脱獄
僕たちは囚人だが、逃げていいことになった。塀の外に出され、どこでも好きなところへ行けと言う。僕はのんびりと歩いた。同じ檻の中にいた男と一緒に。みんなが逃げたのと、反対の方向に。
「こっちに何かアテはあるのか」と彼は訊いた。「ない」と僕。
「とりあえず歩けるところまで歩いて‥‥途中で自転車が盗めればいいな」
人気がどんどんなくなる。暗い林の中に分け入る。突然あたりが開けた。なぜか駐車場であった。車中で寝よう。どのドアもロックされてない。見ろよこの車。ランボルギーニじゃないか。キーがつけっぱなしだ‥‥
僕たちはそのスーパーカーを盗んだ。ガソリンは少ないが行けるところまで行く。
キーホルダーにはよく見ると名前が彫ってあった。「お前の女房の名前じゃないのか?」と彼が訊く。
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