少年時代
「あなたは、臆病者なんだね‥‥」僕が怖がっていると、少年は言った。
お前は違う、良かったじゃないか。
枕元に少年時代の僕が立った。相談があるというのである。「将来はファッション・デザイナーになりたい。自分に素質があるかどうか、このデザイン画を見て判断してほしい」
大きな紙に、虫眼鏡で見なければならないほど小さく絵が描かれていた。あまりにも小さすぎて、デザインの良し悪しはわからない。図鑑に細密画を描く画家になればいいんじゃないか、と僕は心の中で思った。
「実際、未来のぼくはそうなったの?」少年は訊いた。
ならなかった。デザイナーにもならなかった。
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