読む
誰もいない教室で1人で本を読んでいると、その人は隣に座って話しかけてきた。見たことのない人だった。制服はこの学校の女子のものだったけど、顔は知らなかった。
「私は本を」
彼女はただそれだけを言ったのである。
何のことなのかさっぱりわからなかった。本というのは僕が今読んでいるこの本のことだろうか。
僕は同じ言葉を返すことにした、「僕は本を」
「読む」と彼女は言った。
読む。いや、
「借りる」と僕は答えた、慎重に。
そうすると彼女は頷き微笑んで、僕の本を取った。(借りたつもりなのだろう。)
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