爆弾男
トイレに入ると、爆弾を抱えた男が便座に座っていて、二重の意味で驚いたのだが、僕はまず爆発を避けるために、急いで退避した。壁の向こうに回り、頭を抱えて低い体勢をとる僕に、「無駄だよ」と男は声をかける。その直後、爆発が起こった。根拠はないが、何となく、男が死んでいないような気がした。
その予感は当たった。刃物を持って、居間を物色し始める男の姿が見えた。怪我ひとつしてない。男は金が欲しいのか。僕は引き出しを開け、その中にあった財布を手に取った。が、千円しか入ってないのを見て、戦う決意をした。台所の包丁を手に取り、男に切りかかったのだが、彼はまた「無駄だよ」と言う。男の声は、最初と同じように、優しかった。
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