屋根裏
ショパンの家の屋根裏に忍びこんで、ずっとそこに住んだ。ショパンの生演奏を聴き、サインをもらって帰るつもりだったが、勇気がなかった。ふいに現れても、不審者扱いされるのがオチだ。忍者のように、天井の穴から下を伺っている。
それにショパンは病気をしていて、ピアノを弾ける状態ではない。ベッドから起き上がれないまま、死ぬのだ。このまま。もうすぐ。彼がなくなったら、あのベッドで一晩ゆっくり寝て、それから帰ろう、そう考える。
いや、何も持たずに帰るのに、そこまで待つ必要はない。望むのは、眠ることだけだ。それはショパンもそうなのだろうと気づいた。
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