水没した道
レストランへ行く道は水没していた。みんなは構わずに腰まで水に浸かって歩いた。僕は躊躇した挙げ句踵を返した。他にもっといい道があるだろうと思ったのだ。
だが引き返す道にも水が来ていた。自転車に乗っていた僕はいちばん浅いところを走った。「泳げばいいのに」と隣を歩いていた女のコは言った。彼女は赤い水着を着ていた。水着の胸の下に名札が縫い付けてあった。僕はその名前を読もうとした。
「泳げないんだ」
女のコが遠くに行ってしまってから僕は答えた。そのときにはまた別の女性が隣にいた。年配の女性だった。「私も泳げないのよ」と彼女は言う。だから何だよと僕は思った。
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