カブトガニ
予報によると雨。だが空を見てもそんな気配なし。持ってきた傘が無駄になる。
僕はスマホを見ていた。東京の知り合いがソーシャルメディアに、カブトガニの形をした雲の動画を上げていて‥‥
「何あれ」
女性の悲鳴のような声がした。みな窓の外を見ている。この町の上空にも、カブトガニが来ていた。
一瞬の出来事だった。強い風が吹いた。その風が目に突き刺さり、涙が出た。涙は頬に流れる前に、風に吹き飛ばされた。窓が閉められた。
そうして、黒い雨が降り出した。
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