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2024年12月19日

 読む                                                                  

 

 誰もいない教室で1人で本を読んでいると、その人は隣に座って話しかけてきた。見たことのない人だった。制服はこの学校の女子のものだったけど、顔は知らなかった。

 

「私は本を」

 

 彼女はただそれだけを言ったのである。

 

 何のことなのかさっぱりわからなかった。本というのは僕が今読んでいるこの本のことだろうか。

 

 僕は同じ言葉を返すことにした、「僕は本を」

 

「読む」と彼女は言った。

 

 読む。いや、

 

「借りる」と僕は答えた、慎重に。

 

 そうすると彼女は頷き微笑んで、僕の本を取った。(借りたつもりなのだろう。)

 

 

 

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