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2024年12月26日

 有名                                                                  


 

 客席は、ガラガラ。前の方に、有名人が、何人かいた。有名人たちは、ステージの上の歌手よりも、有名だ。
 

 その内の、もっとも有名な男のコの隣に、僕は座っていた。
 

 歌手が、歌の合間に、その男のコに訊いた、

 

「アンタの恋人は、今日は一緒じゃないの?」

 

「後ろの席に座ってる。あいつは、一般人だからな」

 

「なら、アンタの隣にいる男は何?」

 

「知らないのか? 俺の友達だよ」

 

「有名なの?」
 

 歌手がそう言うと、前の方にいる有名人たちも、隣の男のコも、後ろに座ってる無名の人たちも、みんな笑った。
 

 いたたまれなくなり、僕は席を立った。
 

 そして後ろに歩いて、男のコの恋人のところまで行った。
 

 彼女の手を取って、席を立たせ、さらに後方に下がった。そこは、ステージよりも、強い光の当たる場所だった。
 

 巨大なモニターが設置してある。
 

 どこから撮っているのかはわからなかったけど、そのモニターには、手をつないで見つめ合う、僕たち2人が映っている。

 

 

 



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