赤と黄色の光
敵の陣地と、味方の陣地の間に、どちらのものでもない陣地があって、戦闘はそこで行われている。僕は軍のジープにジャーナリストを何人か乗せ、危険な地域を走っていた。
夜だった。黄色や赤に発光する民間の旅客機が、戦闘地域で超低空飛行をしている。僕は空に携帯を向け、趣味でその旅客機を撮影したが、ジャーナリストたちは無関心だった。
鉄道の駅に着いた。戦闘地域から逃げ出そうとして、一般市民が列車の出発を待っていた(何日も前から待っている)。ところが電気の供給が充分ではなく、列車は動けないのだ。
若い母親が1人、諦めて家へ帰ろうとしていた。娘の手を引いている。女性のジャーナリストが、彼女たちの後を追いかけた。そのさらに後を追って、僕はゆっくり歩き出した。
ジャーナリストは橋の上から、「ジェーン」だの「キャサリーン」だの、当てずっぽうの名前を大声で叫んで、泣いている。「どうしたんだ?」と僕は声をかけた。「マリーが犯されてブリジッドは川に落ちたのか?」
「この、人でなし‥‥」
彼女は僕と一緒に駅に戻った。
また発光する旅客機が一機、空を飛んで行った。
まず光が見える。その後をキーーンという音が追いかける。僕は携帯を空に向けて、何枚も何枚も写真を撮った。
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