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2024年10月10日

 タツノオトシゴ                                                                  

 

 僕は妊娠した。知り合いの女が臨月のお腹を、タツノオトシゴ的に僕に移植した。

 

 それで僕は妊娠した。もう60歳を過ぎている。

 

「NYに行ってくれない?」と彼女は言った。「子供にアメリカ国籍を取らせたいのよ」

 

 

 

 病院ではなかった。彼女が用意してくれていたのは高層アパートの一室だった。すべて開け放たれた窓。爽やかな初夏の日差し。出産は簡単に終った。

 

 2人の白人の産婆さんが手際良く取り上げてくれた。

 

「女の子ですよ」

 

 見ればわかる。その子は生まれてきたときにはすでに中学生だった。

 

「さてお母さんに会いに行こうか‥‥」「‥‥」しかしまだ喋れないようだ。

 

 

 

 女の子の母親から動画を預かっていた。「生まれたらすぐに子供に見せて」刷り込みを期待してのことだ。

 

 女の子が喋れないことを母親に伝えると、あの動画はちゃんと見せたのかと、僕を問いつめる。

 

「あの子、服を着て生まれてきたよ」僕の返答にも、

 

「当たり前でしょ。私が着せたのよ」

 

 

 

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