歌詞
僕が書いた曲に歌詞はついてなかった。書き上がった直後にはついていたのだが。時間が経つにつれそれは消えた。
思い出してみせると僕は言った。忘れたわけでもないものを。あれは確かにすばらしい歌詞だった。けれど今はもう存在しない。
「大いなる者」と連絡を取った。彼女なら死者を蘇らせることさえできる。「大いなる者」とコンタクトできるのは僕だけだった。
バンドの仲間たちは彼女の存在自体を知らなかった。扉の向こうに彼女の背中が見えているときも。
「やるぞ」と彼女は言った。「よっしゃ」と僕は雄叫びを上げた。僕はステージに立った。それがすべての始まりだった。
「大いなる者」は、あの日特別に僕だけに話しかけてきた。僕らは相互にフォローし合ったのだ。
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