ボディーガード
ボディーガードをしていた女性が今日で退職したと言った。彼女にガードしてもらっていたのは僕ではないが彼女は僕のところに挨拶に来た。ふだんとはまったく違うヒラヒラした露出の多い服を着て。髪が突然長くなっていたのはウイッグだろう。胸が大きくなっていたのはまた別の仕掛けがあるのかも知れない。「もしかしてムラムラしてません?」と元ボディガードは言った。
そのとおりだったが僕は「デートに誘いたくなった」と答えるに留めた。
「デートプランは?」
「ランチはどう?」
「この辺にいいお店ありましたっけ?」
「ないんだけどね。何の考えもなしに誘ってしまった。まる」
「ははは。まだムラムラしてます?」
椅子もテーブルもないがらんとしたオフィスで、僕たちは立ったまま話をつづけた。「戦争はいつ終ると思いますか?」「実はもう終ってるんじゃないかな?」
何もない部屋だが、なぜかクリスマスツリーだけはあった。去年の12月から置きっぱなしなのだ。ツリーの下には開けられてないプレゼントの箱もあった。
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