジェーン」だの「キャサリーン」だの、当てずっぽうの名前を大声で叫んで、泣いている。「どうしたんだ?」と僕は声をかけた。「マリーが犯されてブリジッドは川に落ちたのか?」

 

「この、人でなし‥‥」

 

 彼女は僕と一緒に駅に戻った。

 

 

 

 また発光する旅客機が一機、空を飛んで行った。

 

 まず光が見える。その後をキーーンという音が追いかける。僕は携帯を空に向けて、何枚も何枚も写真を撮った。

 

 

 

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 傘                                                                   

 

 ロックバンド「ヌードネス」の黒いTシャツ(「ラウドネス」のパロディだろうか)を着た人が色とりどりの傘を持ってやってきた。黄色いのが気に入ったと言うと、その人はくれた。

 

 雨が降っていた。

 

 ヌードネスさんは赤い傘を開いた。小さな傘で、それを10くらい開いた。風が吹いて、ヌードネスさんの赤い傘は空高く飛ばされた。さほど強くない風だったが、ヌードネスさんの手に残された傘はもう1つしかなかった。

 

 

 

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2024年8月 4日

 沼                                                                  

 

 することもなかったので、昼まで寝ていた。起きてみると、1人だった。沼を見に行こう、と思った。

 

 すごい湿気だが、5分間だけ。僕は口に、昔の不良のように、草を咥えた。そうして、蒸発していく、地上最後の沼を眺めた。

 

 草を咥えたまま、家に戻った。女のコがいた。地下世界に通じる、長い階段もできていた。ついに、お迎えが来たのだ。

 

 彼女につれられて、階段を下りた。

 

 もっと急いで、と彼女が言うので、僕は手すりを滑り台のようにして滑った。どこかそのあたりで、僕は草をなくした。

 

 

 

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 焼きそばパン                                                                  

 

 4時間目の終わり、先生が僕たち1人ひとりに白いレシートを配る。何が書いてあるのかはわからない。僕はまだもらってないから。僕はいちばん最後にもらおうと思っている。もらったらすぐに教室を飛び出そう。そして学食まで廊下を走るのだ。
 

 廊下は果てしなくつづいているように見えるだろう。時間もいつもよりゆっくりと過ぎていくように思えるだろう。(しかし時間が後5分しかないのは事実である。)
 

 先生がくれたレシートには食べ物の名前が書いてあるはずである。書いてあるべきだ。僕は朝から何も食べていないのだから。焼きそばパンと書いてあればいいと思う。

 いや本当は何でもよかった。レシートに書いてあるものを買おう。それでいい。僕の順番が来る。

 

 

 

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2024年8月 2日

 芋虫歩き                                                                  

 

「芋虫歩き」は難しい。夏の林間学校だった。車椅子の子が参加していた。彼は芋虫歩きが上手かった。僕たちの誰も敵わなかった。

 

 引率の先生が車椅子の子に挑戦した。一対一の勝負だった。車椅子の子が勝った。

 

 

 

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 血まみれ                                                                  

 

 特急列車の僕の席は血まみれだった。血はすでに乾いていたから問題はなかった。しかし何があったのだろうという不安の気持ちは消えなかった。

 

 発車時刻を何分か過ぎても列車は出なかった。窓の外では見送りの友人たちがダンスしていた。彼らの裸の上半身は血だらけだった。

 

 

 

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 半ズボン                                                                  

 

 本屋で、僕は全裸だった。どうしてかわからない。本と本の間に黒いブリーフが落ちていた。僕のものかどうかわからない。でも拾って穿いた。

 

 暫くして、黒い半ズボンも見つけた。もう明らかに僕のものではない。でも穿いた。そのまま何も買わずに、書店を出た。

 

 

 

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2024年8月 1日

 サボテン                                                                  

 

 異常に遅いスピードでそのエスカレーターは動く。歩いた方が絶対に早いが、僕の前にも後ろにも人が乗っていて動けない。仕方なく僕は持っていたLPレコードを袋から出し、ジャケットを隅々まで眺め、書かれている文字を全部読む。

 

 ようやく目的の階に着いた。そこのレストランで、友人たちが僕を待っていた。僕はたくさんのサボテンを跨いで歩き、空いている席を探した。みんなを待たせている間、サボテンがこんなに大きく成長してしまった。

 

「残念だがもうここに置いて帰るしかないな」と男が話している。

 

「サボテンのことか? いつも持ち歩いているのか?」

 

 自転車は1年前に売ってしまった、という話をしている友人の隣に座った。

 

「売っていくらになった?」と僕。

 

「サボテンの水代にもならんさ」

 

 苦労話の1つ、2つ。

 

 

 

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