スリッパ
バスに乗り込むと、乗客の靴が気になった。男も女も、全員、よく磨かれた黒い革靴を履いている。服装はカジュアルだ。違和感が半端ない。
1人だけ、スリッパを履いた人物がいた。黒っぽいスーツにネクタイを締めて、ビジネスマンのようだ。スリッパのつま先から、白いソックスが見える。
バスは混んできた。座席はまだ空いているが、僕以外に、座ろうとする者はない。それでも僕は座った。目を伏せて、自分の靴を眺める。
そのまま視線を固定し、顔を上げない。
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