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2024年12月22日

 赤い傘                                                                  

 

 降り出した。入り口の傘立てに置いてきた傘が気になって見に行った。盗まれてしまったかも知れない。案の定だった。僕の赤い傘はなかった。

 

 そこらじゅうに赤い傘が散乱していた。どれも新しい傘だった。カメラと一体になった、最新の高級傘もあった。なのに僕の汚い旧式の傘だけが盗まれていたのだ。

 

 ナントカの精が出てくるかも知れない。そう思って僕はしばらく待った。あなたが盗まれたのは、このカメラ付きの赤い傘ですか? それともこちらの、買ってからまだ一回しか使ってない赤い傘ですか?

 

 いえ、僕が盗まれたのは、普通の赤い傘です、そんな高級品じゃありません。

 

 おぉ、正直者よ。

 

 ‥‥馬鹿らしくなってきた。

 

 雨が上がるのを待とう。建物の、元いた階に戻ろうとした。しかし下りてきたときに使ったエスカレーターはなくなっていた。非常用の階段だけがあった。「非常二階」にのみ通じている階段である。僕は仕方なく上がった。

 

 非常二階に来るのは初めてだったが、なぜか懐かしかった。寺があって、照明は自然の夕暮れ時を思われる明るさに設定されていた。和服を着た欧米人がたくさんいて、おそらく彼らはここのスタッフだ。

 

 僕は彼らの1人に、傘を盗まれた話をした。言葉が通じたのかわからない。彼(老人)は頷いただけだった。

 

 

 

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