大物歌手
郷ひろみや、五木ひろしのようなビッグネームが、この小さなライブハウスに来て、持ち歌を1曲だけ歌う。歌手は、何人も来た。演奏は、カラオケだった。観客は、あれは偽物だ、と文句を言った。「郷ひろみなんて、見てみろよ、あんな若いわけないだろう」
荒れそうだった。僕は外に出た。ライブハウスは湖畔にあり、ぶらぶら歩いていると、対岸から花火が上がった。遠く、湖面に幾つもの筏が浮かべられているのが見えた。筏の上ではアメリカから来た白人のロックバンドが演奏していて、聴衆は湖岸から歓声を送るのだった。
気づくと隣を、バレーボールを持った、長身の女性が歩いている。バレーボールの選手なのだろう、と思ってしまう、僕はこれまた安直に。どーん、と花火がまた上がったところで、彼女は僕を、プールに誘った。繰り返しておこう。彼女が僕を、だ。
「プール」
「プールサイドに有名な歌手が来てるのよ」
「あそこのライブハウスにも来てるよ、あっちこっちにいる‥‥さっきまで見てた」
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