地下の駐車場
地下の駐車場の明かりは、非常灯も含めすべて消えていた。真っ暗闇。奥の管理人がいるプレハブ小屋を除いて。
僕は管理人のおじいさんに照明をつけてもらおうと思って闇の中を歩いたが、どれだけ歩いてもそこには近づけなかった。距離的に近づけなかったということだ。他の意味では近づけたのだろう。おじいさんがドアを開け、僕を手招きするのが見えた。さらに歩けば歩くほど、僕の目には細かいところが見え始めた。いやちっとも近づけなかったのだが、僕のあまりよくない眼に、おじいさんの手に持っている文庫本の裏表紙の文字が見えてきた。
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