サボテン
異常に遅いスピードでそのエスカレーターは動く。歩いた方が絶対に早いが、僕の前にも後ろにも人が乗っていて動けない。仕方なく僕は持っていたLPレコードを袋から出し、ジャケットを隅々まで眺め、書かれている文字を全部読む。
ようやく目的の階に着いた。そこのレストランで、友人たちが僕を待っていた。僕はたくさんのサボテンを跨いで歩き、空いている席を探した。みんなを待たせている間、サボテンがこんなに大きく成長してしまった。
「残念だがもうここに置いて帰るしかないな」と男が話している。
「サボテンのことか? いつも持ち歩いているのか?」
自転車は1年前に売ってしまった、という話をしている友人の隣に座った。
「売っていくらになった?」と僕。
「サボテンの水代にもならんさ」
苦労話の1つ、2つ。
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