チャンピオン
僕はボクサーで、世界タイトルマッチのリングに上がる直前だった。控え室で待っていると、会場に集まった観客が足を踏みならす音が聞こえてきた。なんと勇ましい。だが戦うのは僕だ。相手は世界チャンピオンで、史上最強と言われていた。
「あなたは負けるわ」とマネージャーの女性は言った。冷たかった。「試合は見ていかないのかい?」ピンク色のスーツを着た彼女に僕はすがった。「応援してくれないのか?」
リングは、柔らかく茹でられたスパゲティで満たされていた。大量のスパゲティ。チャンピオンはイタリア人。白いスパゲティ風呂の中で、僕たちは殴り合った。チャンピンのハード・パンチの威力も、スパゲティに吸収されて弱まった。勝てるかも知れなかった。
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