トンネル
トンネルの中を歩いてそこまで行ったのだが、「そこ」は思っていたような場所ではなかったので、すぐに帰ることにした。
しかしトンネルは一方通行、帰りは地上を歩くしかなかった。たくさんの人混みをかきわけて、信じられないほど長い橋を渡るのだ。
車に乗りたかったが、どこにも見かけなかった。僕と同じように歩くのが厭になった人たちが、ときどき橋から身を投げていた。それはあくまで少数派だったけど、橋の端の方を歩いていると、どうしてもそういうのが目に入ってしまう。
なので僕は、橋の中央部を歩くことにした。人混みはさらにひどくなり、歩きづらかったが、人々の楽しそうな顔を見ていられるのはいい。
カジュアルな服を着た人たちの中で、時代遅れのロック歌手のような格好をした僕は、自分の進むべき方向を見失ったようだ。
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