思い出
1人の少女がいた。彼女は家を差し押さえられたらしい。彼女にとっては昨日のことだ。(でも僕にとっては違う。)
深夜零時から30分だけ、差し押さえられた家に入ることができる。
家は40年前に差し押さえられて、そのままになっている。当時の服や、懐かしいLPレコードや手紙を、幾つか持ち出せればいい‥‥
僕は空の段ボール箱を抱えて、自分の部屋に向った。少女は箱を持っていなかった。「どうして‥‥」と僕は訊いた。
「とっておきたいものがあるだろ? 思い出の1つや2つ‥‥」
少女は何も答えず、妹の部屋のドアを開けた。
部屋に入り、30分経っても出て来なかった。
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